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再会!


 ジュニアを見送った咲良はゴチェン村長たちの元へ向かった。魔族軍が居ないのは確認済みなのでヴォルト爺もイフリートも帰し、人付き合いの上手なシェイドだけを残した。


「姫様お疲れではありませんか、私がお姫様抱っこを致しましょうか?」


 これでもジェイドは本気で心配してくれているのだ。


「ああ大丈夫よ。レベルも上がったしね。それよりもジャックたちの側に気になる魔力を感じるのよね」


 咲良が広範囲サーチをした結果避難する村人たちや家族が無事なのは分かったのだが、エリスの側に魔族の魔力を感じたのだ。援軍も居るしジャックも居るから大丈夫だと思うのだが、咲良は気になっていた。


(この感じは間違いなく魔族なんだけど、どうして一緒なんだろう)



 暫くして、咲良がみんなに追いつくと、最後尾を歩くゴチェン村長が手を振って迎えてくれた。

 咲良が少し離れたのを気にかけてくれていたようだ。


「アリーチェちゃ~ん」


 色々と黙って見守ってくれているゴチェン村長を有り難く思う咲良。


「ゴチェン村長ありがとう」


「なんじゃ?お礼を言うのはこちらなんじゃがな。それにしても可愛らしくなったの」


「褒めてもなにも出ませんよ」


 並んで歩いていたオリンド騎士団長が咲良に話しかける。


「こんな少女がまだ後ろに居たのか。おや?ボスコで神楽を披露していた小花咲良さんじゃないか?後ろは危ないぞ、さあ前へ」


 オリンド騎士団は咲良を憶えてくれていたようだ。ボスコの時より少し大人になったけど、巫女装束も着てるし分かったようだ。


「ありがとうございます」


 咲良はペコリと頭を下げながらゴチェン村長とオリンド騎士団長の間を抜けて前へ行った。

 その先にはジャックやエリスが居たが、エリスは少女と手を繋いで歩いていた。


(魔族がエリスママと一緒に?)


「さくらが無事で良かった」


 ゴチェン村長たちが無事だったのに咲良が見当たらなくて心配だったジャックはホッとしていた。


「心配かけてごめんね」


「あらアリーチェ、その服だとさくらって呼んだ方がいいのかしらね」


 振り向いたエリスは元気そうだった。


「どっちでもいいよ。エリスママ元気そうで良かった」


「村のみんなも無事よ」


 エリスと手を繋ぎながらもどうやって逃げるかを考えていたユズカは、聞こえてきていた神楽やさくらと言う言葉にやっと反応した。


(神楽に咲良?懐かしいわね。言葉の響きが似てるだけなんだろうけど……)


 ユズカが振り向く。


「ええっ?!なんで巫女装束があるの!」


「!!」


 魔族の少女の言葉に咲良は目を見開いて驚いた。


 呼び方は巫女装束で合っているのだが神楽の服とか呼ばれてた筈で、この世界で巫女装束と呼ぶのは咲良以外には居ない筈だ。

 姉である可能性にユズカをがん見する咲良。


(もしかしてジャンが魔族と戦った話しに出てきた魔族の子供?使ったのは多分爆弾だと思うんだけど)


 ユズカも咲良をがん見する。


(巫女装束を着て咲良を名乗るって、有り得るのか?いや、私がここに居るんだから有り得るのか)


 二人が黙ったまま睨み合っているように見えたエリスは、和やかな雰囲気にする為に話し出す。


「さあさあこっち来て、紹介するわね。娘のアリーチェよ、踊りをやってて芸名がこのはなさくらだったかしら。でこちらがユズカちゃん。みんなを助けてくれる為に魔族と戦っててくれたの」


「小花咲良……」

「柚香……」


 口をあんぐり開けて驚いているユズカと、驚きながらも目に涙が溢れてくる咲良。


「ぞんなわがりやずいなまえでぅぇぇ~~おでぇちゃ~ん」


 咲良はユズカに抱きついた。


 周りのみんなは何が何だか分からなかったが、柚香には分かった。


「事情は分からないけど、泣くほど頑張ったんだね、偉かったぞさっちゃん」


 ユズカは咲良の頭をポンポンと撫でてあげた。


「うわああぁぁぁん!」


 咲良は落ち着いたところでみんなが立ち止まっているのに気づき、すぐ謝ってボスコへ向かって歩き出した。


 仲良さそうに手を繋いで歩く咲良とユズカに、誰も事情を聞いたりせず優しく見守ってくれていた。

 

 途中、他の村人たちとも合流し、全員無事ボスコにたどり着いた。




  *  *  *  *  *




 ボスコ


 領主が急遽広場に用意してくれた避難所に村人たちは入った。


 ゴチェン村長とソムサック村長は、事情説明とお礼の為にリベラート・ベリザリオ領主様への面会に行った。


 咲良の家族と柚香は、咲良の所持する家で休む事にした。4家族が住める平屋のアパートタイプで、部屋数はいっぱいある。


 夕食の時咲良が「事情を話すのは明日の朝でもいい?」とみんなに聞くと、快く待ってくれた。 


 数ある部屋の一つの寝室に咲良と柚香の二人が居た。全てを話し合う為だ。


 咲良は隠す事無く、神様にお願いされ転生するところから今に至るまでを話した。

 魔法がいっぱい使える事も。


「咲良がお姉ちゃんと一緒になんて言っちゃったもんだから、ごめんなさい」


「さっちゃんが謝る必要なんてないわ。私だって現実だとは思わないもの。その神様って奴の性でしょ?」


「でもお姉ちゃんもこっちに来ちゃった訳だし」


「気にしない気にしない。こっちの生活も結構面楽しいわよ。ファンタジーな種族も興味が湧くし、元の世界に似てる部分も結構あって面白いのよ。調べる事がいっぱいありすぎて時間が足りないわ。どうしましよ!」


「ふぐっ、おでえぢゃんやざじい~~!」


 咲良に一切責任を問わない優しさに咲良は泣き出してしまった。

 柚香はそんな咲良の頭をポンポンと撫でた。


「よしよし、私を見つける為に神楽をねぇ。確かに舞いを見たらさっちゃんだって一発で分かったかもね」


「いいアイディアだったでしょ!でもまさか魔族に転生してたなんて、お爺ちゃん酷いわ!」


「お爺ちゃん?あぁ神様の事だったわね。意外と身近な存在なのね」


「咲良も初めは疑ってたけど、こっちだと魔法とかあって精霊も居て神の加護を授かる人も居て、神様からの恩恵が目に見えていいるからかしらね」


「う~む、理系の私としては魔法とかは中々受け入れ難いけど、目に見える現象を頑なに拒むのもの不本意なのよねぇ」


「魔法って結構便利なのよ。空も飛べるし遠い所へぱぱっと移動出来ちゃうの。前準備が必要だけどね」


「話しを聞く限り便利そうね。この世界に存在する訳だし再現性も有るみたいだから研究する価値は有りそうね」


「お姉ちゃんも魔法が使えるんでしょ?」


「いいえ、使った事無いしたぶん使えないんじゃないかしら。魔族の身体は魔法と相性が悪いみたいだしね。私としては魔法は身近じゃなかったし科学的じゃないから興味が湧かなかったのよ」


「お姉ちゃんを魔族に転生させたうえに魔法も使わせないとかあり得ないわ!爺ちゃんに文句言ってやる!」


「相手は神様なんでしよ?さっちゃんが魔法を使えるだけで私は満足だから大丈夫よ」


「お爺ちゃんにお願いされて来てるのよ?酷いじゃない!」


「はいはい怒らない怒らない。私はこの世界を見られて嬉しいから気にしないで。ありがとねさっちゃん」


 柚香は咲良が落ち着くまで頭をポンポンと撫でてあげていた。


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