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レベルアップって凄いのね!☆2


 夜の寝室で、アリーチェがまだ発見されてない魔法を使える事が分かって、心配事が増えるエリス。


「アリーチェ、最近ママが体調悪そうにしてたのはね……お腹に赤ちゃんがいるからの」


「赤ちゃん!じゃあアリーチェに妹か弟が出来るのね!ありがとうエリスママ、家のお仕事は何でも手伝うから言ってね」


「ありがとうアリーチェ、テパンさんにたまに家の手伝いに来てもらうから………その………その時は精霊たちをお願いね」


「そっか、そうよね、分かったわ、みんなずっと居るからあたりまえになってたわ、気を付けるわね」


 アリーチェはエリスのお腹にそっと抱きついく。


「会えるのが楽しみね」


 エリスもアリーチェを抱きしめた。




  *  *  *  *  *




 今年の冬は、平年通りの積雪量だ。

 村の家々はみんなログハウスのような平屋建てだ。

 どの家も屋根の上には煙突と、煙突のように飛び出た出入り口がある。

 例年は雪が積もっても屋根の少し下くらいなので、どの家も屋根の上にある出入口から出入り出来るのだ。


 エリスの悪阻つわりが落ち着くまでは、たまにテパンさんが、家の手伝いに来てくれている。

 その時に、新鮮なウッピーのお肉が見つかってしまった。

 家の近くで倒れていた事にした。

 テパンさんは半信半疑だったが、ウッピーのお肉を半分お裾分けして、何とか誤魔化した。




 青空の広がる気持ちのいい朝。


 エリスの悪阻も落ち着いているので、咲良はウッピーのお肉目当てで魔物の森に狩りに行ってみた。


 雪の積もる魔物の森は初めてだ。

 標高4,000メートルくらいにある魔物の森に10メートルを超えるような高い木は無く、数メートル積もった雪により全ての木が低く見えた。

 アリーチェの手が木の先端に触れる木もあった。

 アリーチェが魔物の魔力を探してみると雪の下の方だったので、冬眠してるのだろう。

 強い魔力はあまり無いから雪を避けて違う所に行ってるのかもしれなかった。


「どうしよう、せっかく来たのに何もいないわ」


 4人の精霊達は、雪の上にふわふわと浮いていた。

 そしてアリーチェもフライの魔法で浮いている。



 魔物の森へテレポートして、洞窟の入り口の岩をどけたら、入口の3分の2くらい雪が積もっていて真っ白だった。

 アリーチェは、雪の移動手段を考えていなかった。

 5才の足で新雪を歩ける訳もなく、洞窟の入り口で立ち往生しているアリーチェの横を、精霊達がふわふわと雪の上を浮いて進んで行くのを見て、納得した。



 フラウ・シェイド・シルフ・ウィスプの精霊達と、ふわふわと進んでいくアリーチェ。

 やっと見つけたコンベアーくらいの大きさの魔力と、幾つかの小さな魔力がある所に向かっていた。



 目的地に着くと、そこは平らな雪の広場だった。

 見た感じでは、なにも見つからなかったが、小さな魔力を感じる辺りをよ~く見ると、


「いた、ウッピーだ!今までの毛の色はグレーだったけど白いウッピーだ!雪と同じ白さだ………可愛い」


 ウィスプが解説し始めた。


「あれは雪ウッピーです。豪雪地帯に現れる、稀少種です。強さはウッピーと変わりませんが、その可愛いさが人気でペット目的で捕獲されまくってます。傷をつけずに捕獲するのは難しく、高値で取り引きされるようです」


「ペットかぁ、わかるわ…………そっとしておこう。あとここらへんに大きめの魔力があるはずなんだけど………雪ウッピーの近くかな、雪の下の方………冬眠してる?」


 雪ウッピーが移動の為に前に一回ちょこんと跳ねると、突然、雪ウッピーの横の雪が盛り上がったかと思うと、雪が両手を広げて雪ウッピーに襲いかかろうとしているように見えた。



「!!『ファイアーウォール』」


 アリーチェは咄嗟に『ファイアーウォール』で、襲ってくる雪から雪ウッピーを守ろうとした。



 雪ウッピーは始め、突然襲ってきた雪にクリクリっとした目を開いて驚いたが、更に目の前に火の壁が現れたからさあ大変!

 驚き過ぎて固まって動けず涙目だった。



 雪の壁が襲ってきたかと思ったら、目の前に大きな火の壁が現れた。

 涙目だった視界から真っ赤な壁が消えると、その向こうには雪の大男がいた。

 視界の横からふわふわと女の子が飛んできて、両手を広げて大男の前に立ちはだかった。


 女の子が守ってくれてるのが分かった。


 その女の子には精霊が4人付いていて、雪の大男をあっという間にやっつけていた。


 精霊たちは女の子を守ってるみたいだった。

 その中には唯一知っている精霊、氷属性のフラウ様がいた。


 フラウ様が守る女の子はきっと神様なんだ………。


 神様は近づいてきて、しゃがんで撫でくれた…

優しかった…

 神様が手を振ったので、名残惜しかったが森の中に帰っていった。




 ウィスプが少し焦った表情で言う。


「アリーチェ様、いきなり魔物の前に出られるのは危険過ぎます」


「ゴメンね、雪ウッピーがやられちゃうと思って………これからは気を付けます」


「ん~お気持ちは分かります、指示を頂ければ我々が致します。アリーチェ様は、安全第一でお願いします」


「分かったわ。今の雪の大男はなんなの?レベルが上がったみたいだわ」


「あれはイエティです。雪の大男の魔物で、おもにウッピーを狙う魔物です」


「そんなっ!全滅させましょう!」


「お言葉ですが無理です。全て倒しても、その環境にある魔素から生まれます」


「そうなんだ………無理なのね、環境が関係あるのか、見かけたら必ず倒していきましょう!」


 雪ウッピー愛に目覚めたアリーチェであった。


 いつの間にかシェイドがイエティの魔石を持って来てくれた。

倒すと身体は雪に変わるので、

魔石を拾うだけで簡単なのだそうだ。



  *  *  *  *  *



 晴れ渡った青空のラダック村に戻ったアリーチェは、エリスと一緒にウッピーのお肉をお土産に持って、雪上歩行具のスノーシューを履いて、ゴチェン村長宅に向かった。


 夏の水路工事の話しをする為だ。


 ゴチェン村長は、かなり好意的に話しを聞いてくれた。

 道路整備事業が思いのほか好評だったようだ。


 久しぶりに会ったカンッオ兄は、少しモジモジしてたので、可愛いやつと思って頭をナデナデしたら、赤くなって部屋にこもってしまった。


(……まだまだ子供ね)


 微笑ましくカンッオの部屋のドアを見つめるアリーチェの方が見た目は子供なのだ。


(あれっ?16才でこっち来て、5才って事は……21才か?女子大生の年だ。いやいや、大学行ってないし、心はこれからもずっと16の女子高生だもん!)


 訳の分からない決意をするアリーチェだった。




  *  *  *  *  *




 エリスもアリーチェも、この冬の間に村の名産品となる編み物をいろいろと編む事が出来た。


 ローラさんに贈った女の子の人形も、もう一つ白い色の服に替えて編んでおいた。


 村の名産品をと村の女性陣も頑張って編んでいた。



 こうしてラダック村の冬は静かに過ぎ、また夏を迎える。



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