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ボスコの朝練と!ラダック村と!


 ボスコの街にもちらほらと雪が舞い始めた。積もる程ではないが寒い朝だ。



 粉雪舞うアパートの中庭で、朝練に集まったマウロたちにアリーチェは告げる。


「え~と、今日で全員集まっての朝練は最後にします。これからは各自トレーニングに励むように」


 突然の話しにマウロが食い気味に聞いてきた。


「卒業って事かっ!免許皆伝だなっ!」


「違います!冒険者の道に卒業などありません!筋トレや鍛錬は1人でも出来るしそれぞれ個人の戦いです。もう皆さんは自分の判断で出来ると思います。勿論自分の事も大事だけど仲間の事も大切に考えて、みんな頑張っていってね」


「「「「……………」」」」


 自分が認められた気もするがお別れの様な感じもして、みんな複雑な表情だ。


「じゃあみんなでの最後の練習始めましょう!」


 みんな黙々とトレーニングに励んだ。


 みんなでの朝練が終わり、串焼きも食べ終わるとアリーチェがみんなに言った。


「お疲れ様でした。みんなで朝早くに起きて集まる事も精神を鍛える為だったの。よく頑張りました。何か心配事があればいつでも相談にのるからね」


 マウロは神妙な顔をしていた。


「まだ7才の子供に相談か………まあそん時は頼みます」


「ええ、待ってるわマウロ」


 サンドロも真剣だ。


「必ずアリーチェ師匠の残した孤児院の屋台を大きくしてみせます!」


(冒険者としてじゃないのね……でも大切な事だわ)


「ええ、頑張ってねサンドロ」


「俺もあんたのおかげで、冒険者としてやっていけそうだよ………ありがとう」


「うん、冒険者としてはこれからだから頑張ってねアメディオ」


「あたいもアリーチェのおかげで、みんなの役に立てそうだよ………ありがとう」


「うん、女の子は一人だから大変だけど、頑張ってねレベッカ」


 アリーチェは改めてそれぞれを見る。


「アリーチェは少しみんなのお手伝いをしただけで、頑張ったのはみんなだからね。これからも無理はしないように。………なんかお別れっぽい雰囲気になっちゃったけどまだまだこの街に住むし明日も会えるんだからね」


「そっか………俺たちは孤児院へ肉を届け続ける………みんなで話しあってさ、PT名を森の恵に決めたんだ。この名前で活動を続けていくよ」


「いい名前ね、これからも頑張ってね」


「「「「はい!ありがとうございました!」」」」



「……うん」


 アリーチェは高校時代の部活を思い出した。

 ダンス部に所属していたが、朝は巫女としての仕事があるので、朝練は参加出来なかったのは残念だった。

 放課後の練習はキツかったが、みんなとやってて楽しかった。

 そんな仲間たちと突然別れてしまった形になる。


(元の場所に戻れるその日まで………私もこの世界で頑張ろう)




  *  *  *  *  *




 今日アリーチェは、ルカと一緒に実家のエリスの所に行く予定だ。


 お願いされた新鮮な食べ物とお土産をルカと一緒に買って来た。

 そして今、アリーチェと荷物を背負ったルカは、リビングの魔法陣の上に立っている。


「じゃあルカパパ、気持ちの準備はいいかしら?」


「えっ?えっと…………大丈夫」


「荷物は魔法陣の中なら背負わないで置いといても大丈夫だよ?」


「背負ってるとなんか落ち着くからこのままで……」


 ルカはかなり不安な様だった。


「うん、じゃあいくわね」


 アリーチェは集中し始める。


 魔法陣が仄かに光り出す。


 ルカの表情が強張りだした。


 そして詠唱………


「偉大なるヘカテー神に(たまわ)りし冥府(めいふ)影法師達(かげぼうしたち)(われ)は神と共にあり、其方達(そなたたち)と共にある。我意思(わがいし)に準じて、今精霊と共にその力を顕現(けんげん)せよ」


 アリーチェは集中の為に閉じていた目を開く。


「『テレポート』!」


 魔法陣の光りが強くなり出したのに驚いてルカは目を(つぶ)った。




「着いたわよ、ルカパパ」


 アリーチェの声がして、(つぶ)っていた目を開くと、ルカはラダック村の小屋の中にいた。


「ここは…………本当に家に着いたのか」


「うん、早くエリスママとノアとノイに会いに行きましょ」


 アリーチェが、小屋の扉を開けようとするがびくともしなかった。


「あれっ?」


 ルカに手伝ってもらおうと振り返ると、ルカの後ろに見える窓には、半分近くまで雪が積もっていた。

 ボスコの街と違ってラダック村は雪深い。小屋の屋根にも出入口はあるので、周りに村人の気配が無いのを確認して屋根から出て実家の屋根の入口に来た。村には鍵をかける習慣がないので直ぐに入れた。


「エリスママ~、ノア~ノイ~、ただいま~!」


 階段を降りてリビングに行くと、前来た時の様にノアとノイの食事に悪戦苦闘するエリスがいた。


「あらっお帰りなさいアリーチェ。あらまあルカもお帰りなさい」


「「あ~たん!あ~たん!」」


「エリス、ただいま」


 アリーチェはいつもの様に精霊たちを呼んだ。

 ウィスプ、ランパス、シルフ、ルナはノアとノイの世話をしてくれるのでエリスには休んでもらった。

 ウィンディーネとフラウはノア、ノイと遊ぼうとしてウィスプに怒られていた。

 イフリートは筋トレついでに雪下ろしをしてくるからと、タンクトップで張り切って外に出て行った。

 ヴォルトはやることがないのかお茶を飲み始めた………完全にお爺ちゃんだった。


 ルカはちょっとしたアクセサリーのお土産をエリスに渡してから、家の中の後かたづけと掃除を始めた。

 アリーチェは持ってきた新鮮な食べ物をエリスに渡した。

 早速今晩食べましょうとエリスは喜んでいた。 


 リビングのテーブルを囲んでみんなで夕食を食べている。


 その席でアリーチェはウィスプに精霊の事で相談してみた。


「精霊の誰かをこのままラダック村にいてもらう事は出来るの?」


「はい出来ます。召喚自体はその場所でないと出来ませんが、召喚した後でしたらアリーチェ様がその場を離れる分には問題ありません。距離が離れる事により維持する為の消費魔力が増えますがアリーチェ様なら大丈夫です。ボスコとラダック村でしたら3倍程度の魔力消費量かと思います。今もシェイドはボスコにいますし………」


「あっそういえばシドは、マウロたちと一緒にいるのよね。そっか、ありがとうウィスプ」


 ランパスがアリーチェを察してくれた。


「エリスさんの為よね、子供が大好きですし私が残りましょうか?ボスコでは暇ですからね」


「ディーネも遊んであげる為に残るわ」


「じゃあフラウも残るよ」


(遊んであげるんじゃなくて、ディーネが遊びたいのよね、でもまあ助かるわ)


「ありがとう、じゃあ3人にお願いするわね」


「双子の子育てって大変だったから凄く助かるわ。ランパス、ディーネ、フラウ、それにアリーチェありがとうね」


 みんなの賑やかな夕食を楽しんだ後、アリーチェたちはランパス、ウィンディーネ、フラウを残してボスコのアパートに帰って行った。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


【作者からのお願い】


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             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



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