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魔法科へ入学!


 教会での儀式も終わりアリーチェとルカは、教会職員に書いてもらった証明書を持って入学手続きの為に学校へ向かった。


 貴族街と平民街は高さ3メートル程の石塀で分かれていて、学校はその境にあった。

 貴族街側には魔法科、平民街側には普通科があり、校門も校舎もそれぞれの地区で分かれていた。


 アリーチェたちは魔法科に行く為に、貴族門の衛兵に儀式の証明書を見せて通してもらい魔法科の校門を入った。

 すぐ横の警備員に、入学手続きの場所を聞くと、警備室の横の小屋に案内され待っていると、黒縁眼鏡をかけた教育ママといった感じの年輩女性が迎えに来てくれた。

 

「今度の新入生の担任を致します、ステラ・フランチェスカです。どうぞよろしくお願い致します」


 担任の先生らしかった。

 厳しい表情でこちらをじろじろ見ていた。


「父親のルカです。よろしくお願いします」

「アリーチェです。よろしくお願いします」


「………確かに証明書には魔法の才能はあるとなっていますね。10年に1人くらいは平民から現れますが、属性の才能がゼロ?ですか………この表記は私も初めてです。属性の才能の有無は規則には書いてないですねぇ………」


 担任のステラ先生は、色々な規則が書いてある本をめくりながら悩んでいた。

 そして規則のマニュアル本をパタンと閉じて、顔を上げてルカとアリーチェをみて言った。


「いいでしょう。魔法科への入学を認めます」


(おっ、意外と入学出来るか危なかったのか、誰にも相談せずに担任が決めちゃっていいのかしら…………まぁ助かるけど)


 最後にギルドカードと同じ様に血を一滴垂らして学生証を作って渡してくれた。

 学生証は高級な作りで、銀色に金の縁取りがしてあった……卒業する時に返すようだ。


 明日の2の鐘に、校舎2階の魔法科1年の教室で入学式をするので、その時間までに登校すればいいですよと言われて、今日は終了だった。

 学校で必要な物は支給されるので用意する物は特に無かった。


 2の鐘とは、教会が街全体に時間を知らせる為に定時に鳴らしている鐘の音だ。


 1の鐘が朝6時に1回、

 2の鐘が 9時に2回、

 3の鐘が12時に3回、

 4の鐘が15時に4回、

 5の鐘が18時に5回である。


 夜間は鳴らさない。




  *  *  *  *  *




 そして入学式当日。



 アリーチェは時間に余裕を持ってルカと登校した。


 貴族門も魔法科の校門も、学生証を提示したら通してくれた。


 校門の警備員に教室の場所を教えてもらい2人で向う。


 校門を入ると背の高い並木道がまっすぐ校舎まで続いていた。

 その横には色とりどりの花が植えられて、錦鯉の様な魚が泳ぐ泉もあった。


「うわぁ~綺麗~!全然別世界~!」


「パパも初めて来たけど、これはすごいや」


 校舎に入り、説明された2階の教室へ向かう途中、廊下の窓から体育館くらいの大きさの白いドームが見えた。

 校門からは、正面の3階建て校舎で隠れて見えない位置だ。


「なにこれ~、すご~い」


「中が広いスペースになってて、雨が降っても運動や魔法の練習が出来るよらしいよ。あと中で魔法の練習をするから、建物には魔法障壁が張られてると聞いた事があるな」


「へぇ~、お金かかってそう………」



 教室に到着して中を覗くと、まだ誰も居なかった。

 机が21個並べてあり番号が書いてあった。

 縦横5列並べてあり、窓際の1番後ろに一つはみ出した感じで置いてある。

 アリーチェは21番、窓際の1番後ろにはみ出してる机だ。


(窓際はきらいじゃないけど、あきらかに不良の席じゃん………)



 席に座って少しすると、新入生の親子達がちらほらと入ってきた。


 新入生もその親も高価な服装をしていた。

 その後から入って来る親子もみんな高価そうな私服だった。


(あれ?誰も制服を着てないわね………)



 子供たちはほとんど知り合いみたいで、手を振ったり声を掛け合ったりしている。

 親たちも当然みんな知っているのだが貴族階級や派閥とかの関係なのだろう、親しく話す人や微妙な距離感の人などいろいろだ。


 入って来た人は、始めにアリーチェを一瞥してから子供は自分の番号の席に着き、親は教室の後ろ側へ行った。


(制服はじゃなくてもいいのか………完全に浮いてるわね)


 殆どの席が埋まり、最後の一人が入ってきた。

 豪華な宝石が散りばめられ細かな刺繍が施されたひときわきらびやかな服装の親子だ。

 父親は金髪の太っちょ、普段から歩かないのだろう、周りを見下す様な表情には汗をかいていた。

 同じ金髪を肩で切り揃えた娘も、親と同じ様なキラキラな服装だったが、ラダック村特産品のセーターを羽織っていた………


(お得意様かっ!相当偉そうな雰囲気だけど…………誰?)


 その親子が入ってくるなりみんなが通り道を開けた。


 それまでに来た人たちと同じ様に、1人だけ制服姿のアリーチェを一瞥べつしてから、娘は1番前の真ん中の席に座り、太っちょの親は教室の1番後ろの真ん中、いつの間にか1つだけ用意された椅子に腰掛けた。


 それを待っていたかの様に教室前側のドアが開き、昨日会った担任のステラが入って来た。


 教壇に立ち、咳払いをしてからステラは挨拶を始めた。


「皆様、ボスコ領立学校・魔法科、御入学おめでとう御座います。校長のステラ・フランチェスカです」


(おっと!担任じゃなく校長先生?)


「そして、このクラスの担任も致します。よろしくお願いします。校長の業務が忙しい時は副担任のエンマ・アレッサンドロが勤めます」


 前の隅っこに居たおじいさんが、そのままお辞儀をした。


「副校長兼副担任の、エンマ・アレッサンドロです。宜しくお願い致します」


 校長と副校長がこのクラスを担当する事に少し驚くアリーチェ。


(上級生がいるでしょうに大丈夫なのかな)


 ステラが話しを進める。


「皆さんが一流の魔法使いに成る為に、魔法科の4年間、全力でお教えしますので、ついてきて下さいね。では………領主様何かお話しになりますか?」


 1番後ろで椅子に、ふんぞり返って座っている太っちょが、手をヒラヒラさせた。


「わしは大丈夫だから進めてくれ」


(太っちょが領主かよ………って事は1番前のラダック村のセーター羽織った女の子が領主の娘か………そっかだから校長が担任なのか)


「分かりました。では明日からの授業の進め方の説明を致します」


 ステラ先生の説明はこうだった。


 午前中は一般教養の授業で、算数・国語・社会・冒険者の知識がある。

 午後は魔法科の授業で、魔法の知識と実技。

 1年の前半の実技は、初級魔法全般を行い、後半から属性ごとに分かれて専門的になるそうだ。

 2年生で属性ごとの中級魔法の練習と、冒険者としての魔物狩りを教師同伴で行い、レベルを上げていくそうだ。

 3年生4年生は、より高いレベルの魔物狩りをして、経験を積んでいくそうだ。

 卒業するまでに、年齢と同じLVまで上げるのが目標だそうだ。

 ステラ先生の説明が終わって、教科書などが配られて本日は解散となった。





 アリーチェはすでにLV18である………


(絶対バレたらマズいわよね………)



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


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 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆





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