いざ!魔物の森へ!☆1
ラダック村の空は晴れ渡り、
絶好のピクニック日和!
いや、魔物討伐日和!
天気が良くても外は寒いので、防寒着を着たアリーチェと、エリスがみんなのお弁当を持って、小屋の中の魔法陣の上に居た。
魔法陣の上には9人の精霊達がいた……
そう、何故か全員いたのだ。
出発前の朝食の時に、メンバーに入れなかった精霊達が、ウィスプに抗議したのである。
みんなピクニックに行ってお弁当を食べたかったのだ。
特に普段は口数の少ないノームが抗議した。
毎日一緒に食べるようになったエリスの料理はとても美味しく、食材の農作物が活かされているらしい。
土属性の精霊ノームとしても農業に従事する者としても感激していたようなのだ。
もちろんノームがそう言った訳ではなく、みんながそう感じて想像したのだ………。
ノームが言ったセリフは
「お弁当を食べるために行く」
だけである。
ウィスプの目の前に立って
「お弁当を食べるために行く」
「お弁当を食べるために行く」
「お弁当を食べるために行く」
ウィスプは全員で行く事を
了承した。
ノームはウィスプよりも強かった。
そして転移魔法陣のある小屋の中。
精霊は魔物の森に着いてから呼んでもいいと思うのだが、出発から一緒に行きたいのだろう、全員魔法陣に乗っていた。
細かい事は気にしないアリーチェ。
「じゃあみんな行くよ~!」
目を閉じて、両腕を広げて集中する。
仄かに魔法陣が輝きだし、アリーチェは目を開け、魔法名だけを叫ぶ。
「『テレポート』!」
すると全員が魔法陣の光りにつつまれていった。
* * * * *
場所は変わって洞窟内の暗闇の中。
魔法陣が仄かに光り出したかと思うと、一気に真っ白に光り輝き、徐々に弱くなる光りの中にアリーチェ達がいた。
暗い洞窟の中、魔法陣だけがわずかに光っている。
ウィスプが光りの魔法『ライト』で周りを照らしてくれた。
アリーチェは出入口の大岩に歩み寄る。
他のみんなもアリーチの近くに行く。
アリーチェが大岩に手を触れる。
「じゃあ、開けるわね、『収納』!」
出入口の大岩が一瞬で消えて、眩しい外の世界が広がっていた。
みんなで外に出てから、大岩で洞窟を閉じるアリーチェ。
「この辺りかな………『アウト』!」
大きな岩が再び現れて、ドドォーン!と洞窟の出入口を塞いだ。
今日のこれまでの様子を見ていたエリスの表情は硬かった。
テレポート魔法は詠唱してないし、大きな岩を収納するとか………まだまだ多くの事に慣れなければいけないと痛感するエリスだった。
木漏れ日の降り注ぐ大岩の前で、ウィスプが仕切り始める。
「それではアリーチェ様、まずPTを組みましょう。みんなで集まって、まん中でみんなの手を合わせます。かけ声は何でもいいので、リーダーが声を挙げて、みんなが答えればPT成立です」
精霊達もエリスも手を合わせて、最期にアリーチェが手を乗せて叫んだ!
「魔物をやっつけるぞ~!」
「「「オ~~!」」」
みんなの声が揃った。
楽しそうだったようで、エリスの声も一緒に揃っていた。
(これ気持ちいいわね)
「通常は冒険者カードにメンバーの名前が出るので、PTが組めたかは確認できます。御自分のレベルやステータスは、冒険者ギルドなどの水晶での確認となります。レベルが上がると、身体能力が上がり、身体が少し軽くなるので感覚で解ると思います」
「いろいろと知っといた方がいいことが、いっぱいね」
「はい、まだあります。PTにはいろいろなスタイルがあるのですが、簡単に言いますと、前衛と後衛です。身体が丈夫で接近戦がメインの前衛。遠距離攻撃や回復などの得意な後衛です。説明よりも、後は身体で………実戦で覚えていきましょう」
(今、身体でって言ったわ…………)
「はい……お手柔らかにお願いします」
「では、シェイドとヴォルトとノームが前衛、次にシルフとランパス。私はアリーチェ様のお側に居るから、フラウはエリス様のお側に。最後尾にウィンディーネとイフリートの配置でいきます。森の中だからイフリートは戦わないように、相手の攻撃の盾になるだけならいいわ。居なくていいのに居させてあげるんだから言う事聞きなさいよね。従わない時は半殺しにします」
「ええっ?魔法使わなきゃ、戦ってもいいだろ?」
「魔法を使うに決まってるから、ダメよ」
「うぉ~まじかぁ~!ダメなのかぁ~!」
苦悩するイフリートだが、一応従うようだ。
全員がそれぞれ配置に着く。
「森もそうですが、あらゆる状況で重要なのが索敵・感知能力です。先に気が付いていれば、奇襲も受けませんし、戦闘を回避する事も出来ます。今回はアリーチェ様の感知能力の訓練も致します」
「感知?魔物を見つけるの?」
「はいそうです。魔物は魔力を持ってますので、魔力を感知すれば位置が、魔力の大きさで強さが解ります」
「ふ~んなるほどね、わかったやってみるわ」
立った状態ではあるが、座禅の要領で目を閉じて心を静める。そして周囲に深く静かに思いをめぐらすアリーチェ。
風に吹かれる木々や木の葉の音。
まわりから聞こえる鳥のさえずり。
精霊達はみんな静かにしていた。
(側にいる精霊達が感じられるわね………11人?精霊達9人と………私と………エリスママ?エリスママは白色って感じよね。魔力は紫色の感じだから、魔力が無くても白色で感じるのか。私達の周りは………小さな白色はきっと小鳥や、小さな生き物ね。紫色は………小さいのが2つあるわ、近いのは右前方45度。距離は………基準が解らないから、歩いてはかってみるかな)
目を開けるアリーチェ。
「この周りには、魔力の無い生き物が幾つかいたけど、小さめの魔力が右45度前方にいるわ、距離はそんなに遠くないと思うから、歩いて直ぐだと思うわ」
少し戸惑う表情のウィスプ。
「魔力の無い生き物がわかるのですか?………右45度前方とは何でしょう?」
「えっ?ええ、何となく分かるわ。それと右45度よ?あっそっかぁ…えっと、あっちよ」
と魔物の居る方向を指し示すアリーチェ。
(角度の事は、後で説明しよう、今は魔力までの距離よ……そっかぁ、距離の基準も後で説明が必要か)
みんなで魔力の位置まで歩きながらいろいろ考えるアリーチェだった。
次回こそ!次回こそは魔物と戦うと思います………
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