朝稽古!
朝の早い時間の中庭、周りは明るくなってきたがまだ肌寒い。
朝稽古の為に、マウロ、サンドロ、アメディオ、レベッカの4人が中庭に集まった。
「さ~む~い~」
「ね~む~い~」
「……………」
マウロがみんなに発破をかける。
「アメディオ!サンドロ!甘えるんじゃない!レベッカは文句も言わないで頑張ってるじゃないか!」
「レベッカは眠くて、なにも言わないだけだぜ?マウロ兄貴」
「そうだよ~レベッカは、1番最後に来たから、眠いんだと思うよマウロお兄ちゃん」
「…………」
立ってるのがやっとのレベッカは何も言わない。
神社の朝のお勤めは早かったので、早起きが平気なアリーチェだが、みんなのやる気を無くさない為に褒めた。
「いいのよ、朝練は眠くて当然よ。みんな集まれて偉いわ。きっとマウロの為にみんな頑張ってるのね」
「そうなのか?俺の為に?」
サンドロとアメディオは、お互いを見てから、うんうんと頷いた。
レベッカはぼ~っとしてて動かない。
照れるマウロ。
「そうだったのか、ありがとな」
「それではシド先生もいる事だし、朝の練習を始めます」
みんながハッとした表情で一斉に後ろを向くとシドが立っていた。
「「「「おわっっ!」」」」
「おはよう皆さん」
アリーチェがみんなに指示を出す。
「じゃあ最初は身体をほぐす為に、体操から始めます」
「「「たいそう?」」」
「そう、アリーチェのまねをしてね、まず両手を広げて、お互いがぶつからない距離をとって」
みんな訳も分からず指示に従う。
「じゃあ始めます!ラジオ体操第1よ~い!♪チャ~ンチャッカチャンチャ~ンチャン♪」
音楽を口ずさんでリズムに乗ってラジオ体操を始めた。
「手を前から上に背伸びの運動~、いっち・にい・さんっ・しっ・ご~・ろく・しち・はちっ!」
みんなアリーチェを見ながら、何とかラジオ体操を真似していった。
「なんだこれ………でも身体は温まったかな」
マウロの言葉にみんな頷いていた。
「では次は筋トレです。腕立て伏せ!」
「「「うでたてふせ??」」」
アリーチェはやって見せた。
その後も腹筋・背筋と、筋トレは続いていった。
「今日の朝の練習は、これで終わりにします。みんなよく頑張りました。お疲れ様でした」
みんな疲れて地面にへたり込んでいた。
マウロが疑問を口にする。
「あれ?剣の練習は?」
「今日はやりません、先ずは3日間は体力づくりで、今日やった事を毎日やります」
「「「え~~っ!」」」
「3日間頑張った人は、武器と防具を買ってあげます」
「「「おおお~~っ!」」」
「あと、朝の練習を頑張った人には、朝食として串焼きをあげます」
「ほっ本当っ?!」
サンドロが今までで1番素早い動きで立ち上がった。
サンドロはちょっとぽっちゃり体型だし、何となく食いしん坊的な………そういう雰囲気はあった。
(やっぱり食いしん坊キャラか……)
1度自分の部屋に入り、アイテムボックスから昨日屋台で買っておいた串焼きを4本出して、まるで部屋から持ってきたかの様にして、みんなに渡した。
一口食べたサンドロ。
「この味はもしかして、屋台広場で1番の“いきなり!串焼き!”の味だっ!」
戸惑うアリーチェ。
「えっ?名前までは覚えてないけど、屋台広場の入り口のお店で昨日買ったわ」
サンドロは疑いの眼差しをアリーチェに向けた。
「いやいや、昨日買っただなんて、僕の舌は誤魔化せませんよ?」
訳も分からず慌てるアリーチェ。
「えっ?何?えっ?」
何故かぐいぐい来るサンドロ。
「あり得ないんですよアリーチェさん。食べれば僕には分かるんです。この串焼きは…………焼きたてだ!!」
そんな事かとホッとするアリーチェ。
「あぁ、そうゆう事ね、今少し温めたわ」
串焼きを食べながら、更に顔を近づけて来るサンドロ。
「いやいやっ、温め直して無いですよねっ!これは温め直した串焼きじゃない!」
またまた何かがバレたのか焦るアリーチェ。
「えっ、いや、これは……」
不敵な笑いを浮かべてサンドロが言い放つ。
「これはねぇアリーチェ…………焼きたてだよ!!…………アリーチェさん………いやっアリーチェ様、下ごしらえにタレに焼き方まで知ってますね?」
ガバッと土下座の体勢になったサンドロ。
「弟子にして下さい!アリーチェ師匠!」
全員が呆れていた。
そしてまたまたアリーチェはホッとした。
アリーチェは作り方など知らないが色々と誤魔化して返事をする事にした。
「ん~、朝の練習を頑張って、1人前の冒険者に成れたら………考えるだけは考えてみるわ」
「はい!必ず1人前の冒険者になります、アリーチェ師匠」
(なんか悩みが増えた感じだけど、ぽっちゃり体型のサンドロがやる気MAXになって良かったわ)
「それじゃあ今日は解散よ、お疲れさまでした」
「「「「お疲れさまでした!!」」」」
何もしなかったシドが、ぽつんと寂しそうに立っていた。
* * * * *
アリーチェは孤児院のセラフィナさんに、食材の仕入れは2週間後からに伸びそうだと伝えにいった。
セラフィナさんは料理を試行錯誤中だったので、1週間延びたのは有難い様だった。
「やっぱり串焼きは競争率が激しいから、味は大事よねぇ」
セラフィナさんはかなり真剣に悩んでいた。
「そうね、一緒にスープなんて売り出したらどうかしら?」
疑問に思うセラフィナさん。
「スープ?屋台で売っても、器が無いと持ち歩けないんじゃないかしら?」
「屋台の横で食べてもらってもいいし、コップに入れて売ってもいいんじゃないかしら」
「コップ?確かに歩きながらでも食べられそうね、でもコップ代がかかるわね」
(そっか、スープを入れても大丈夫な紙コップなんて、この世界には無いか)
「屋台の横で食べる人はコップを貸してスープ代だけで、歩きながら食べたい人はコップ代もお願いして、次からコップを持ってる人はスープ代だけにしたらどうかしら?」
「そうね……コップも売るのね、良いかも、面白いかもしれないわ」
「コップにはセラフィナさんが考えたマークを付けたら、屋台の宣伝にもなるんじゃないかしら」
「おお、それも良いじゃない!味さえ美味しかったら絶対流行りそうだわ!いいアイディアをありがとうアリーチェちゃん、頑張って考えてみるわ」
セラフィナさんが前向きに頑張ってくれる人で良かったと感じるアリーチェだった。
孤児院を出て、屋台広場で朝の練習後の朝食として、串焼きを何店舗かで買いだめした。
1串200ターナなので、今のアリーチェには余裕だった、オークションありがとうって感じだ。
串焼きを大量に買って、手持ちのお金が足りなくなりそうだったので、商人ギルドで少しお金を下ろして、アイテムボックスにこっそり収納した。
ジョバンニさんを捜して、特産品店とかを歩き回って冒険者ギルドで見つけた。
アリーチェが冒険者ギルドに入るといつもの様にネムが、受付の行列をそのままに直ぐにアリーチェをテーブルに案内してジュースを出してくれた。
並んでいる人たちに色々と申し訳なくて、あまり冒険者ギルドには顔を出さない様にしようと思うアリーチェだった。
テーブルでジョバンニに、マウロのPT構成を伝え、どうしたらいいか相談した。
「そうだな………PTリーダーのマウロとその太っちょが盾役で、他の2人がアタッカー兼サポート役かな」
アリーチェは焦っていた。
(………アリーチェの説明のなにがいけなかったのかしら………サンドロが太っちょ認定されちゃった)
「んっ?どうしたアリーチェちゃん」
「あっ、いえっ、大丈夫です。それで装備はどうしたらいいかしら?」
「Lv1なら先ず、基本的に剣と盾がいいだろうな、アタッカーの女の子は短剣が良いかもしれないな。素早さが大事になってくるから剣では扱いきれないかもしれない。まぁ本人の身体能力とやる気次第だけどな」
「ジョバンニさん、明後日なんだけど、みんなの装備を買うのに一緒に来てもらってもいい?」
「明後日か、ああいいぞ。店によっちゃあ変な所もあるからな、分かった一緒に行こう。店はこの近くだから、冒険者ギルドで待ち合わせで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます。2の鐘の頃にお願いします」
「分かった、2の鐘だね待ってるよ」
街では鐘で時刻を知らせていた。
朝の6時頃が1の鐘で1回、9時頃が2の鐘で2回、お昼の12時頃が3の鐘で3回、15時頃が4の鐘、最後は18時の5の鐘で5回の鐘が鳴る。
夜はうるさいので鳴らさず、次また朝の1の鐘となる。
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