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いつもありがとうダニエラさん!


 マウロたち森の恵PTにシドだけが付き添い、アリーチェが着いて行かなくなって1週間ほど経った土曜日。



 アリーチェは商人ギルドに来ていた。


「こちらがそれぞれの試作品です。ご確認下さい」


 ギルドの個室で、ダニエラさんと向かい合って座っているテーブルの上には、アリーチェが注文した物が乗っていた。


(太鼓は………なんかおけに皮をくっつけた感じ?形は間似てるけど………。神楽鈴はそもそも鈴の音が鳴らない。神楽笛は形はいいけどやっぱり音が微妙だ。最後の扇子に至っては………鉄で出来てる…………これはこれで………ちょっと改造してみるか)


「えっと、色々と改良点があって………説明が難しそうなので、一人つずつ職人さんと話しをさせてもらっていいですか?」


 アリーチェも楽器や扇子の作り方を知ってる訳ではないので、職人さんにニュアンスを直接伝えるしかなかった。


「なるほど、私も試作品を見て、良さが分からなかったのですが、やはりだいぶ違うのですね。分かりました。直ぐに職人の所に参りましょう」


「いつもありがとうダニエラさん」


「いえいえ何を仰います。アリーチェ様のされる事は商人ギルドの為もなっておりますのでご安心下さい」


「役に立つ様なことはしてないと思うけど……」


「とんでも御座いません。すでに税収がありますし、将来性も素晴らしいです。ラダック村の編み物商品はアリーチェ様が開発したと聞いております。それだけでも税収があります。オークションでも10%がギルドの収益になっております。そのお召し物も良い商品になりそうですし、更に今、新しい商品を作ろうとなさってるのですから、ギルドとしても全力でサポートさせて頂きます」


 姉を探すためにやっているだけなので、いまいちピンと来ないアリーチェだった。


「そう…………それなら良かったです」


「あと誠に勝手ながら、編み物のお人形の特許申請をさせて頂きました。特許とは新しい発明をした者の権利です 今後アリーチェ様以外は販売出来なくなり、販売する者から特許料として、売上げの数十%がアリーチェ様の元に入ります」


(この世界にも特許があるのか)


「あっ、ありがと……」


 アリーチェはグイグイ来るダニエラにタジタジだった。


「アリーチェ様の利益を守るのも私の仕事ですので」


「ダニエラさんが必要と感じた事は何でもして頂いて大丈夫です。全て任せます」


「私を信用して頂けるのですか?」


「勿論、ダニエラさんが居ないと何も出来ませんから」


「あっありがとう御座います。それでは今後の事で注意点があります。オークションに編み物の人形を出品しているのも特許を持っているのも小花このはな咲良さくら様です。貴族や商人達が必死になって捜しておりますが、アリーチェ様だとゆう事は、私しか知りませんので大丈夫だとは思いますが、くれぐれもお気をつけ下さい。見つかるとどうなるか分かりませんので。私もなるべく咲良様とは呼ばずにアリーチェ様とお呼びする様に致します」


「はい…………色々と気をつけますです」


(あれっ?でも今後、小花このはな咲良さくらで活動を始める予定だったのよね。どうしよう………………まあその時考えればいっか)


 意外とその時主義のアリーチェだった。


 その後アリーチェは、職人さんの所を回って頑張って説明をした。


(伝わってたら嬉しいけど、日本でも職人さんたちが永年かけて完成させた技術だからまぁ同じ物は無理だよね)




  *  *  *  *  *




 オークション当日。


 特産品店で貴族担当になったローラは、アリーチェと一緒に貴族街入る為の相談をしに商人ギルドのダニエラの所に来ていた。


「そうですね、貴族街に入る為には、毎回目的地と正当な理由を届け出て、許可をもらう必要があります」


 説明をしながらもダニエラはローラの身体をチラチラ確認していた。


(ダニエラさんはローラさんの怪我が治ってるのをやっぱり気にしてるのね………)


 ダニエラは席を立って、パスカードを2人分持って帰ってきた。


「今日はオークション会場に行くと言う理由で、こちらをお持ちになれば大丈夫です。今後に関しましては、貴族街に入るたびに何処の誰を訪ねるのかなど申請をして許可を得る必要があります」


「それにしても貴族街って入るだけで大変なのね、ありがとうダニエラさん」


「いえ、どう致しまして」


 アリーチェはローラと目が合った。

 前もって身体が治った事をダニエラにどう話すか相談していたのだ。

 ローラは頷いてから、ダニエラに話しかけた。


「ダニエラさん、私の身体の事でお話しがあるのですが……」


「勿論、伺います」


 待ってましたとばかりにダニエラは返事をした。


「そうですよね」


「はい、ラダック村特産品店を手伝っている時から気になっておりましたから」


 おっと、大分前からの様だが、今まで自分から何も言い出さなかったのは流石だ。口が堅い上に信頼出来る。


「ダニエラさんが納得のいく答えになるかどうかは分かりませんが、お話しいたします」


 ダニエラはローラを見つめたまま頷いた。


「………1ヶ月程前でしょうか、私は女神様の夢を見ました……」


「女神様の…………夢ですか?」


「ええ、その夢の中で女神様が私の身体を治してくれたのです。私は目を覚まして、あの夢は何だったのだろうと身体を起こしてみると…………私の怪我は治っていたんです。右手も、左足も、元のままでした。私は直ぐに女神様に感謝の祈りを捧げました」


「……………………」


「以上になります………どう思います?」


「さあ、私には判断出来かねますね……………夢で女神様がローラさんを治癒なさったと?」


「はい。私は女神様のお慈悲かと」


 ローラはアリーチェをチラッと見る。


「………その話しを私に信じろと?」


「私はただあったことをお伝えしたまでです。私の身体が治ってる事も事実です………」


「そうですか………それで私はどうしたらいいでしょうか?」


 ダニエラはアリーチェを見て質問してきた。


「えっ??えっとその………ローラさんの身体が治った事は内密と言うか………秘密と言うかその………」


 真剣だったダニエラの口元が緩んだ。


「フフッ、分かりました。生涯口にしない事を誓います。言ったとしても失った手足が元通りになったなど、誰も信じないでしょうね」


「ははっ、ありがとうダニエラさん」


 ダニエラがアリーチェを見る瞳には、今まで以上の何かがあった。



 全体話数の48話から67話辺り、第2章森に囲まれた街ボスコ編内のシモーネに関する話しを修正・変更致しました。

 読み進んでいた方々には申し訳ありませんです。

 2021,11/5(金)   m(_ _)m


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