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アリーチェは舞う?


 オークション会場の外では、シモーネ商人にエルノがすがりついていた。


 人形と同じくらいの大きさの袋を大事そうに抱えているシモーネは、すがりついてくるエルノを足で蹴り飛ばす。


「汚い手で触るんじゃない!」


 ドカッ!


 エルノは蹴られても直ぐにシモーネにすがりついてお願いをした。


「どうか、どうか、少しの間だけでもその人形をお貸し下さい、お礼に24万ターナお支払い致しますから、どうかお願いします」


「ええいっ!触るなと言ってるんだ!」


 ドカッ!


 蹴られて転ばされてもまた立ち上がってお願いするエルノ。


「どうか、どうかお願いします」


「フンッ!あなたは競り負けたのですよっ!」


 ドカッ!


 汚らわしい物でも見るかのような表情でシモーネは、また蹴り飛ばした。


 まだ諦めないエルノ。


「娘の、娘の為にどうか、どうか少しの間だけでもお貸し下さい」


 もう一度蹴り飛ばすシモーネ。


「お前の娘なんて知るかっ!面倒くさいからお前たち斬り捨ててしまいなさい!」


 側に居たシモーネの護衛たちが剣を抜いた。


「悪く思わないでくれよじいさん」


 護衛が剣を振りかぶる。


 咄嗟にローラが護衛とエルノの間に飛びだした。

 さすがの護衛も、貴族街で無関係の人を傷つける訳にもいかず、すんでの所で剣を止める。


「貴様!危ないだろ!死にたいのか!」


「無抵抗の人に剣を向けるなんて!何を考えているの!」


 邪魔された事に腹を立てたシモーネが怒鳴る。


「邪魔するとは何なんだっ!……えっ……お前………その身体は……」


 シモーネは驚いていた、前に手足を斬り捨てた女が元通りの姿で目の前に居たからだ。


「また自分の都合で人を傷つけるの?」


「お前…………その手足………別人か?………姉妹が居たのか」


 流石に治る筈はないのでシモは別人だと思った。


「あなたにとっては残念だろうけど本人よ。神の泉の女神様が治してくださったわ」


 周りの野次馬には何の事か分からないが、シモーネと護衛たちにはその意味が分かった。


 恐怖がよみがえったのかシモーネは怯え始めた。


「ははっそんな嘘ついても無駄だぞ、それにここはボスコの街だ」


「また私を斬るの?女神様は見ていると思うけど?」


 特に何も起こらないので安心し始めるシモーネ。


「そう、ここはボスコ………私の街だ!」


 そう言ってシモーネも剣を抜いた。


「嘘をついてビビらせようと思ったのかもしれないが、この街にお前の女神は居ない。お前は私の街で私に無礼を働いたんだ。もう怪我などでは済まないぞ、命をもって償えっ!」


 シモーネがローラに斬りかかった。


 カキィィィン!


 シモーネの剣をアリーチェの鉄扇が弾き返した。


 アリーチェは魔法でゴーレムの素材を混ぜて強度を上げた鉄扇を2つ作っていた。

 見た目は扇子なので武器を持ち込めない所にも持ち込めるし、巫女装束なら持ってても自然だからだ。


「なんだっ?!お前も居たのか!」


「もう二度とローラさんに手を出させないわ!」


「ははっ………そうか、最近商売でもついてなかったのはお前のせいか!疫病神のお前が近くに居たからなんだな。ふふふっ、はははははっ!お前たち、俺に無礼を働いたこいつらを殺してしまえ!そうすれば全て上手くいく」


 子供は可哀想だが野次馬たち貴族にとっては、シモーネ商会当主の言ってる様に貴族に無礼を働いた者は極刑でもおかしくない、殺されても文句は言えないのだ。  

 シモーネの言っている事が間違っていたとしても、貴族と平民の出来事だ、助けに入る者など居ない。

 だがアリーチェにとっては、邪魔が入らなくて好都合だった。


 シモーネと護衛たちが斬りかかってきた。


「「「おらあああっ!!」」」


 両手の鉄扇を広げてアリーチェは迎え撃つ。


 片方の鉄扇で剣を去なしもう片方で相手の顔面を殴り飛ばした。


 キンッ!ガンッ!!

 キンッ!ドカッ!!

 キンッ!バコッ!!

 キンッ!ガツンッ!!


 アリーチェはまるで舞を舞っているかの様に美しく殴り飛ばした。

 勿論アリーチェは、立ち上がれる様に手加減してぶっ飛ばしている。

 直ぐにアリーチェは、来なさいよっとばかりに鉄扇で挑発する。


「いってぇな」

「生意気なガキだ」

「ふざけやがって」

「お前たち行くぞ」


 キンッ!ドスッ!

 キンッ!ボカッ!

 キンッ!ガンッ!

 キンッ!ボキッ!


 アリーチェは舞うように優雅に叩きのめした。


「ちきしょ~!」

「手加減してりゃあ調子に乗りやがってぇ~!」

「もう許さねえぞ」

「うあ~~腕が折れた~~!」


 アリーチェは折れた相手の腕を直ぐに魔法で治した。


「いで~~えっ?………痛くない?折れてないか………お前らかかれ~!!」


 キンッ!ドンッ!ボキッ!

 キンッ!ドスッ!ボキッ!

 キンッ!ガンッ!ボキッ!

 キンッ!ガツンッ!ボキッ!


「いでっ!んっ?」

「うがぁっ!んっ?」

「あぐっ!んっ?」

「はうっ!んっ?」


 アリーチェは全員の腕や足を折って、直ぐに魔法で治した。


 ドカッ!ボコッ!

 ガンッ!ベキッ!

 ガコンッ!バキッ!

 バンッ!ボキッ!

「はうっ!………?」

「うがっ!………?」

「いでっ!………?」

「ひでぶっ!………?」


 ダニエラやローラも含めて周りで観ている野次馬たちは、何が起こっているか分からず、アリーチェの美しい舞いを、ただ眺めるだけだった。


 その後も一方的なアリーチェの舞いが続いた。


「まだ殴り足りないから早く立ちなさいっ!」


 シモーネや護衛たちはもうボロボロでもう立ち上がれる状態では無かった。


 そこに商人ぽい男たちが警備兵のペリトと共にぞろぞろとやって来た。


「あっ、こいつです」

「そうそうこいつだ」

「間違いなくこいつです」

「そうか分かった………何でボロボロなんだ?」


 男たちみんながシモーネを指さす中、警備兵ペリトがシモーネに近づいて話しかける。


「あんたが商人のシモーネか?」

「ひいっ!な、なんだ警備兵か今頃来やがって。ああ私がシモーネだ。早くあいつらを捕まえて極刑にしろっ!」


 警備兵ペリトは無言でシモーネと護衛の男たちを縛り上げていった。


「いててててっ!何をする!」


「いやね、あんたにここにいる商人全員から被害届が出されているんだよ」


「何だと?……んっ、そう言えば観たことある奴らばかりだな………あっ取引先の………いやみんな違うんだ、金ならもうすぐ出来るから、ほらっこの人形を領主様にプレゼントすれば色々と融通してくれるから、だからもう少し待ってくれ」


 そこにステファノギルド長が現れて、シモーネが落札した人形を没収する。


「すまんな、シモーネさんの口座には301万ターナはおろか、1ターナも無かったから人形は返してもらうよ」


「うあ~~~!それだけは、それだけは勘弁してくれ!金は後で払うから~~!領主様に人形を贈らなければ~~!」


 それを聞いていた男たちが警備兵を交えて相談を始めた。


「金が1ターナも無いだとさ」

「金は後だ!先ずは商品をよこせ!ばっかりだったからな」

「そんなの奴とは誰も取り引きなんてしなくなるよな」

「でどうする?」

「我々街を守る側としては犯罪奴隷として強制労働させたいが」

「それじゃあ俺たち商人が損するだけだ」

「どうせ資産なんてもう無いだろうから、ここに倒れている全員を奴隷商人に売っぱらってみんなの損害にあてるか」

「俺たちはその方がまだましだな」

「じゃあ我々はその後に犯罪奴隷として強制労働させるしかないか」

「無理だとおもうぜ、きっと無条件の永久奴隷で死ぬまで帰ってこないぜ、まぁ死んだら帰って来られないがな」

「そうかみんなの損害はそんなにか、まあしょうがない。損害が出ている商人のみなさんの方が大事だからな。それじゃあこいつらを連れてみんなで奴隷商人のところへ行くとするか」


「「「へいへい………」」」


「なっ何をする!放せっ!私はシモーネ商会の当主シモーネだぞっ!領主様の代理なんだぞっ!ええい放せっ!痛っいたたたたっ」


 商人たちはぞろぞろと警備兵ペリトについていった。


 鉄扇で殴りまくって満足そうなアリーチェ。


 ローラは自分の為に怒ってくれていたアリーチェを抱きしめた。


「アリーチェちゃん私の為にありがとう」


「ううん、アリーチェの為でもあったから。それに殴りまくってスッキリしたしね」


「そっそうよね、殴ったって言うかぶっ飛ばしてたわよね、でも綺麗な踊りを観ているようだったわ。それにその服の良さが凄く分かったわ」


「アリーチェ様はとてもお強かったのですね……」


 ダニエラが羨望の眼差しで見つめていた。




  *  *  *  *  *




 野次馬も解散してひとしきり落ち着いたところで、エルノやギルド長たちも交えてオークション会場のエントランスで話しをした。


「どうしてエルノさんはお人形さんのオークションに参加したの?」


「それは………」


 エルノは事情をみんなに話し始めた。

 エルノは屋台広場で木材製品の修理をする店をやっていて、6才になる娘がいた。

 娘は無理をするとすぐに寝込んでしまう程身体が弱かった。

 その娘が先日また寝込んでしまったのだそうだ。

 街の医者にみてもらったが、さすがに今回は無理だろうと言われたらしい。

 娘に何かしてやれる事は無いかと悩み、娘に欲しい物を聞くと、領主様の娘様が持っていた人形が欲しいそうだった。

 さっそく調べて見ると、商品は何処にも無く、唯一オークションに出品される事が分かって、無理して参加したそうだ。


「知り合いにお金を借りたりして参加しましたが、これほど高価な人形だとは思いませんでした。残念でなりません」


 ローラはエルノとその娘を心配した。


「でも無茶をしてあなたが亡くなってしまっては、娘さんが悲しむだけですよ?」


「そうですね、みなさん私などの為にありがとうございました」


「娘さんに会わせてもらってもいいですか?アリーチェは年も近いお友だちなれるかもしれないしね」


「えっ?そりゃあ嬉しいお話しですが…………娘はベッドに寝てるだけで咳も酷いですよ?」


「うん、大丈夫だからお願いします」


「娘の為に………ありがとうございます」


 今日はもう遅いので、家の場所を聞いて明日訪ねる事にした。


 エルノと別れたあとアリーチェは、出品は辞めるからとステファノギルド長から人形を返してもらっていた。




 全体話数の48話から67話辺り、第2章森に囲まれた街ボスコ編内のシモーネに関する話しを修正・変更致しました。

 読み進んでいた方々には申し訳ありませんです。

 2021,11/5(金)   m(_ _)m


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