教会でお祈りを!
高く蒼く澄み渡ったボスコの空。
もうすぐ太陽は真上になる時刻。
中央広場にある白い石造りのロンバルディア教・ボスコ教会。
高さ4メートルはありそうな木製の扉は大きく開かれていた。
神様と話すには、教会でお祈りをする必要がある為、シドとウィスプと3人で教会にやって来た。
だが教会内では精霊とバレてしまいそうなのでシドとウィスプは外で待っている。
アリーチェは一人で教会に入っていった。
扉を入るとすぐに受付の様な所があり、その前を通って中に入ろうとすると呼び止められた。
「お嬢ちゃん、1人?」
受付のグレーのローブを着た若い女の人が、話しかけて来た。
「はい、1人です」
「そう、じゃあ10ソルよ」
「10ソル?」
「入る為にまず10ソル必要なのよ、銅貨1枚か小銅貨10枚ね」
アリーチェはこの世界で、今までお金を持ったことが無かったし、硬貨の事など何も知らなかった。
早くお爺ちゃんと話して魔法の事を聞きたいが、アリーチェははやる気持ちを抑えて聞いた。
「お祈りをしたいだけなんですが…」
「教会に入る為にお金が必要なのよ。最低でも10ソル、100ソルなら少し祭壇に近づいて中央のイス、1,000ソルなら1番前のイスで祈れるのよ。お金が無いのなら入れる事は出来ないわ。神様への感謝の献金だから、信仰心が足りないって事ね、出直していらっしゃい」
追い出されてしまうアリーチェ。
(………教会って誰にでも扉を開いてるものだと思ったけど、お金を払わないと入れてももらえないのか)
トボトボとシドとウィスプの所へ戻っていった。
それを聞いて怒るウィスプ。
「神様にお祈りするのにお金をとるとは何という事!いずれ神様からの天罰が下るでしょう」
「そうですね、神様はお金が必要ないですからね。まぁ私たちも持ち合わせてなくて………すいません姫様」
「いいのよ。さてどうしようかしら」
(アイテムボックス内の物を売れば、何とかなるんだけど。魔物素材はきっと冒険者ギルドよね。1人で行っても買い取ってくれなさそうだしからまれて終わりね。かといってシドたちに来てもらうと、精霊である事がバレちゃうかもしれないわ。昨日行った時に魔力の高い人が居るのを感じたのよね。お肉とか何処かで買ってくれないかしら………)
「やぁアリーチェちゃん、教会に用事かい?」
後ろから声がした。
アリーチェは弱い魔力は感知していたのだが、人が多すぎて大きい魔力しか気にしていなかったのだ。、
(そっか、この魔力がピエロだったわね。人が多いと難しいわね)
アリーチェは振り向いて挨拶をした。
「こんにちはピエロ、教会にお祈りに来たんだけどピエロこそどうしたの?」
「あぁ教会に買い物に来たのさ、一緒の2人は?」
「あ~っと、こちらがシドさん、ラダック村で助けてもらった恩人なの。で横の女の人が………ウィ…ウィ……ウィナさん?」
アリーチェは確認の意味でウィスプの方を見た。
ウィスプは嬉しそうに微笑んだ。
「はい、私はウィナと申します。シドの妹です、以後よろしくお願いします」
ウィナの名前も受け入れて、丁寧にお辞儀をするウィスプだった。
(あ~~妹の設定気に入ってたのね)
アリーチェが、突然シドとウィナに挨拶した。
「じゃあまたね、シドさんとウィナさん!」
シドとウィナは直ぐに何かを察した。
「ではまたね、お元気でアリーチェちゃん」
シドとウィスプは歩いて去って行った。
さっそくアリーチェはピエロに相談した。
「ピエロ、さっきお祈りしに教会に入ろうとしたら、お金が必要だって追い出されちゃったの。お金が居るなんて知らなくて………後で返すから貸してもらってもいいですか?」
「そっかぁ、アリーチェちゃんは教会が初めてなんだね。貸すだなんてそんな、僕が教会を案内したいから一緒に来て欲しいなぁ、お願いするんだから献金は僕がだすからね、どうかな」
「ありがと~!」
受付の人はお金さえ払えば、アリーチェの顔を見る事も無く通してくれた。
無事にピエロと教会に入ったアリーチェ。
教会の中は天井も高く、豪華な大聖堂そのままのイメージだった。
正面に祭壇があり、神様の像が幾つか飾られてえた。
高い所にあるステンドグラスの窓から色とりどりの日が差している。
左右の壁沿いには幾つかの売店があった。
「じゃあ僕は買い物に行ってくるから、自由にお祈りしてていいよ」
「ありがとうねピエロ」
「どう致しまして」
ピエロは売店に買い物に行った。
アリーチェは祭壇から1番遠いエリアのイスに座った。
心を落ち着かせて、両手を前で組み祈りのポーズをして目を閉じてお祈りを始めた。
(お久しぶりですお爺ちゃん、前は4才の秋だったから、3年ぶりかな、アリーチェもエリスママもルカパパも元気です。いつも見守っていてくれてありがとう)
するとアリーチェの周りの音が静かになり、優しい空気に包まれると、懐かしい声が聞こえてきた。
『アリーチェや元気そうでなによりじゃ、話すのは久しぶりじゃな。わしはいつも見ておるから久しぶりな感じはしないんじゃがな、じゃから事情は分かってるつもりじゃ』
アリーチェは悲しそうに話した。
「ローラさんを………ローラさんを何とかしたくて………このままじゃアリーチェ頑張れないから」
『一晩中泣いてるアリーチェを見て、わしも一緒に泣いてのぅ。話しを出来て良かったと思っておる』
「お爺ちゃん、ローラさんを治してもらえないかな、そうしたらアリーチェはこれからも頑張れるから………だから。お爺ちゃんの名前ゼウスなんでしょ?これからはゼウス神様って呼ぶから、だからお願い………お願いしますゼウス神様」
『ふむふむ、アリーチェや、我々神は人間界に直接力を行使してはならんのじゃ。だからローラさんをわしが治す事は出来ないのじゃ』
「ダメなの?………ゼウス神様でもダメなの?ローラさん治らないの………」
アリーチェは俯いて目には涙がいっぱい溜まっていた。
『アリーチェや、そんなに悲しまないでおくれ』
「ううん、ゼウス神様にも事情があるんですよね、ローラさんはアリーチェの責任だから………ゼウス神様のせいじゃないから、わがままなお願いしてゴメンなさい………グズッ」
『アリーチェや泣かないでおくれ。ローラさんの事なんじゃがな、わしら神が直接力を行使してはいけないだけで、治せない訳じゃないんじゃぞ?』
アリーチェはゆっくりと顔を上げる。
「……………えっ?」
『ふむ、わしら神には出来ないが、アリーチェになら出来るぞ。この世界でただ1人、アリーチェなら魔法で治す事が出来るぞ!』
「えっ?………この私が?………私なら………治せる」
………嬉しくて
………嬉しくて
アリーチェはまた泣き出していた。
アリーチェが落ち着いた所で神様が説明をしてくれた。
大昔に死者蘇生が問題となり、その神の力を封印したが、封印したのは死者蘇生の魔法だけだそうだ。
何処かで誤解が生まれて、その属性は誰も使えないと思われ、忘れ去られていったらしい。
忘れ去られただけだから、その神も、その属性の他の魔法も存在する。
『その神の名は、アスクレーピオスじゃ、アリーチェにはその神の加護もあるからの。月属性の精霊ルナから話しを聞くと良い』
とても嬉しそうなアリーチェ。
「あっありがとうございます………ゼウス神様………ありがとうございます」
アリーチェが嬉しそうにしているのを見てゼウスも嬉しかったが、ゼウス神様と呼ばれている事を少し寂しく感じていた。
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