6才の夏と商人シモーネ!
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アリーチェ6才の夏が訪れる。
寒かった冬と春も終わり、出稼ぎの男達が帰ってくる1週間程前、アリーチェ家に双子が生まれた。
アリーチェは女の子なのか男の子なのかドキドキ待ってたので、双子で男の子と女の子だよと聞かされて喜びが倍になった。
先に生まれたのが男の子で、名前がノア。
二番目に生まれたのが女の子で、名前がノイ。
可愛い弟と妹だ。
帰ってきたルカパパが、直ぐに汚い手で抱っこしようとしたから、アリーチェが引き離した。
急いで身体を洗って、服を着替えに行った。
(アリーチェはもうお姉ちゃんだから、可愛い弟と妹を、ばい菌から守らないとね)
アリーチェは冬の間にエリスや精霊たちに色々と教わった。
お姉ちゃんを探すには冒険者になって世界を旅する必要があると考えていたアリーチェは、10才にならないと冒険者になれないと知り、それまで待たないといけないのがもどかしかった。
色々と悩んでいると、たった1人の姉を見つけるのが大変な事だと気づき始めた。
(世界を旅したとしても、お姉ちゃんを見つける方法はどうしよう………)
* * * * *
出稼ぎから帰ってきた人達の為の夜の宴会では、村の女性陣が中央のテーブルに集まり中心にはホクホク顔のニッチェがいた。
村の名産品としてみんなが渡した編み物の売り上げが、予定の倍だったそうだ。
ニッチェは身振り手振りを交えて興奮気味に話していた。
「最初は予定の価格で売り始めたの。そしたらお客さんが並ぶようになっちゃってね、そんなに在庫がある訳ではないからと、値段を上げていったわ。倍の値段でも売れるから、後半は1日の数を決めて、少しずつ値段を上げていったのよ。後半は3倍の値段よ。それでも普通に売れてたから驚いちゃったわっ!私たちの編み物凄いってね!」
女性陣はみんな楽しく盛り上がっていた。
宴会場の端の方には、いつもの護衛PTメンバーが居たが、魔法使いはピエロじゃなかった。
まあ魔法使いが同じ人の方が珍しいから、当然なのだろうと思っていたら、PTのリーダーがアリーチェの所に来た。
ピエロの彼女のローラさんからアリーチェにお人形さん有難うと伝言を頼まれたそうだ。
本当はピエロが来るはずだったが、彼女のローラさんが酷い怪我をして、来れなくなったのだそうだ。
彼女の名前がローラだと分かったが、酷い怪我と言うのが心配になるアリーチェ。
「次回はピエロが来れるだろうから心配するな、なんならローラさんも連れてくるから」
とPTのリーダーが慰めてくれた。
恐そうに見えて以外と優しかった。
* * * * *
次の日から、村の水路工事が始まった。
村の男たちの半分が水路工事をして半分が畑仕事をする、それを1日交代だ。
村にとってそれぞれの畑仕事も大切なのだ。
畑は村から少し下山した所にあり、斜面を段々畑にしてジャガイモの様な作物を作っていた。
女子高生の咲良だった頃は、じゃがバターが好きだったが、そういえばこっちでは食べた事がない。蒸した料理方法がないのかもしれない、バターも見た事が無かった。
(今度聞いてみよう)
ルカパパにはまだ精霊の事は言ってない、今後どうするかアリーチェはエリスと2人で悩んだ。
「ルカパパに精霊の事を伝えたいけどどうしたらいいんだろう」
「ずっと隠してる感じになってるものね、そろそろルカも落ちついて来ただろうし、言ってみましょうか」
夏も半ばを過ぎ、
水路も完成して全ての家の
前に水場が出来た。
もう誰も泉まで水汲みに行かなくて良くなった。
村に来た旅人たちは、綺麗な道と水路に驚いていた。
* * * * *
ある日、ゴチェン村長の家で、いつもの編み物教室をやっていると、神の泉広場が騒がしかったので行ってみた。
4人の護衛を連れた、高価な服を着た男の人が、ニッチェと揉めていた。
「いいから出来た編み物を全て出しなさい」
「何を言ってるんです、村の名産品で売り物ですから買って行ったらいいでしょう!」
「私は街1番のシモーネ商会の当主シモーネですよ?今は領主様の代理でここんなど田舎に来ているが、私に逆らえば領主様に逆らったも同然。不敬罪でこの場で斬り捨ててもいいんですよ。死にたくなければ村にある編み物を全て出しなさい。シモーネ商会が商人ギルドにも商品を登録して、売り捌いてあげますよ。手数料を引いた金額を後で届けさせますから、まずは商品を出せと言っているんです」
「商人ギルドにはもう私が村の特産品として、登録してあるから結構です!あなたには何も売りませんからお引き取り下さい!」
「商人ギルドに登録だと?!また面倒な事をまったく…………そうか、お前が登録したのなら、お前が死ねば登録し直しだな…………不敬罪決定だな。お前たち!この者を領主様代理への不敬罪で斬り捨てなさい!」
4人の護衛が無表情で一歩前に出て剣を抜き。一人は魔法使いの杖を構えた。
周りの村人たちには、領主代理と言うシモーネに逆らえる者などいなかった。
「待ってくださ~い!」
咄嗟にアリーチェが走りながら叫んでいた。
シモーネと護衛が疑問に思っている内に、アリーチェはニッチェさんの元にたどり着き、守るように前に立っていた。
「アリーチェちゃん危ないわ」
自分の後ろに庇おうとするニッチェ。
さすがにいきなり子供を斬る命令は出せないシモーネ。
「おい!なんだ子供!じゃまだ、どけ!」
何とかしなければと、話しをしてみるアリーチェ。
「どうしておじちゃんは、村の名産品の編み物が欲しいの?」
「ん?私は商人だからもちろん商売の為だ!何を当たり前の事を………まったく」
アリーチェは相手が話しに乗ってきてくれて良かったと思ったアリーチェ。
「商人なのに、どうして領主様の代理なの?」
「ぁあ?そうだな………領主様の依頼で私が来たからだ。私が差し上げた編み物の人形を、もう1つ欲しいと領主様が仰ってな。どうもこの村で作ったらしいから、私が直々に取りに来たのだ。領主様が護衛もつけてくれたしな。ついでに街で噂になってた編み物を全て売り捌いてやろうと思ってな。金は売れてから払うから先ずは商品を寄こせと言ったところだ」
(ペラペラとよくしゃべるわわね。でも編み物の人形って………この村で作られた人形なら、ローラさんにプレゼントした1つしか無いわよね)
「その人形って、赤い服を着た、栗毛色の髪の女の子?」
「なんだよく知ってるじゃないか、やっぱここにあるんだな。人形と編み物を全て出せば、おばさんの不敬罪をどうするか考えてやってもいいぞ?出さないとそこのおばさんは、罪を犯したから命で払う事になるけどいいかな?」
ニヤけた変な笑い方のシモーネ。
気持ちわるっと身震いするアリーチェ。
「そのお人形さんは、売り物では無かったと思うけど?」
「売り物じゃない?街の裁縫屋の女に頼んでも絶対売らないって言っていたか…………まぁ結局奪った………くれたよ。確かにくれたんだから売ってもらった訳じゃないな」
(間違いなくローラさんだ………渡さなかったから………大怪我をさせられて奪われたんだ!許さない!!)
アリーチェは怒りに震えていた。
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