マウロPTと孤児院へ!
マウロPT初めての魔物狩りは無事に終了し、ボスコの西門まで帰って来た。
門番のミルコが声をかける。
「おっ、無事に帰って来たな、魔物と戦ってどうだった?」
リーダーのマウロが答える。
「勝てたけど強かったです、4人でやっとでした」
「そっかぁ、魔物は強いと言うその気持ちを忘れずにな、そうすれば大丈夫だろう。余裕でしたとか言う奴らは、その後魔物を甘く見るのか、帰って来ない奴が多いからな。これからも気を引き締めてな、お疲れさん!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
マウロPTは冒険者ギルドに来て、常時依頼報告をして魔石と毛皮を引き取ってもらった。
受付はネムさんが担当してくれた。
「無事に帰って来て良かったわ、お疲れさま」
「「「「ありがとうございます!」」」」
ジョバンニさんも、受付でマウロPTの先生の依頼達成を報告した。
「これからも気をつけてな、森の奥には行かない事と、少しでも無理だと思ったら迷わず逃げる事。それが出来れば1人前の冒険者だ。がんばれよ!」
「「「「はいっ!ありがとうございました!」」」」
冒険者ギルドを出たアリーチェとシドとマウロのPTメンバー4人。
サンドロが、リュックに入っているウッピーのお肉を見ながらアリーチェに聞いて来た。
「このお肉は持って帰って食べていいの?」
食べる気満々のサンドロ。
「これからそのお肉を持って、みんな一緒に来てもらいたい所があるの」
「何かあるのですね、アリーチェ師匠!」
「えっと………じゃあこっちね」
アリーチェは、てくてくと歩いて行った。
* * * * *
アリーチェがみんなを孤児院まで連れて来た、
「ここよ!」
「「「えっ、孤児院?」」」
アリーチェはスタスタと中に入っていく。
「こんにちは~!セラフィナさ~ん!」
セラフィナさんが出て来た。
「いらっしゃいアリーチェちゃん!あらみんな!冒険者みたいな格好して、元気にしてる見たいね………どうしたの?」
「「「「…………さぁ?」」」」
アリーチェは笑顔で話し始めた。
「セラフィナさん、ウッピーのお肉を仕入れて来ました」
ウッピー2匹分のお肉をセラフィナに渡してアリーチェはマウロ達を振り返った。
「ウッピーを倒してくれた冒険者、マウロ・サンドロ・アメディオ・レベッカの4人です」
アリーチェはマウロ達に1歩近づく。
「PTを組む最初にマウロ達に言った、アリーチェからみんなへのお願いだけど、これからも孤児院の為に、魔物を狩ってお肉を孤児院に卸して欲しいの……どうかしら?」
突然で初めはぽかんとした表情だったが、徐々に状況を理解する4人。
マウロはみんなと頷き合ってからアリーチェに向き直る。
「ああ、もちろん引き受けた!」
「まあっ!そう言う事だったの………ありがとう。………みんな立派な冒険者になったわね。でも無理はしないでね」
そう言ってセラフィさんはみんなを抱きしめた。
「「「「………グスッ」」」」
セラフィナはウッピーのお肉を料理して、みんなに食べさせてくれた。
「はいどうぞ!アリーチェちゃんのアイディアでね、孤児院の入口で屋台を出す事にしたのよ、この串焼きとスープなんだけど………どうかしら?」
焼きたての串焼きと温かいスープをみんなは食べてみた。
「セラフィナ先生、串焼きもスープもおいしいと思うわ」
「うん、おいしいよ」
「おいしい。孤児院に居た頃を思い出すな」
他の3人とは裏腹に、サンドロが難しい顔をしていた。
「セラフィナ先生。孤児院での食事として食べるなら美味しいと思う………けど、屋台の串焼きとして買って食べるとなると、その………」
「なんだよサンドロ!おいしいじゃないか!」
怒ってくれたアメディオや、正直に感想を言ってくれたサンドロに
「いいのよアメディオ。みんなももありがとうね、先生も頑張ってもっと美味しくしたかったんだけどね」
アリーチェは串焼きを食べてみて少し肉の堅さが気になっていた。
「セラフィナさん、今孤児院にあるお野菜を見せて頂けますか?」
「えっ?お野菜?いいけど……」
キッチンに案内され、目の前にあるお野菜をチェックするアリーチェ。
(前の世界と似たようなお野菜が結構あるのね…………あった。たぶんこれをつかえば)
アリーチェが手に取った野菜は、タマネギの様な野菜だった。
「セラフィナさん、このお野菜ってよく使いますか?」
「ほとんど使わないわね。街で使う人もあまりいないから安いのよ。切る時に涙が出てくるし、昔から人々には神様が泣いていると考えられてきて、使ってはいけない野菜だと考える人たちには禁忌になってるわね」
「分かりましたセラフィナさん。ではアリーチェはこれからその禁忌を冒します!」
「へっ?大丈夫よ。孤児院でも私にとっても、それほど禁忌じゃないから。まあ切るのが大変だから私は遣わないけどね」
「ではまず、このタマネギ…………えっと、これってなんて呼んでます?」
「ティアーよ」
「はい、改めまして、このティアーをみじん切りにします!号泣を覚悟して下さいね!」
「そっ、外にいてもいいかしら…」
「セラフィナさんは手伝ってもらうのでダメです。セラフィナさん以外は外へどうぞ」
周りにいたみんなは、速攻で庭に出ていった。
アリーチェとセラフィナは、涙を流しながら、タマネ………ティアーをみじん切りにしていた。
「グスッ……でぎだわ」
「グスッ………あぃ…おばりばじだで」
ウッピーのお肉を切り分けるアリーチェ。
「ではみじん切りにしたティアーの中に、このお肉を30分くらいつけ置きます」
「30ぷん?」
「あ~えっと、飲み物を飲んで少し休憩するくらいかな」
「分かったわ、じゃあ飲み物飲んで休憩ね」
庭に行くとみんな子供たちと遊んでいた。冒険者の格好は、子供たちにも人気な様で、ウィンディーネが魔物役になって冒険者ごっこをやっていた。
30分くらい休憩してからアリーチェとセラフィナは、キッチンに戻った。
「じゃあセラフィナさん、このつけ込んだお肉で、さっきのと同じように、串焼きを作ってもらえますか?味付けは塩だけでいいです」
「塩だけね、分かったわ」
焼き上がった串焼きを持って、庭にいるみんなの所に行って試食してもらった。
味にうるさいサンドロが良い反応をした。
「なんだこの串焼きは!柔らかくとてもジューシーで、塩味だけのシンプルな味付けと思わせておいて奥深い味わいがある。肉の中まで味が染みこんでいて凄くおいしい!」
「うん、さっきのもおいしいけど、これはもっとおいしいわ」
「うん、凄くおいしい!」
「もっと食べたくなるな」
サンドロがセラフィナを真っ直ぐ見た。
「これなら他の串焼き屋といい勝負が出来ると思いますよセラフィナ先生!いやっ!勝てるかもしれない!僕にとっては今まで食べた中で1番美味しい!」
サンドロは食に関してとても熱かった。
「あとスープも、このお肉を使って、水から煮込み始めると少し違うと思いますよ。今後味付けはサンドロと話しあってはどうかしら?」
テンションが上がるサンドロ。
「私をご指名ですねアリーチェ師匠!わっかりました!全力で協力させて頂きます」
「ありがとうアリーチェちゃん、サンドロちゃんもありがとうね。スープはさっそく今夜にもやってみるわね、せっかくアリーチェちゃんに商人ギルドに登録してもらったんだから、すこしでも早く営業出来るように頑張るわ。教会の仕事があるから営業出来る日は限られるけどね」
アリーチェはダニエラにお願いして、セラフィナを商人ギルドに登録してもらったのだ。とりあえず登録料はアリーチェが出したのだ。
孤児院の串焼き屋に希望が見えてきた。
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