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オーガとの戦闘!


 ヤコポ村からボスコへ向かう道中で咲良たち一行はオーガと遭遇した。


 オーガは街道をゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。

 ジョバンニたち護衛メンバーはオーガを迎え撃つ為に気合いを入れていた。


 オーガは少し離れた所で立ち止まって護衛メンバーをじっくりと観察していた。


 オーガの身長は2mを超え、筋肉質でがっしりした胸板、額にはオーガの印である黒い角が1本生えていた。


 オーガは戦闘狂だ、不意打ちなどせず堂々と戦うのを好む。

 オーガはジョバンニに視線を止めて、かかってこいとばかりに手招きをしてきた。


 ジョバンニはため息をつき剣と盾を構え直してから、気合いと共にオーガへ向かっていった。


「うおおおぉぉぉっ!!」


 オーガはジョバンニのシールドアタックにタックルをしてきた。


「オラアァァッ!」

 ドッガアアァァァッ!!

「ふんぐぅ!」


 ジョバンニがなんとか踏ん張り両者の力が拮抗する。


 いつの間にかオーガの右側に移動していたアントニオが大斧を振り下ろすところだった。

 しかしオーガが右腕でなぎ払うのが早かった。


 かわしきれずに吹っ飛んだアントニオが悪態をつく。


「くっ!このタイミングでだめなのかよっ!」


 アントニオの方を見ていたオーガの角を狙って、ジョバンニがすぐさま剣を振る。


 オーガは首を捻ってなんとかかわすが、その顔目掛けてリエトの矢が飛んで来る。

 オーガはなんとか左腕で矢を弾く。

 ジョバンニはよけられた剣を力づくで切り返すと、その剣先はオーガの胸を斬り裂いた。

 オーガはたまらず数歩下がった。

 そこに大人くらいの大きさの『ファイアーボール』が直撃し、オーガが燃え上がった。


 ジョバンニは炎に包まれているオーガから距離をとった。


「やった!全力の『ファイアーボール』が当たったわ!」

「ああ、みんないい動きだった………だが油断するなよ」


 炎が消えるとそこには、煤だらけだが腕を前でクロスさせたオーガが立っていた。



 アリーチェは驚いていた。


(炎に包まれても立ってるオーガも凄いけど、ジョバンニさんたちやる~!連携って大事なのね)


 オーガが腕を降ろして、不敵に笑った。

 相手として認めたようだ。


 ジョバンニたちは武器を構え直し、ニコルは慌てて魔力回復薬を飲み干した。



 その後も戦闘は続きオーガはかなり傷を負ってきたが、一向に動きは衰えなかった。

 それに比べジョバンニたちは、かなりの疲労とダメージにより動きが鈍っていた。

 ニコルは魔力回復薬も使い切り魔力も殆ど残っていない様で、疲れ切って座り込んでいる。


 状況は絶望的だった。


 ジョバンニたちは一度オーガを討伐した事があったが、その時は万全のオーガ対策をした。

 タフな相手なので多くのポーションの準備をし、攻撃役の魔法使いもベテランにお願いして、聖属性の回復役も加わってもらってやっと勝てたのだ、ジョバンニにとってオーガはそう言う手強い相手だ。


 昔この辺りにオーガが出現した事があるらしいが、ジョバンニが冒険者になってからはオーガが出現したとは聞いた事がない。

 なのでジョバンニはオーガはもうこの辺りには居ないのだと思い込んで準備を怠ってしまったのだ。

 現在ポーションは少ししかないし、魔法使いは若く、回復役もいない。

 冒険者は一つのミスで命を落とす職業であり、それが今は自分の命だけでは済まない状況だった。

 

 ジョバンニは自分の甘さを呪った。


(くそっ、俺が死ぬだけなら自業自得だが、このまま俺たちが負けたら村人たちがみんな殺られちまう……………何とかしてオーガの動きを止めれば、きっとアントニオが角をへし折ってくれる………そうすればまだ何とかなる)


 ジョバンニは命を賭す覚悟を決めアントニオと視線を交わした。

 アントニオはジョバンニの目を見て自分が犠牲になるつもりなのを理解した。

 アントニオは僅かに首を振るが、ジョバンニの覚悟は変わらなかった。

 アントニオとて全滅の可能性が見えてきていたので、歯を食いしばりながらも頷くしかなかった。


 ジョバンニとアントニオの緊張が高まる中、アリーチェはどう手助けしたらいいか悩んでいた。


(みんなの攻撃はずっとオーガの角を狙ってるし、オーガも角への攻撃は避けてるからそこが弱点ね。戦況としては僅かにオーガだけど、オーガも疲労してきている。みんなに回復と強化魔法をかけて、オーガに弱体魔法をかければ勝てそうね。でも………どう考えても回復と強化魔法をかけたら分かっちゃうわよね………ふむ)


 アリーチェはシドに耳打ちした。

 聞き終えたシドは、杖を持って一歩前に出てアリーチェにお願いされたように大げさに叫ぶ。


「皆さん後少しです!微力ながら私が魔法で回復しますので頑張って下さい!」


 今にもオーガに仕掛けようとしていたジョバンニたちは回復と聞いて一瞬止まった。


(回復?聖職者には見えないから水属性の回復魔法か…………だとしても助かる。俺の命と引き換えにオーガの角を折る可能性が増えるのだからな)


 オーガは自分から仕掛けるつもりは無く、ジョバンニたちが攻撃してくるのを待っていた。


 シドはブツブツと詠唱したふりをしてから、オーバーリアクションで杖を掲げて叫んだ。


「ヒィ~~~ル!!」


 それに合わせてアリーチェが無詠唱で護衛メンバーに『ヒール』をかけると、4人の身体が淡く白い光りに包まれる。


「おおっ!」

「なにっ!!」

「4人同時っ?!」

「えっこれって!」


 聖属性だった事と、4人同時に回復した事に、4人とも驚いていた。


 『ヒール』は一度に一人を回復する魔法の筈が4人同時だったのだ。

 護衛メンバーは、これは上級聖職者しか出来ない『エリアヒール』だと認識した。

 回復量も『ヒール』の比ではなく、殆ど全回復していた。

 護衛メンバーには、もはやシドが高位の聖職者である事は疑いようも無かった。


 ジョバンニたちは勝てると感じたのだろう、目や身体に力がよみがえってきた。


 そして、シドはオーガに『ポイズン』を掛け、咲良は『スロー』をかけた。


 オーガは相手がやる気になった事で口元がにやけ、自分に弱体魔法がかかった事が分かると嬉しいのか変な笑い顔になっていた。


 ジョバンニたちは、変な笑い顔のオーガに落ち着いて攻撃を再開した。

 『スロー』のかかったオーガはスピードが遅くなり今まで当たらなかった攻撃が当たり、『ポイズン』の影響でオーガの体力は徐々に減っていった。


 オーガは戦いが楽しいのか、苦戦しながらもジョバンニに突進して行った。


 ジョバンニがオーガの攻撃をがっちりと受け止め、横からアントニオが斬りかかる。


 避けようとするオーガに、ここだと思ったアリーチェは『パラライズ』をかけた。


 オーガの動きが麻痺で止まり、アントニオの大斧がオーガの角を斬り飛ばした!


「ゴルゥアアァァァ~~!」


 叫び声を上げながら頭を抱え膝をついたオーガの身体は、細く貧弱になり始め、身長も縮んでいった。


 最後にジョバンニは、弱くなったオーガの首を切り落とした。


(あっやばっ、レベルが上がっちゃった)


 アリーチェはLv17にっなった。



 オーガを倒した護衛たちはレベルが上がっていた。


(レベルが上がると体力も魔力も元に戻るみたいね)



 落ち着いたところでジョバンニは護衛を代表してお礼を言った。


「いや~シド殿、助かりました。有り難うございました」


「いえ、戦ったのはジョバンニさんたちです。私は大したことはしておりません」


 魔法使いのニコルがシドをウルウルした目で見つめていた。


「はぁ~、シド様は高位の聖職者様だったのですねぇ~、1度に4人も回復するなんて、素晴らしい回復魔法でしたねぇ~」


「いえ、ただの『ヒール』ですよ………ね」


 シドはアリーチェをチラ見した。


「ただの『ヒール』じゃなかったのは誰でも解りますぅ~!離れた4人に同時に『ヒール』なんて、間違いなく『エリアヒール』でしたよね!それもかなりの回復量でした。さすが高位の聖職者様ですねぇ~。訳ありの旅ですかぁ~?勿論私は秘密を守りますよぉ~シド様!!」


 シドも1度に複数人にかける『エリアヒール』は知っていたが、アリーチェは『ヒール』をかけるからとしか言わなかったのだ。

 シドは何故か誇らしげだった。


(流石は姫様!!)


 アリーチェはエリアヒールなんて知らなかった、普通のヒールを同時に4人にかけただけなのだ。

 只、無詠唱だから同時に4人にかけられたし、回復量が多いのはアリーチェなのだから仕方がない。


 この戦いは全滅しててもおかしくなかった。

 ジョバンニたちが犠牲も無くオーガに勝てたのは、シドのおかげであった。

 まだまだ修業が足らないと痛感して、気を引き締めるジョバンニだった。




  *  *  *  *  *



 少し休んでからボスコへの移動を再開した。


 その後は魔物と遭遇する事も無く、夕方には山を下りて森を抜けボスコの街が見えてきた。


 ボスコが初めてのアリーチェは、少し前からシドの背中から降りて嬉しそうに歩いていた。


「おお~~!街だ~!都会だ~!街が高い塀で囲まれてる~!凄い凄い!」


 高さが4メートルはありそうな石の塀が街全体を守っていた。

 街の周りに更地はあるが、その周りは全て森に囲まれていた。


 夕陽に照らされたボスコの街へ向かって歩くアリーチェは、この世界に来て初めての大きな街だからなのかとても楽しそうだった。



 読んで頂き有難う御座います。


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