巫女の衣装!
朝練の為にアリーチェが中庭に出ると、もうみんな揃っていた。
「朝早いのにもうみんな揃ってるのね」
アメディオが少し照れくさそうにする。
「あぁ、昨日の夜から俺とサンドロも、マウロ兄の所にお世話になってここに住んでる………」
「そうなの!みんな一緒で良かったじゃない!PTの為にもいいと思うわ。同じアパートの住人ね、これからもよろしくね!」
朝練が終わって、串焼きをみんなで食べている所でアリーチェが、今後の事を話した。
「今日から魔物狩りの付き添いは、シドだけに行ってもらいます」
「「「「ええ~~!?」」」」
「みんなを見ていると、シドがいれば大丈夫そうだし、アリーチェがついて行っても何もしてないしね」
納得するマウロ。
「………確かにそうだな。7才児を魔物狩りに連れてくのも危ないもんな」
「でしょ!あとアリーチェやりたい事もあるから」
「よし分かった。いろいろありがとうな。アリーチェが俺たちや孤児院にしてくれた事へのお礼だけどどうしたらいい?アリーチェのお願いはやっぱりアリーチェには何の得にもなってないと思うんだが」
アリーチは微笑んだ。
「そんな事ないわよ、だってマウロ達やセラフィナさん、そして孤児院の子供たちの笑顔が見られるでしょ?」
みんなアリーチェをジッと見つめた。
「「「「………………」」」」
「みんなどうしたの?」
レベッカがアリーチェを抱きしめた。
「あっ…ありがと………」
「何から何まで世話になりっぱなしだな………ありがとう」
「いいの、アリーチェがやりたくてやった事だから、あっ!ひとつだけお願いがあるわ」
「おうっ!なんでも言ってくれ!」
「絶対に死なないでね」
マウロは観念した。
「あぁ分かった。その願いも俺達の為だな………」
ただ微笑むアリーチェだった。
* * * * *
魔物狩りに行くシドとマウロたちとを見送ってから、出かける為に代わりの護衛をイフリートに頼んだ。
護衛は大人の男の方が抑止力になるが、残った男はイフリートとヴォルトだけだった。
お爺ちゃんは抑止力にならないのでイフリートしか居なかった。
もう1人フラウが一緒に行く事は、順番で決まっている様だった。
イフリートはジーパンに袖無しのジージャン、フラウは全身白のスノボー系ファッションで暖かそうだった。
イフリートとフラウの為に、周辺の魔力の気配に気をつけながら、ローラの家へ向かった。
イフリートとフラウは景色を観るので忙しそうだったので、迷子にならない様にアリーチェが手を繋いであげた。
ローラの家には迷子にならずに無事に着いた。
ローラとピエロには知り合いの冒険者だと2人を紹介した。
ローラはピエロが居るのにイフリートの筋肉をジッと見つめていた。
「へぇ~………リートさんは立派なお身体をしてるんですね」
「おうっ!魔物とは力の真っ向勝負だからな!」
「まあっ頼もしい!」
アリーチェもピエロもちょっと苦笑いだ。
ローラはマッチョ好きだった。
ローラは奥の部屋から出来た衣装を持ってきて、リビングのテーブルに広げて見せてくれた。
「これなのよ、アリーチェちゃんどうかしら?」
夢にまで見た巫女の衣装が目の前にあった。
「わぁ~~やっと………」
アリーチェは衣装にそっと触れた。
生地や色など細かい違いはあるが十分な出来だった。
「綺麗ですね。着てみてもいいですか?」
「勿論よ、変わったデザインだから苦労したけど、これで大丈夫なのか心配だから着て確認してみて」
アリーチェとローラが隣の部屋に試着しに行き、暫くしてからローラに続いて、着替え終わったアリーチェがリビングに登場した。
真っ白の上着に真っ赤な袴。昔の事を思いだしてとても嬉しそうなアリーチェ。
着心地を確認していたアリーチェは、両手を広げてその場で優雅に回り始めた。
ローラはその美しさに目を輝かせた。
「まあ~素敵!見とれちゃうわ」
アリーチェは、優雅にお辞儀をした。
「ローラさん、この衣装はアリーチェの夢でした、ありがとうございました」
アリーチェはローラに抱きつき、ローラも優しく抱き返した。
「こちらこそありがとうね、アリーチェちゃん」
窓からは優しい陽が射し込んでいた。
落ち着いてからアリーチェが料金を払おうとするが、ローラにはプレゼントだから必要ないわと笑顔で断られていた。
アリーチェは、次からは払わせて下さいと2着目をお願いしていた。
アリーチェは巫女装束のままローラの家を後にした。
* * * * *
アリーチェはすれ違う人たちにじろじろと見られながらも、商人ギルドに到着した。
ギルドの個室で向かいに座っているダニエラさんにもじろじろと見られた。
「さて………その初めて見る服が気になりますが、今回はどういったご用件でしょうか?」
「はい、楽器や木の小物を作ってもらえる所は、何処か無いでしょうか?」
アリーチェは、扇子と神楽鈴と神楽笛と太鼓を、紙に書いて説明した。
「そうですね~、まずせんすとゆう物ですが、桶など木の道具を作る職人が適任でしょうかね、他の3つはやはり楽器職人がいいと思います。私が手配しておきましょうか?」
「そんな申し訳ないわ」
「大丈夫ですよ、アリーチェ様は大切な商人ですし、これも私の仕事ですから」
素敵な笑顔で答えてくれた。
「ありがとうダニエラさん、それじゃあ、このお人形もお願いします」
そう言っていつもの編み終わったお人形を渡した。
「オークションですね。はい確かに受け取りました。お任せ下さい」
アリーチェの後ろに立っている2人の事を、紹介していなかったのを思い出した。
「あっあの、この2人は知り合いの冒険者で、リートさんとフランさんです」
「そうでしたか。アリーチェ様に護衛は必要かと存じますので、あえてお聞きしませんでした。それにしても素敵な筋肉の持ち主ですね………」
今まで見ないようにしていたのか、ダニエラはイフリートの身体をジッと眺めていた。
(ダニエラさんもマッチョ好きか………話してる間に少しも興味を感じさせなかったのは流石だわ………)
* * * * *
商人ギルドを出たアリーチェは、ラダック村特産品店に向かった。
繁盛しているようで相変わらずの行列だ。
今日の店の護衛はジョバンニさんだったので、冒険者の事を少し聞いてみた。
「この街にジョバンニさんより強い冒険者って、どれくらいいるの?」
「そりゃあ結構居るぞ。この街では領主軍団長がBランクで1番だな。領主軍の魔導師に1人Cランクが居て、兵士にもCランクが結構居るな。俺はLv35だからCランク中盤だ。この街にBランクの冒険者は珍しく、Cランクが多いんだ。BやAランクになると稼ぎのいい王都に行くからな。この辺の田舎街にはめったにいないんだ」
「そうなんだ、ありがとう」
(イフリートとフラウが精霊なのはジョバンニさんにもバレてないみたいだから、この街で気をつけるのは、その団長さんと魔導師と教会の聖職者かな)
アリーチェがふとイフリートを振り返ると、いつの間にかジョバンニさんと筋肉の話しで盛り上がっていた。
身体つきからジョバンニさんの目指す理想型はイフリートが近いかもしれなかった。
* * * * *
次の目的地は孤児院だ。
途中の屋台広場で、朝食の為の串焼きを買いだめしてから孤児院に向かった。
孤児院に着くと串焼き屋に行列が出来ていた。
「セラフィナさん凄い列ですね」
「あらっ綺麗な服!素敵じゃない!あっ行列ね、そうなのよ、日に日にお客さんが増えていって、いつの間にかこの行列よ。きっと食べた人の口コミね。嬉しい忙しさだわ!」
「何か手伝いましょうか?」
「串を焼くだけだから大丈夫、ありがとうねアリーチェちゃん!」
孤児院の串焼き屋が繁盛してて、アリーチェは安心した。
串焼き屋に看板があるのに気づいて読んでみると、〖串焼き屋 森の泉〗と書いてあった……
(もしかして、孤児院の名前って、森の泉だったのか…………孤児院の看板が何処にも無いから気が付かなかったわ)
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