孤児院に行ってみた!
初日のラダック村特産品店の営業は、大きな問題もなく無事に終える事が出来た。
多少ごねるお客様にはローラさんが対応し、かなりごねる時はニッチェさん、いちゃもんを付けて来る客には体格のいいジョバンニさん、貴族関係にはなんと商人ギルドのダニエラさんが対応してくれた………そう、何故かダニエラさんが手伝いに来てくれたのだ。
(商人ギルドの仕事は大丈夫なのだろうか………商人がタダで動く筈がないわよね)
後が怖いアリーチェだった。
昼過ぎには、本日分の販売数は完売した。
「本日はありがとう御座いました」
店を閉めてから、手伝ってくれたみんなにお礼を言うニッチェ。
店舗の営業や貴族の応対など、いろいろと勉強になったと感謝していた。
明日からの警備員の依頼は、ジョバンニさんのPTメンバーが日替わりで受けてくれる事になった。
初日と言う事もあり、ローラさんは無理をしていたので、数日は休んでもらう事にして、体調が良くなってから来てもらえばよい事になった。
ダニエラはたまにローラの事を観察するように見ていたが、特になにも言う事は無かった。
アリーチェがダニエラに、貴族関係の対応のお礼を伝えると………。
「お礼なんて、こちらこそありがとう御座います。良い商売人との関係を築ける事は大切ですから。もし、そのお人形さんの販売を始める時がありましたらどうぞ私にも手伝わせてください。特に貴族には大変人気の商品になるでしょうから………ね」
商売絡みか………まぁ予想はしていたが、こちらとしても助かる申し出ではある。
「ありがとうございます、その時はまた相談しますので、宜しくお願いします」
初日の営業は大成功で終了し、みんな笑顔で帰路についた。
* * * * *
次の日の朝。
ルカを見送ってからアリーチェはシドと2人で孤児院を見に行ってみた。
平民街にある屋台広場を南に向かうと貧民街に入った。
そのまま進むと、保育園の様な庭付き木造平屋建ての施設があった。
「子供達の声がするし、ここっぽいわね」
大人の背丈くらいの木の柵に囲まれている。
「じゃあおねーちゃんはお仕事行ってくるから、仲良く遊んでるのよ?」
「「「「は~い!」」」」
入口から女の人が飛び出してきてアリーチェとぶつかった。
「いたたっ………」
「いったぁ~い」
直ぐに女の人が駆け寄って、転んでいるアリーチェを助け起こしてくれた。
「ごめんなさいね大丈夫だった?何処か痛い所はない?」
ショートカットのおっとりした感じの女の人だった。
「うん大丈夫、何処も痛くないよ」
孤児院の入り口には、子供たちが集まって来ていた。
「またやっちゃった~!」
「あ~あっ!」
「おね~ちゃんおっちょこちょいだから!」
「ちゃんとごめんなさいできたから、おねーちゃんをゆるしてあげてね」
2才から9才くらいの子が10人ほどいた。
いきなり賑やかになって戸惑うアリーチェ。
「おねーちゃんだれ~?」
「おね~たんだぇ~?」
「あたらしい子?」
「おともだち~?」
女の人が子供達をまとめる。
「はいみんな良い子だから、中で遊んでてね~」
「しょうがないな~」
「おね~ちゃんしんばいなんだよね~」
「まあいっか、あそびのつづきやろ~」
「うんやろ~」
「あそぼ~」
女の人が子供たちを孤児院内にもどして、門を閉めた。
「フ~ッ、すいませんでした」
アリーチェは微笑ましく感じていた。
「いえ、こちらこそ入り口の前に居たりして、すいませんでした」
「あらっ!とてもしっかり者なのね」
そして、アリーチェの横に立っているシドに気づいた女の人は慌てて、挨拶をする。
「あっすいませんでした。孤児院のシスターをしています、セラフィナと申します」
「シドと申します」
「私はアリーチェです」
「えっと孤児院に何か御用ですか?………もしかしてアリーチェちゃんを……」
セラフィナさんはズンとシドに近づいた。
「失礼ですがお父様!お子様は親と一緒にいるのが1番です。見たところ生活が苦しい訳では無さそうですね。お子様の幸せの為に考え直して一緒にお帰りになって下さい!」
なかなかの迫力だった。子供思いの良いシスターなのだろう………子供達が心配する程の、おっちょこちょいや勘違いさえなければ。
アリーチェが苦笑いしながら答えた。
「いえっ、孤児院に入る為に来た訳ではありません、孤児院がどんな所なのか見ておきたくて来ました」
「えっ、そうなの?あらやだっ、私の早とちりでしたね。申し訳ありません。私はこれから仕事なのでちょっと代わりの者を呼んできますね」
門の前からセラフィナさんが叫んだ。
「パオラおばさ~ん!パオラおばさ~ん!見学のお客さんだって~!私は仕事に行ってくるからよろしくお願いします~~!」
「はいよ~今行くから~!」
「ではここでお待ち下さいね、失礼します」
セラフィナさんはお辞儀をしてから走り去って行った。
その後、パオラと名のる恰幅のいい優しそうなおばさんが来て、孤児院の案内といろいろな話しをしてくれた。
パオラおばさんは近所の人で、昼間はお手伝いで来ているそうだ。
孤児院の責任者は、10年くらい前にセラフィナさんに代わったのだとか。
孤児院の運営費は、セラフィナさんの稼ぎと街の人の寄付で賄っている。
セラフィナさんは教会で働いているが、魔法の才能がある職員ではなく、いろいろな雑用の仕事をしているそうだ。
お昼が近くなると食事の準備があるようなので、アリーチェはお礼にとアイテムボックスに入っていた、ウッピーのお肉を置いて孤児院を後にした。
* * * * *
午後はローラさんの所へ行き、絵に描いたりして作ってもらう服の説明をした。
「形はこんな感じで、上は真っ白な生地で、下は赤で………ここは紐で結ぶので紐を付けてもらって……」
アリーチェは時間をかけて、白い着物と緋袴を説明した。
「ふ~ん、上に着るシャツの袖がかなり大きいわね、下もスカートとは違うわ………面白そうね」
ローラは最初不思議そうに聞いていたが、好奇心がそそられたのか最後は楽しそうに聞いていた。
アリーチェがどんな生地があるか聞くと、植物の繊維の生地と、動物の毛から作る生地があるそうだ。
虫の吐く糸で作った、光沢のある生地がないか聞いたが無いそうだ。
虫が吐く糸と聞いて、ローラは引いていた。
(シルクをイメージして聞いたけど…………言葉だけならそうなるか)
「着たらどうなるのか分からないけど、頑張って忠実に作ってみるわ、期待しないで待っててね」
「ありがとう、急がないから無理せずゆっくりでいいからね」
(ふぅ~、これでやっと巫女の衣装ができそうだわ………くぅ~苦節7年)
巫女装束を着たイメージをして舞ってみるアリーチェ。
「ピィ~ヒャララ~♪ふん~ふふん~~ふんっ?……………!!」
動きが止まるアリーチェ。
(おっ………おっ………音楽が無いわ!)
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