アリーチェの悩み!
アリーチェは精霊ルナに中級魔法のサーチを教えてもらった。
「意外と便利かも、ありがとね」
「いえ、お褒めにあずかり光栄です。それではアリーチェ様のご希望でした欠損を治す魔法、リジェネレイティブをご説明致します」
真剣な表情になるアリーチェ。
「………はい、お願いします」
「リジェネレイティブは、魔力をエネルギー源として身体の再生能力を上げて、身体の情報を元に失った箇所を再生させる魔法です。ケガをした時も元の皮膚は破損していて、ケガを治す魔法も新しく皮膚を再生しています。まさにその上位版ですね」
(情報ってDNAの事かな?元と同じようにか、魔力って意外と凄いのね)
「身体の再生能力と魔法の両方の力でおこないます。治したい箇所を魔力で包み込み、身体の再生を手助けし加速させます」
「何となく分かったわ、でも流石に練習は出来ないわよね」
「アリーチェ様の治したい方が、練習で宜しいのではないでしょうか?」
「う~ん、自信は無いけど、それしかないのかもね、分かったわ有り難うルナ。あなたがいてくれて本当に良かったわ、これからもずっとよろしくね」
褒められすぎてキョトンとするルナ。
「はっ!恐縮至極でございます。私の方こそどうぞ宜しくお願い致します!」
ひざまずくルナ。
「未来永劫アリーチェ様に尽くす所存に御座います。ではまた御用が御座いましたらお呼び下さい。失礼致します」
ルナは淡い光りの粒子となって消えていった。
アリーチェは神様にもお礼を伝える。
(アスクレーピオス神様、アリーチェです。どうも有り難う御座います。この魔法は困ってる人を助けるとても素晴らしい魔法だと思います。これからもよろしくお願い致します)
アリーチェは暖かさに包まれた気がした。
その日の夕食の後、中庭の洗い場でレベッカと一緒になった。
食器を洗いながらアリーチェは聞いた。
「あの~、レベッカさん?」
レベッカも食器を洗いながら素っ気なく相手をする。
「なに?」
「レベッカさんはの名前はなんて言うの?」
「名前?レベッカよ、さっきから呼んでるじゃない」
「えっと………その先とゆうか名前の続きと言うか………」
「貴族とかにある家名の事?そんなのあるわけ無いでしょ」
「えっ?レベッカ・ベリザリオじゃないの?」
「なによベリザリオって。レベッカってメモ書きと一緒に捨てられてたみたいで、物心ついた時には孤児院に居たのよ、養子に引き取られたけどその親も直ぐになって死んじゃったわ。だから今は孤児院で一緒だったマウロ兄と2人で頑張って生活してるのさ。マウロ兄に頼ってばかりだけどね」
「そう、嫌な話しをさせてごめんなさい。そんなつもりではなかったの」
「別に気にしてないさ。貴族は身勝手だからあんな風にはなりたくないね」
「大変だったのね。ところでお兄さんに冒険者ギルドで会ったけど、冒険者をやってるの?」
「ああ、孤児院を出た子供でも冒険者にならなれるからね。あたいも冒険者だよ。魔物とかは倒せないから街中の依頼をやってる」
「そう……」
「………なんか余計な事まで話しちまったね。あんたは親がいるんだからいいじゃない。大事にしなさいよ」
話し終わるとレベッカは部屋に戻っていった。
悪い人では無いようだった。
(『サーチ』魔法で出たレベッカ・ベリザリオの名前は何なんだろう。まぁ本人には必要ないみたいだからいいけど)
* * * * *
夜、アリーチェは考え事をしてなかなか寝つけないでいた。
ローラをどう治そうかと、レベッカ兄妹や孤児院の助けになれないかを悩んでいた。
(ローラさんとピエロに秘密を打ち明けられれば直ぐ治せそうだけど、手と足を治してしまったらローラさんのケガを知ってる人には騒がれるか………ウィスプにまた女神様にでもなってもらうかな。レベッカ兄妹はLv1だったからレベル上げを手伝ってあげられるわね。街での安全な仕事もあるといいのかな、孤児院のみんなも働けるような仕事が………)
悩み続けてアリーチェはいつの間にか寝てしまった。
* * * * *
翌朝、朝食を食べ終わったアリーチェはルカに相談する。
「ルカパパ、冒険者って仕事としてどうなの?」
「ん?どうとはお金がって事かな」
「ん~お金もそうだし、危険度かとか、やりがいとか」
「そうだな~、ランクの低い依頼は稼ぎが少ないが、危険度も少ない。ランクが上がると稼ぎも増えていくが危険度も増えていく。冒険者は少しずつ危険への経験をつみ対処の仕方を学び危険への準備をするから、相当不運な事が無い限り生きて帰ってくる。でもランクが高いほどミスをした時の命を落とす可能性が高くなる。報酬と共に危険度は高くなるって事かな」
「そっかぁ、稼ぐのって大変なんだね………ありがとうルカパパ」
「なんだい急に、アリーチェのパパだから当然さ」
「冒険者って魔法の才能が無いと大変なの?」
「そうだな、冒険者に限らず魔法の才能が無いと全てが大変かもな。パパもそうだが魔法の才能が無い冒険者はPTに誘われる事は殆ど無いから街中の依頼をやっていくしかないんだ。たまに独りでFランクの魔物を狩ったりしてLv15までは上がったけどね」
「そっか………魔法の才能の無い人同士でPT組んだりしないの?」
「レベルが低い者たちなら居るが、レベルが上がるにつれ冒険者を辞めていくかな。魔法が無いから魔物への攻撃力も落ちるし高価な回復薬も必要になってくる。命を賭けての仕事だから致命的な差になってくるんだ。依頼を成功させても回復薬代にもならないなんて事もあるから」
「なるほど………なんとなく分かった気がするわ」
「まあ、アリーチェは凄い魔法の才能があるから、変な人に利用されないようにするのが大変かもね」
「アリーチェの事はいいの、魔法の才能が無くても頑張ってく方向性が分かった気がしたの」
「魔法の才能が無いとみんな生きるだけで必死だからな………」
「いろいろ教えてくれてありがとう。ちょっと行く所があるからシドと出かけて来るね、ルカパパもお仕事気を付けてね、じゃあお先に行ってきまーす」
ルカは慌ただしく出かけて行くアリーチェを見送っていた。
「魔法の才能が無くてもか……」
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