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出発式の日

 赤ちゃん時代を乗り越えて、やっと4才になったアリーチェ。

 そう、この世界で咲良の名前はアリーチェなのだ。


 ある程度身体も動かせるし話しも出来るようになった。

 前の世界の時からダンスが好きだったので、部屋の隅でくねくねと身体を動かして、悪戦苦闘していた。


(やっぱり4才じゃあ、まだ思ったように手も足も動かなくてダンスにならないか、頭が重く手足が短いという身体全体のバランスの悪さも問題ね………あと数年は辛抱のしどころかな)


 台所で朝食を準備していたエリスは、アリーチェが身体をくねくねと動かしているのを見かけた。


「アリーチェどうしたの?何処かかゆいの?」


「これはね、ダンスの練習してるの。でも中々上手くいかなくて」


「ダンス?」


 アリーチェはだいぶ言葉が話せる様になったが、まだまだ知らない言葉もあるので、ダンスが通じてないと思い言いかえてみる。


「えっと………踊り?」


「ああ踊りね、儀式とかでするのよね」


 あれっと思ってアリーチェが聞く。


「歌いながらとか、音楽に合わせて踊る人っていないの?」


 すこし考えて答えるエリス。


「儀式だったら音楽がかかってたりするかな」


「みんなを楽しませる為に、歌いながら踊る人は?」


「聞いた事ないわね。歌だと吟遊詩人が楽器を奏でながら物語を歌うように語るわね」


「そうなんだ………」


(歌は心に残るし、踊りは素晴らしいエンターテインメントなのに。まだ発展途上なのかも………)


「エリスママ、やる人が居ないならアリーチェが歌や踊りでみんなを楽しませる人になるわ!」


「歌って踊る人?フフッ、アリーチェがやってみたいのなら何でも応援するわよ」


 エリスは素敵な笑顔でアリーチェを見つめていた。




  *  *  *  *  *




 朝日が窓から射し込むリビングで、家族3人で朝食を食べていた。

 エリスの輝く金色の髪と透きとおるようなブルーの瞳は、日の光を浴びていつもに増して輝いていた。


「アリーチェ、パパを見送る為に頑張って泉広場まで歩いて行きましょうね」


 黒髪のボサボサ頭でブラウンの瞳をしたルカパパ。


「おおっ、見送りに来てくれるのか!アリーチェは泉広場まで歩けるかな~?」


 肩まで伸びた黒髪に黒い瞳のアリーチェは、ムッとした表情をする。


「もう4才だし歩けるもん!」


(もともと16才でこっちに来て4年だから通算で20才。年齢だけなら余裕なんだけどな)



 朝食も終わって、3人で手を繋いで泉広場に向かった。

 アリーチェの住んでいる村は山の中腹にあり、家から山道を登った先に神の泉広場がある。


 アリーチェは、でこぼこの山道を頑張って登った。

 大人の足ならすぐ着く距離なのだが、4才のアリーチェにとっては大変だった。


(道が悪すぎ!大人でも少し苦労するかも。もっと整備すればいいのに)


 アリーチェは悪路の山道を泉広場まで頑張って登った。


 泉広場に着いたアリーチェは地面にへたり込もうとする。


「はぁ~やっと着いた~~!」


 すかさずエリスが抱っこした。


「よく頑張ったわねアリーチェ、偉かったわ」





  *  *  *  *  *





 アリーチェの生まれたラダック村は、高さ9.000㍍のニマ山の中腹、標高5,000㍍にあった。

 夏以外の季節は、雪に閉ざされてしまう為、その前に村の男達は街まで出稼ぎに出るのだ。

 夏の終わりの今日、その出発式が神の泉広場で行われる。


 泉広場にはまだ数人しか集まって居なかった。

 リュックを背負ったルカと、アリーチェを抱っこしたエリスが、先に来ていた村長一家の4人に歩み寄る。

 ゴチェン村長と、息子夫婦マチェンと妻のテパン、それとアリーチェの1つ年上の男の子カンツォだ。

 テパンはアリーチェが生まれた時に産婆さんをしてくれていたおばさんだ。

 カンツォはアリーチェの家に来て、よく遊んでくれている。

 お兄ちゃん風を吹かしてアリーチェの面倒を見ようと頑張るカンツォの姿は、中身が女子高生のアリーチェには微笑ましかった。

 将来格好よくて優しい男になるんだぞと願うアリーチェだった。


 ルカが村長に挨拶をする。


「おはようございますゴチェン村長」


「お~おはようルカ、エリスにアリーチェもおはよう」


「「おはようございます」」


「大きくなって、挨拶も上手になったのぅ」


「もう4才だもん」


 可愛いアリーチェに、ニコニコと嬉しそうなゴチェン村長


「うんうんそうかそうか」


「皆さんのお陰です、テパンさんは宿屋のお仕事もあるのに、いつも子育ての手伝いに来て頂きありがとうございます」


 村長の息子夫婦テパンとマチェンは村で唯一の宿屋と食堂をやっていて忙しい。

 それでもテパンはエリスの子育ての手伝いをいつもしてくれているのだ。

 村長一家は偉いのである。


 手をひらひらさせながらテパン。


「いいのよ、うちも息子のカンツォが遊んでもらって助かってるから」


 横でカンツォが不満げに呟いた。


「僕が遊んであげてるんだもん……」




 *  *  *  *  *




 いつの間にか広場にはかなりの村人が集まって来ていた。

 ゴチェン村長が、集まったみんなに大きな声で話し始める。


「そろそろ全員集まったかの、では護衛の方たちを紹介するぞ」


 村を少し離れると魔物がいるらしいので、街までの護衛を依頼しているのだ。

 護衛は30代の男性3人と、若い女性1人の計4人だ。


 アリーチェはこの世界に魔物が居ると初めて聞き困惑する。


(えっ?魔物?怖い生き物の事が居るの?動物って言葉がただ魔物なだけじゃないのか?魔物?)


 アリーチェは考えに夢中でみんなの名前が頭に入ってこなかったが、若い女の人が魔法使いと紹介されて衝撃を受けた。


 アリーチェはこの世界の事をよく知らずに育ち、今日初めて魔物や魔法使いのいる世界だと知ったのだ。


 少し前アリーチェは、魔法使いの人がしゃがんで泉に杖をつけながら身体がほんのり光るのを見ていた。


(魔法使い………目の錯覚じゃなかったのか)


 アリーチェは今までも抱っこで見送りに来た事があったが、魔法らしきものを見たのは初めてだった。

 言葉が分かるようになり、今日初めていろいろな事情が分かった。

 魔物に魔法使い、アリーチェはただただ呆然としていた。



 ゴチェン村長がみんなに声をかける。


「ではニマ山と泉の神様に、旅の無事と村の平和を祈ろう」


 みんなが祈り終わって顔をあげるとゴチェン村長が大きな声で言った。


「村に残る者の事は任せるがよい。皆が無事に帰って来るのを待っておるぞ」


 出稼ぎに行く村の男達の声が自然と揃った。


「「はい、行ってまいります!」」


 出稼ぎの村人たちは、護衛の冒険者たちに前後を守られる隊列で出発していった。




  *  *  *  *  *




 見送りも終わり家に帰ってきたアリーチェは、やっと落ち着いてきた。

 アリーチェは地球上の何処か違う場所くらいにしか思っていなかった、まさか魔法が存在する世界だとは夢にも思っていなかったのだ。


(外国なのかなと思っていたけどファンタジーな世界だったのか………。ダンスをするから関係ないけど、私は魔法を使えるのかしら……どうせなら使ってみたいわ)



 なかなか魔法も出てこなくてすいません。次こそは……。

 初めての投稿で試行錯誤中です。

見守ってやって下さい。


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