ローラさんの協力!
3人で一頻り泣いて、落ち着いたところで改めて話しをした。
ベッドに座り自分の手をまじまじと見つめているローラ。
「夢みたい…………まだ信じられないわ。いったいアリーチェちゃんって」
「ん~ひ・み・つ!」
ローラの顔がほころぶ。
「ふふっそうよね、秘密にしなきゃいけないんだったわ、聞かない方がいいわね」
「ローラさんが笑顔になって良かった」
「ありがとう。最初にアリーチェちゃんを信じてあげられなくてごめんなさいね」
椅子に座って足をぶらぶらさせているアリーチェ。
「いいのいいの、アリーチェだってこんな事信じられないもの」
ピエロが2人に飲み物を持ってきた。
「僕も目の前で見たけどこの魔法はやっぱり信じられないな。アリーチェちゃんが秘密にするのは正解だよ。知られちゃったら大変な事になる。アリーチェちゃんを利用してお金儲けを考える人や権力を得ようとする人、損害を受ける人たちは命を狙ってくるだろうね」
「うわ~心配だわ。アリーチェがもっと大人になって、自分の身を守れるようになったら、広めていこうと思ってるの。この魔法が必要な人の為にね」
再び自分の手を見るローラ。
「私もその一人なのね、ありがとうアリーチェちゃん。人の為にって考え方する人なんていないわよ?」
「でもピエロさんは、ローラさんの為に一緒に居たんでしょ?」
赤くなるピエロ。
「確かにローラを守ろうと思っていたけど家族になったからね。他人までは考えた事ないよ」
「そうかぁ、でもみんなが近くの人を大切に思えば、多くの人が幸せになっていくんじゃないかな」
「みんなが幸せにか………。アリーチェちゃんは恩人だし、もう家族同然だ。秘密も絶対に守るから安心してね。ただ今のローラをあの商人が見たら何を言ってくるか心配なんだよなぁ」
「あの商人ねぇ…………女神様が現れて治してくれましたじゃあダメよねぇ……」
「女神様?確かに目の前の小さな女神様が治してくれたのは事実だわ。嘘発見の魔道具に掛けられても平気かしら」
「女神様だなんてそんな……」
「ふふっ、私にとってアリーチェちゃんは女神様よ。心からそう思うわ」
「…………」
恥ずかしくなるアリーチェ。
「女神様か、何だか誤魔化せそうな気がしてきたな。嘘は言ってないわけだし」
「じゃあ何か聞かれたら商人にはそれでいってみるわね。あとはダニエラさんね、なんて説明した方がいいと思う?」
「ダニエラさんかぁ、商人ギルドの人だから口は堅そうよねぇ……」
「頭の良い方だから嘘は見抜かれると思うわ、でも同じいい訳でいいんじゃないかな。秘密がある事はバレちゃうけど、騒ぎ立てたりせずにそっとしておいてくれると思うの」
「そう?じゃあそれで。バレたらバレたでその時考えればいいし」
「ふふっ、大変な秘密を持ってる割には楽観的なのね」
「なるようにしかならないしね。あとローラさんのお店、今ラダック村のお店に改装してるけど、本当に良かったの?」
「もちろんよ、お店を再開するのは当分無理だし、アリーチェちゃんたちの役に立つのなら嬉しいわ」
「ニッチェさんは料金の割にかなり良い場所だって喜んでたわ」
「ふふっ、次の人がアリーチェちゃんたちで良かったわ」
ローラはふと思いついた。
「ねえ、もし良かったら、そのお店で私を雇ってくれないかしら、アリーチェちゃんたちの役に立ちたいの、お店の事でいろいろとアドバイスも出来ると思うの」
「ローラさんならニッチェさんも大歓迎だと思うわ。今日にでも話しておくけど、無理はしないでね」
「ありがとうアリーチェちゃん。早く元気に働けるように頑張るわ」
「うん。それでちょっと質問なんだけど、生地から選んで少し変わったデザインの服を作りたいんだけど、何処かいい服屋さんないかしら?」
「そうね、何処の服屋さんでも作ってくれるけど、腕の良い所は高くなるのよ。新しいデザインだと打合せもするし時間もお金もかかるわよ?」
「自分じゃあ作れないから何とかお金を貯めるわ」
あっ!と何か思いついた顔をするローラ。
「アリーチェちゃん!それ私にやらせてくれないかしら?」
「えっローラさんに?」
「ええ、路地裏のお店とは言え東広場の近くでおみせを出していたから腕は悪くないわよ?設備は隣の部屋にあるから、生地が決まれば今日からでも始められるわ。お願い!アリーチェちゃんの為に是非やりたいの」
「ローラさんなら嬉しいけど………身体は大丈夫?」
「もちろん大丈夫よ。よしっ決まりね!私にお礼のチャンスをくれてありがとう。お金はいらないからね」
「お願いするんだからお金は払いますよ」
「私もお願いしてやらせてもらうからお金は…………じゃあ間をとって相場の半分って事でどうかしら?これ以上は譲れないわよ」
「ん~~分かりました。じゃあそれでお願いします」
ペコリとお辞儀をするアリーチェ。
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
ベッドの上でペコリと頭を下げるローラ。
「「ふふふっ!ははははっ!」」
部屋に笑顔と笑い声が溢れていた。
* * * * *
アリーチェはローラと、少し巫女装束の打ち合わせをしてから、ニッチェの所に行った。
働きたいと言うローラの事を伝えると、ニッチェはいつ連れて来てもいいからねと言って喜んでいた。
* * * * *
星の瞬く夜。
アパートの中庭で食器を洗っていると、レベッカとマウロが洗い物に来た。
アリーチェはマウロにそっとサーチをかけてみた。
マウロ(19)
Lv 1
HP 37
(ふぅ~ん、冒険者をやってるって言ってたけど、2人ともLv1だからまだ魔物は倒した事ないって事ね。HPはマウロの方が高いから年齢とかが関係してくるのかな。マウロは名前が1つって事は、レベッカと本当の兄妹じゃないって事よね。マウロが平民だったってのは分かるけど、レベッカ・ベリザリオはやっぱり親が貴族だったって事かしら………まぁ子供を捨てるような親になんて会いたく無いわよね)
「こんばんは~」
「………こんばんは」
「おう」
「お二人は冒険者以外のお仕事はやらないの?」
マウロが答えてくれた。
「男はみんな冒険者に憧れるもんだ。高レベルになれば尊敬されるし稼ぎもいいから冒険者一筋だな」
(レベル1だけど、高レベル目指してるって事でいいのかしら……)
「レベル上げるのって大変なの?」
「そりゃあ大変だぞ。魔物と戦うんだから命がけだ」
「マウロさんはレベル上げは、やらないの?」
「………そりゃあ上げたいけど、孤児院出身のレベル1冒険者とPTを組む奴なんていないし、1人でこの周りの森に行けば生きて帰れないからな……」
「そうなんだ。レベッカさんも冒険者をやりたいの?」
「………孤児院出身のあたいは他に出来る仕事が無いからさ」
(孤児院出身者って結構大変なんだ………)
「アリーチェなんにも知らないから変な事聞いてごめんなさい。最後に孤児院って何処にあるの?」
「そんなこと聞いてどうすんのよ、まあいいけど。街の南側の防壁沿いが貧民街なんだけど、その真ん中辺りにあるわ」
「この街に南門は無いから東西の門から一番遠くて、外に出るには不便な場所だ。まあ孤児たちが街の外に出る必要なんて無いけどな」
「貧民街の真ん中辺りね、分かったわありがとう」
洗い物も終わって、それぞれ部屋に帰っていった。
全体話数の48話から67話辺り、第2章森に囲まれた街ボスコ編内のシモーネに関する話しを修正・変更致しました。
読み進んでいた方々には申し訳ありませんです。
2021,11/5(金) m(_ _)m




