精霊ウィスプに魔法を教わる!☆1
ラダック村に雪か降り始めた朝。
エリスとアリーチェは朝食を食べていた。
「おはよう御座います、エリス様アリーチェ様」
ウィスプが現れた………召喚してないし、呼んでもいないのにである。
いろいろあり過ぎて、ちょっとやそっとじゃあ動じなくなったエリス。
「おはようウィスプ」
朝食を食べながらアリーチェは、挨拶がてら当たり障りのない天気の事に触れる。
「おはよ~ウィスプ。雪が降ってて寒い朝ね」
何を思ったか、ウィスプは何度も頷く。
「分かりましたアリーチェ様!少しお待ち下さい」
「んっ?何が?えっ?」
もう部屋にはイフリートがいた。
「おう!俺に何か用か?」
「アリーチェ様が寒いそうだから、部屋を暖めなさい」
「あっ、そんなつもりじゃ…………って、イフリートって居るだけで結構暖かいのね」
「イフリートが役立つ時もあるのですね」
「おう、居るだけいいなら。筋トレしてもていいか?」
「じゃあ、食事の間だけでもお願い」
イフリートはアリーチェに右手の親指を立ててポーズをとる。
「任せなっ!」
「あっありがとう」
部屋の隅にいってイフリートは腕立て伏せを始めた。
色々な事に馴れてきたエリスは、普段通りに食事をしていた。
イフリートのお陰で部屋は暖かくなった。
* * * * *
朝食も終わってイフリートが
帰ったリビング。
エリスはテーブルで冬仕事の編み物をし、テーブルの反対側ではアリーチェがウィスプと勉強をしていた。
ウィスプは魔法の事や属性の事を丁寧に教えてくれた。
魔法の才能を持って生まれる者は、全体の3割くらいであり、1人1属性が原則である。
魔法の属性には上位属性と下位属性があり、下位は9属性、上位は10属性ある。
下位属性は、
聖・闇・月・火・水・氷・風・雷・土。
上位属性になると少し呼び方が変わり、闇属性は2つになり10属性となる。
(聖)神聖属性
(闇)暗黒属性・空間属性
(月)神癒属性
(火)火炎属性
(水)大海属性
(氷)氷河属性
(風)大気属性
(雷)雷電属性
(土)大地属性
このうち、神癒・雷電・空間の3つは知られていなかったり忘れ去られている。
下位属性は魔法の才能があれば使えるが、上位属性は神の加護を得られて初めて使えるようになる。
魔法の才能があると初級魔法は全ての属性が使えるが、些細過ぎて役に立たない魔法ばかりである。
中級魔法からは、才能のある属性だけが使える。
上級魔法になると、属性の才能に加えて、その属性の精霊と契約する必要がある。
精霊と契約できると、魔法が強力になるし、精霊の力を借りた精霊魔法が使える様になる。
しかし精霊と契約するのは大変で、10年以上の努力をしてやっと契約出来れば良い方である。
全ての属性ごとに神様がいて、神様の加護を与えられると、上位属性の強力な神級魔法が使えるようになる。
神の加護を得るのはとても大変で、神への信仰心を持って努力を一生重ねても与えられない事がほとんどであるようだ。
加護持ちはとても貴重なのだ。
「魔法については、とりあえずこんな所でしょうか」
ウィスプの講義を寝ずに頑張って聞き終えたアリーチェ。
「ふぅ~、だいたい分かったわ」
前の世界で、異世界ファンタジーは知っていたから、それなりに理解出来た。
「少し疑問なんだけど、精霊たちは全部で9人だったけど、上位属性は10属性あるのよね?」
「はい、その通りです。申し上げにくいのですが、月属性だけは遙か昔に神様の怒りを買い、封印といいますか謹慎処分となっておりまして……」
「なにかヤバイ事情がありそうね、分かったわ、食事にしましょう」
昼食をとってからは、アリーチェ待望の魔法の練習だ!
「ではアリーチェ様、魔法の基礎から始めます。魔法を使う時にみなさんは詠唱をしますが、私たち精霊は詠唱をしませんので、無詠唱をお教えします」
「ふぅ~ん………詠唱しなくて魔法が使えるのなら、なんでみんなは詠唱するの?」
「詠唱すれば魔法は安定して発動します。無詠唱は魔力操作が難しく威力も落ちますし発動しない事もあるから詠唱してるようですね。魔力を上手く操作すれば、無詠唱は威力の調整が出来ますし、最大威力は高いです。詠唱は長いし隙は多いし面倒くさいので良いとこなしです。精霊は魔力の塊の様な存在なので魔力操作が得意なのです」
「無詠唱のメリットとデメリットは、分かったわ」
「では、やる事は4つです、魔力を感じる事、魔力の操作、魔法の発動、そして魔力隠蔽です」
「はい、頑張ります!」
アリーチェのいい返事が響いた。
満足そうに頷くウィスプ。
「では魔力の感じ方ですが、自分の中に意識を集中して、魔力の存在を感じてみて下さい」
アリーチェは前の世界で、よく座禅を組んでいたので、心を静めたり集中するのは自信があった。
「よし」
ちょこんと椅子に座り、目を閉じるアリーチェ。
心を静め、自分に集中する。周りの風を感じ、自然を感じ、その中にいる自分を見つめた。
(前に座禅を組んだ時とは何かが違うわね。周りの空気?………何か………活動的?)
ウィスプはアリーチェが、変わった格好で座っているのを見つめていた。
(静かだけど、何かしら声を掛けられない雰囲気だわ)
アリーチェは集中していた。
(私もそうだけど、ウィスプも………紫色のエネルギーが集まっている感じね………何だろう………エリスママは………白かな)
アリーチェがしばらくして、ゆっくりと目をあけた。
ウィスプはアリーチェの正面に座る。
「そうですね………では私の手をそれぞれ握って、私が魔力を右手左手と交互に動かしますから、魔力がどちらにあるか感じてみて下さい」
アリーチェが頷くと、お互い手を握り合った。
「では行きます」
ウィスプは右手に魔力を込め、ある程度したら右手の魔力を消し、左手に込める。
始めてしばらくすると、アリーチェは何となく分かってきた。
「右手かしら………ん~左手………右手に変わったわ…………今度は左手」
驚いているウィスプ
「正解です………もう分かるのですね」
「ありがとうウィスプ。今まで分かってなかった世界だわ。不思議な感覚ね。気がついた今は………そうね、集中は必要だけど、何かしら守られてる感じね」
「精霊は生まれたら自然と分かるのですが、初めてでもう分かる人なんて………精霊に近いのかもしれませんね。熟練すると、他の人の魔力も解るようになりますし、離れた所の魔力も感じられます」
アリーチェはさっき感じた事を伝える。
「自分の事もそうだけど、ウィスプが側にいるのは感じたわ。エリスママは違う色って感じだったけど居るのは感じたわ」
さすがに驚きが顔に出てしまったウィスプ
「えっ?もう離れた魔力が分かるのですか、それと魔力を持たないエリス様が分かる?………さすがアリーチェ様、優秀です」
魔力を持たないエリスは魔力感知では分からないはずで、精霊にも出来ない。ウィスプはアリーチェに畏怖の念を抱き始めていた。
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