ローラさんに会いたくて!☆2
ボスコの街での朝。
目を覚ましたアリーチェは、鳥の囀りも木々の葉が風に揺れる音も聞こえない事への、寂しさを感じながらベッドから起きた。
まだルカは寝ているので、隣の部屋に行き、朝の日課の準備体操、ストレッチ、ダンス練習などを行った。
中庭の洗い場で、身体の汗を拭いて顔を洗ってから、朝食の準備を手伝った。
朝食の時ルカに今日の予定を話す。
「午前中にニッチェさんと商人ギルドに行って、ローラさんに会えるかどうかを聞いて、あとはそれ次第ね。街中ではシドに一緒に居てもらう予定よ」
「シドがいるなら大丈夫だね」
* * * * *
中央広場でニッチェさんと待ち合わせてから、商人ギルドに行った。
受付カウンターのダニエラさんに声をかけて、昨日のテーブルで話を聞く。
「結論から申しますと、ローラさんはお会いになりません。お渡ししたい物は、私の方でお届け致しますがいかがでしょうか?」
「えっ?どうして会えないの?」
「ん~、ローラさんが忙しいから………でしょうか」
「ええ~っそんな!」
「ゴメンねアリーチェちゃん、ローラは凄く忙しくてね」
後ろから聞いた事のある声がした。
アリーチェが振り向くと、そこにはピエロが居た。
「ピエロ!」
アリーチェは直ぐに抱きついていた。
「2年ぶりかな、身長も伸びて更に女の子らしくなったね」
「あっ、ありがとう」
少し照れながらも聞きたかった事を聞いてみる。
「ピエロとローラさんはもしかして結婚したの?」
「うん、1年前に結婚したんだよ」
「じゃあローラさんと二人で幸せなんだよね?」
「あぁ………知らせて無くてゴメンね。それと結婚を期に冒険者も辞めて、今は街の雑貨屋で働いてるんだ」
「そっか、ローラさんの為に危ない冒険者を辞めたのね、ルカパパと一緒だね。やっぱりローラさん幸せ者だ。でもローラさんってお店辞めちゃったの?ルカパパと見に行ったけど、服とか商品が何も無かったの」
「あぁそっか、店はあのままだったか………」
少し俯いて、直ぐに顔を上げたピエロは、商人ギルドのダニエラさんに言った。
「丁度いいや、あの店はもう再開しないから契約を終わりにします」
アリーチェは驚いた。
「えっどうして?ローラさん忙しいんでしょ?」
ピエロ少し暗い表情をした。
「ローラは結婚してから違う仕事を始めたから………あの店はもういいんだ」
ダニエラさんも俯いて暗い表情をしていた。
「じゃあそのお店の後を、私たちがお借りしてもいいかしら?」
村の特産品店の場所探しをしていたニッチェが聞いた。
ピエロはボーッとしてて、少し返事が遅れた。
「………えっ?お店の後?あぁもちろん大丈夫です。もう解約しますから」
「そうですか、凄く助かるわありがとう」
なんだかモヤモヤするアリーチェだったが、プレゼントをピエロに渡す事にした。
「じゃあローラさんとピエロへのプレゼントはこれよ!」
と言ってアリーチェは、男の子と女の子の人形をテーブルの上に出した。
男の子はピエロ似で黒のタキシードっぽい服、女の子は前にローラさんの髪型と色を聞いていたので、赤毛のセミロングで服はウェディングドレスのような白。
元の世界なら、結婚式の披露宴会場入口にありそうな人形だ。
ピエロはかなり驚きつつも困惑していた。
ダニエラは鋭い目つきで人形とアリーチェを睨んでいた。
「こっ……こんな立派な人形は貰えないよ」
「ローラさんの為にアリーチェが編んだから、貰って欲しいの、その為の人形だから」
悩みに悩んだピエロ。
「えっと、今日は持って帰れないから、ダニエラさん預かっててくれるかな?」
「えっ?ええ、畏まりました。ではギルドで預かって置きます」
「ありがとうね、アリーチェちゃん。ローラもすごく喜ぶと思うよ」
「うん、ローラさんが会えそうになったらいつでも言ってね!会いに行くから」
「ああ………伝えておくよ………」
暗い表情で歯切れの悪い返事をするピエロを、アリーチェはジッと見つめていた。
商人ギルドの前でみんな別れて、ニッチェさんはお店の場所を見に行き、ピエロは家に帰った。
アリーチェはシドと一緒にアパートに帰ったが、こっそりシルフにピエロを尾行して様子を見てきてもらっていた。
アリーチェがアパートで待っていると、尾行に行っていたシルフが戻ってきた。
シルフはとても言いにくそうに話し始めた。
「えっと………ローラさんは家に居て………ベッドで寝ていました。ただあまり元気が無いようで、食事からなにからピエロさんがお世話をしているようでした」
益々困惑するアリーチェ。
「どうゆう事?」
「言いにくいのですがその………ローラさんのですね………右手と左足がその……」
不安な顔になるアリーチェ。
「ローラさんの右手と左足がどうしたの?」
覚悟を決めたシルフ。
「ローラさんは右手と左足を…………失っているようでした………」
「っ!!!」
アリーチェの目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
近くのクッションに顔を埋めて泣いた。
(アリーチェのせいだ………アリーチェの人形のせいでローラさんは……)
アリーチェは悔しさややりきれなさ、シモーネに対する怒りが抑えられなかった。
(そっか………人形のせいだからピエロは持って帰れなかったんだ………)
アリーチェは自分に対しても怒っていた。
(どうして………どうして………)
アリーチェは一晩中泣き続けて夜を明かした。
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