突然の首脳会談?☆2
応接室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
それぞれの立場や考え方があり、みんな自分にとってどうするのが1番良いのか悩んでいた。
みんなの悩んでいる姿を見たカルロス国王は、自分の思いを告げる。
「私が見る限り、彼女は自分の力が公になった時の危険性を分かっているようだった。だから女神様なんだろう。そしてバレるかもしれないのに彼女は私と部下を助けてくれた。何のメリットも無いのにだ!意味が分からない…………だが」
そこでクロエ教皇がカルロス国王を手で制する。
「カルロス国王の話しは分かりました。私も少しだけ話しをしようと思います」
クロエ教皇は、先ず教会であった事を話し始めた。
山脈を越えて攻めてきた魔族軍の強さは圧倒的であり、応戦するもどんどん押されて行った事。
指揮官が自分の命を狙っていて、レオナルドと2人で戦っても刃が立たず死を覚悟した事。
「自分が生きている事がまだ信じられないわ」
聞いている限り、魔族を撃退した今の状況に繋がる話しはどこにも無く、みんなクロエ教皇の次の言葉を待った。
応接室を静寂が包む中、クロエ教皇が深く一呼吸する。
「ふぅ~、指揮官の攻撃が目の前に迫ってね、死を覚悟した時にね………」
俯いていたクロエ教皇の口元が少しほころぶ。
「彼女が、さくらさんが助けてくれたのよ……………神級魔法で」
「おおっ!やはり駆けつけてくれて居たのかって、神級魔法??」
カルロス国王は嬉しそうに叫びながらも戸惑っていた。
ジャンは無表情だ。
「ええ神級魔法だったわ。私も使える魔法だから間違いないわ。それとね、後で教会のみんなから聞いて分かったんだけど、10体近くの女神様が現れて魔族軍と戦ってくれたみたいなの」
カルロス国王が質問する。
「女神様ですか?」
「ええ、『妾は女神じゃ』て自分で言ってたみたいよ。ご存知でしょ?」
「ふむ。しかし10体は流石に理解出来ませんな」
「でもカルロス国王は3体見たんでしょ?その時点ですでに理解の範疇を超えているんじゃなくて?」
「まぁ、確かにそうですが…………仮に10体だったとして、精霊の強さはCランク程ですから、それが10体現れたからといって魔族軍に勝てるとは思えませんが」
「確かに普通の精霊ならそうね。私を守る為に現れた精霊は、私とレオナルドの二人がかりでも勝てなかった魔族と互角以上の戦いをしていたわ」
「そんなSランクに匹敵する強さの精霊が存在するんですか?」
「ふふっ、目の前で見たから分かるけど、かなり強化されてる感じがしたわ。きっと他の精霊たちもそうだったんじゃないかしら。だとしたらSランク10人ですもの、魔族軍を押し返したのも納得出来るんじゃないかしら」
みんなが唖然としている中、ジャンだけは冷や汗をかいていた。
「あっそうそう、さくらさんは不思議な魔力を持つ大きな鳥に乗って現れたわ。グレーの服を着ていて分かりずらかったけどね」
「鳥に乗って?そうか!1人なら早く駆けつけられるから王都に残ったのか!」
少しの沈黙の後、クロエ教皇は言う。
「私の方でも彼女が危険を冒すメリットが無いわね。それでも駆けつけて助けてくれたわ」
みんなが考え込んでいる中、カルロス国王とクロエ教皇はジャンを見つめていた。
「ジャン、何か話す事は無いのか?」
「そうよね、私たちが知る限り、ジャンは最初から彼女と一緒だったものね。もっと色々と知ってるんじゃなくて?」
ジャンは冷や汗を掻いていた。
「あっ、いやっ、どうだったかな~…………」
ジャンは全員の顔を見るが、隠し通せる感じでは無かった。
観念したジャンは、みんなから悪意の様なものは感じなかったので、一縷の望みをかけて話してみる事にした。
(お嬢ちゃんと離れてしまってるのが心配だが、少しでも味方を増やさねえとヤバいな)
ジャンはみんなの顔色を覗いながらバレている事を考慮しながら話しをした。
数年前の出会いで命を救われた事。
あの歳で精霊を召喚していたので、命の恩人を守る為に息子のジャックと3人で行動を共にしてきた事などを話した。
ジャン自身全てを知っている訳では無いので、精霊の属性がなんなのかは伏せたし、咲良が与えられている神の加護については知らないと答えた。
そしてふわちゃんがフェニックスだと咲良から聞いていたがそれも伏せたし、咲良のレベルがも伏せた。
ここに居る全員と戦わなければならなくなった時の為に全てを明かす訳にはいかないのだ。
「とまあ、こんな感じ………だな」
咲良の秘密を知ったみんなの思いは複雑で、応接室の沈黙がそれを物語っていた。
誰も話さない中、自分の意思がはっきりしているジャンがみんなに言う。
「俺は妻の仇を討つのが人生の目的だったが、今はそれが2番目だ。1番はお嬢ちゃんを守る事、その為なら誰とでも戦う」
ジャンが応接室に居る全員を見据えると、全員に緊張が走る。
そんな空気の中、カルロス国王の笑い声が響く。
「ふははははっ!ジャン殿と戦ってはみたいが、さくらと言う少女を守る為ならば、私はジャン殿の横に並び立とう」
みんな同じ思いだったのか、カルロス国王の言葉で応接室の緊張が和らいだ。
シーナ女王も立場を明確にする。
「さくらさんには共和国で神楽をいっぱい公演してもらって仲良しになってますから」
みんなの意見を聞くうちにクロエ教皇がどんどん不機嫌になっていった。
「もうっ!みなさんは知らないようだから言っておくわ」
突然の教皇の言葉に緊張が走る。
ゆっくりとみんなを睨むクロエ教皇。
「いい?みなさん。さくらさんは私の孫なのよ」
「「「「はあっ???」」」」
みんながキョトンとする中、クロエ教皇は得意気に続ける。
「ふふっ、だからほら、みなさんが私の孫を大切に思ってくれてる事は感謝するわ。これからも私の孫をよろしくね、私の孫をね」
クロエ教皇の「私の孫」発言で応接室は一気に賑やかになる。
「お嬢ちゃんが孫?」
「教皇様、それで親しくなったお積もりですか?共和国で神楽をやっているさくらさんはとっても楽しそうでしたから、きっと私が1番の仲良しですわ!」
「神楽だったらクリストフィオーレでもやってるぞ。あっ!王都にはさくらちゃんの店があった筈だ!私はそこのチーズを食べた事があるぞ!」
「有名だもの、みんな食べた事あるわよ」
「俺は共に戦った仲だぞ!」
「少女を戦わせちゃダメでしょ!」
「俺はお嬢ちゃんとずっと一緒に居るぞ!」
「一緒に居たからって関係ないわ。おっさんだもの嫌われてるかもしれないじゃない」
「「………」」
その後も、咲良との仲良し自慢が続くのだった。
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