装備を揃えたら、そりゃ嬉しいよね!
朝練を始めてから3日目。
みんな真面目に参加していた。1番年上のマウロが慕われているからなのか、レベッカを好きだからなのか微妙に分からなかった。
いつもの朝練が終わって、アリーチェはみんなに串焼きを渡しながら、今日の予定を説明する。
「かいた汗を綺麗にしたら、今日は装備を揃えに行きます」
「「「「やった~~!」」」」
「知り合いに、一緒に買い物に行ってくれる様にお願いしていて、冒険者ギルドで待ち合わせなので、後でみんなで冒険者ギルドに行きましょう」
「「「「はいっ!」」」」
みんな良い返事だった。
* * * * *
アリーチェを先頭に、冒険者ギルドのウェスタンドアを通って中に入るマウロとそのPTメンバー。
中にいた冒険者には、その4人が孤児院出身だと知っているので、ヒソヒソと話しながらもあまり良い雰囲気では無かった。マウロたちもそれが分かるので少し萎縮していた。
そんな雰囲気もお構いなしにアリーチェがジョバンニに声をかけた。
「ジョバンニさ~ん、今日はよろしくお願いします~!」
「あぁ、この4人か、俺はジョバンニだ、よろしくな」
右手を差し出すジョバンニ。
「マウロです」
「サンドロです」
「アメディオです」
「レベッカです」
ジョバンニは1人ずつ丁寧に握手をした。
「マウロとレベッカの事は知っているよ、初級の依頼をやってくれている冒険者だな。冒険者としては目立たないが、街の人たちからは助かっていると言う話しを聞く。俺が言ってもしょうがないが言わせてくれ、ありがとう」
いつの間にかネムは5人分のジュースをテーブルに運んできてくれていた。
「冒険者ギルドからも言わせて、いつもありがとうねマウロにレベッカ」
顔が赤くなるマウロとレベッカ。
ギルドのテーブルに座って、ネムが用意してくれたジュースを飲みながら、ジョバンニさんと話しをした。
「アリーチェから聞いた通りのPTメンバーだな、4人で戦うならやはり、マウロと太っちょが攻撃もする盾役で、レベッカとアメディオがアタッカー兼サポート役で決まりかな」
それぞれ頷いているが、サンドロだけは何か小声で呟いていた………
「太っちょ?………太っちょ……」
* * * * *
みんなで武器屋に来た。
「おやっさん、この5人に剣と盾と短剣を捜してるんだが、初心者用で何かないかな?」
「おぉジョバンニか、なんじゃ子供を集めてボランティアか?まぁよいわ。初級だとそのワゴンに入っておるのがそうじゃ。中古だったり木で出来た物だったりじゃな」
「じゃあまずみんな、自分の好きなのを選んでみろ」
マウロたちはワゴンに集まってワイワイと選び始めた。
「んっ?アリーチェはいいのか?」
「アリーチェまだ7才だし、まだいいかな~って」
「剣の練習は何才からやってもいいんだぞ、これなんかどうだ?」
ジョバンニはワゴンから細身で軽そうな、短めの片手剣を渡してくれた。
アリーチェはシドの剣の練習を見ていたしたまに教えてもらっていたが、いつも大人用の長さの剣しか使った事が無かったので、少し試しに振ってみた。
スーッ、ヒュン、ヒュン、スパッ!ヒュン、ヒュン、シュビィィィン!
まるで踊りでも踊っているかの様に美しく華麗な剣裁きだった。
「うん、中々振りやすいね!悪くないかも…………あれ?どうしたのみんな」
みんなアリーチェを見て、呆然としていた。
ジョバンニが驚きながらも聞いてきた。
「あっ、アリーチェ?7才だったよな?剣術をその……どこかで習ったのかい?」
「え~と、シドに教わったり、シドが剣の練習してるのを真似してたの。でもいつも木の棒とかだったし、たまにシドから借りる剣は重いから、全然上手く出来なくて剣術はあまり好きじゃなかったわ」
「好きじゃなくてその腕前か。それにシド殿は魔法だけじゃなく剣術も嗜むのか………流石だ」
アリーチェの剣裁きとジョバンニの言葉を聞いて、PTメンバーの中の、シドとアリーチェの株がかなり上がっていた。
それぞれワゴンから選んだ武器は、ジョバンニが話したPT構成に合う物だった。
マウロとサンドロは、体格に合う長さの片手剣。アメディオとレベッカは短剣を選んでいた。
「なかなかいいと思うぞ、あとは………」
ジョバンニはワゴンから、更に短剣を5本選び出しみんなに渡した。
「予備の短剣は全員が持っていた方がいい、何があるか分からないからな。今日はワゴンセール品だが、スライムとか弱い魔物はみんなで殴っても倒せるから、それでお金を貯めたらまた良い武器を買えばいいさ」
(なるほど………でも予想よりだいぶ武器の数が多いわ………お金大丈夫かな)
自分の剣は勿論、予備の短剣も考えて無かったアリーチェ。でも剣を振ってみたら自分も欲しくなってしまったのだ。
カウンターに行ってアリーチェが、店のおじさんに訪ねる。
「全部でいくらでしょうか?」
「えっ?お嬢ちゃんが払うのかい?ジョ……ジョバンニいいのか?」
「あぁ、俺はアドバイスだけお願いされてるんだ。でもなるべく安くしてくれよ」
「ははっ、まぁワゴンの武器だから高くは無いが、ちょっと待ってくれよ計算するから……」
アリーチェと子供たちは、おじさんをじい~っと見つめていた。
「…………計算し辛いなぁ、え~っと、片手剣3本で3万で、短剣が7本で3万5千っと、しめて全部で………6万5千ターナじゃな」
前の世界の時に姉に教わった事がある。
「相手が最初に言った値段から買い物の値引き交渉はスタートするものなんだよ」……………と。
「分かりました、では3万ターナでどうでしょう?」
「「「「「はっ?」」」」」
その場にいた全員の声が出た。
暫くの掛け合いの結果、値段は4万5千ターナで決まった。
「いやいや、まさかお嬢ちゃんにここまで値引き交渉されるとは思わなかったよ。なんか楽しくなってきたな、どうだ、わしの娘になって店を継がないか?」
店の奥から女の人の声がした。
「あんた何言ってんの!ちゃんと娘がいるでしょ!!」
肩をすくめる店のおじさん、
「すまんなお嬢ちゃん………話しの分からん母ちゃんで」
アリーチェは苦笑いしながら、持っていた小袋から銀貨5枚を払った。
おじさんはおつりの小銀貨5枚をアリーチェに渡した。
「またいつでもおいで、待ってるからな」
みんなでお礼を言って、お店を後にした。
* * * * *
次に行った防具屋でも、アリーチェの値引き交渉は行われた。
結果、みんなの防具はリーズナブルな値段で揃った。
皮の鎧を4人分、鉄の盾を2つ、合計で8万の所を、5万でお買い上げだ。
皮や木の盾もあったが、守りは重要だし重いが鉄の盾は大抵の攻撃は防いでくれるからとジョバンニが主張したので鉄の盾となった。
皮の鎧に関しては、アリーチェの分もとなったが、他の装備の予定があるから断固要らないと断ったのである。
巫女装束である、アリーチェは戦う時も巫女装束を着るつもりだったのだ。
本日のトータルのお買い上げ金額は9万5千ターナ。金額としては結構かかったが、内容としては、かなりお得な買い物だった。
値引き交渉の賜物だ。
PTメンバーの装備は、全てマウロのアパートに置く事になった。
みんな自分の武器と防具を装備して、帰りの道中とても嬉しそうだった。
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