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魔物討伐の準備!☆3


 物置小屋に転移魔法陣を設置した次の日。


 アリーチェとエリスは、村から見えない場所まで歩いて来ていた。

 森へ転移魔法陣を設置しにフライの魔法で飛んで行くのを、見られない為だ。


 小屋掃除で出て来た短剣を装備して、服はグレーのつなぎのフード付き、フードを被れば遠目には鳥に見えなくもない格好である。

 飛んでいる所を万が一見られても誤魔化せるようにと、エリスが徹夜で作った力作だ。

 たとえ恥ずかしくても、アリーチェに着ない選択肢はなかった。


「じゃあ森へ行って来るね」


「魔物と戦うのはまだだからね、危ないなと思ったらすぐに戻って来るのよ」


「うん分かった!じゃあ行こっかシルフ!」


 アリーチェの横には、ライトグリーンの長い髪の精霊シルフがふわふわと浮いていた。

 『フライ』は風属性なので、馴れないうちはシルフに側で見ててもらうのだ。


「はい参りましょう」


 アリーチェはフードを被って集中する。


「『フライ』!」


 アリーチェを中心に風が回るように動いたかと思うと、身体がふわりと浮いた。


「わっ、わっ、浮いてる」


 まだ10センチくらいしか浮いてないのだが、ビビるアリーチェ。

 手足をバタバタさせて姿勢を制御しようとするが上手くいかないアリーチェ。


「そんなに力まずに、落ちついておへその辺りに意識を集中するとやりやすいですよ」


「わっわっ、おっおへその辺りね」


 空中でバタバタしていたアリーチェは、次第に落ちついてきた。


「すぅ~はぁ~、すぅ~ばぁ~」


「あら上手、もう行けそうですね。最初は私が手を引きますし、失敗しそうになっても精霊たちでアリーチェちゃんを支えて飛べるから安心して大丈夫ですよ」


「あ、うん分かった。じゃあ行ってくるわ」


 そう言うと、アリーチェとシルフは、青空高く飛んでいった。




  *  *  *  *  *




 空を飛ぶと歩いて半日以上はかかる距離も、ほとんど時間もかからずに魔物の森上空に着いていた。


 魔物の森を見下ろしながら話しあう2人。


「テレポートしたら、目の前に魔物がいた、なんてならないような安全な場所が見つかるといいですね」


「それは確かに怖いわね。あそこに少し広場になっている所はどうかしら?」


「そうですねぇ、広場は冒険者や旅の商人がキャンプを張る可能性が高いし、見通しがいいから誰かに見られる可能性がありますね」


「そうかぁ、他には………森か崖しかない………」


「ウィスプさんは物知りなので、相談してみてはいかがでしょう?」


「ん~~、そうした方が良さそうね………仕方ないか」


 アリーチェは息を大きく吸って叫ぶ。


「すぅ~~っウィスプ~~!!」


「はい、アリーチェ様いかが致しました?」


 速攻でウィスプはアリーチェの背後に現れた。


「うおっ!うっうしろ?」


「お気に召したようでなによりです」


 空中にフワフワと浮いたままお辞儀をするウィスプ。


「いや、お気に召してはいないけど、それよりも何処か魔法陣を設置するのにいいところはないかな?」


「そうですね~………あそこの崖と森が接していて回りから見づらくなっている崖に洞窟を掘るのはいかがでしょうか?」


「洞窟を掘るの?大変そうだし魔物が住み着くんじゃない?」


「誰も入れないように岩でふさいで、魔法陣を使う時だけ入口の岩をどけるのです」


「岩をどける?誰が?」


「もちろんアリーチェ様です」


「無理です!」


「岩をどかすと言っても、空間属性のアイテムボックスに収納するだけですし、任意の場所に出せば洞窟をふさげます」


「…………ウィスプが言うって事は、アリーチェは魔法で出来るって事?」


「はい、余裕でお出来になります。ランパスに教わるとよいでしょう。それと洞窟を掘るのは、筋トレになるからと言えばイフリートが喜んでやるでしょう」


(いつもながらイフリートは、Sな扱いなのね。でもまぁいっか)


「じゃあそうするわ、ありがとうウィスプ!」


「いえ恐縮です。また何かありましたらお呼び下さい、それでは失礼します」


 一緒に居てくれててもいいのだが、ウィスプは精霊界に戻っていった。

 また変な現れ方をしてアリーチェを驚かせたいのかもしれなかった。



 ウィスプの指し示した崖の下に来てみると、木で隠れていい感じの所だった。


「じゃあリート~~!ランパス~~!」

 精霊を呼ぶのに叫ぶ必要は無いのだが、今は周りの誰かを気にしなくていいしアリーチェは気に入ったようだった。


「呼んだ?」


「は~いアリーチェちゃん、お姉さんの助けが必要なのね!」


「呼んだし、助けが必要よ。リートはこの崖に、魔法陣の為の洞窟を筋トレついでに掘って欲しいの。ランパスは洞窟をふさぐ岩を、アイテムボックスで出し入れするやり方を教えて欲しいの」


「岩を相手に筋トレだとっ!うお~~っ、やってやるぜ~~!中の広さは広い方がいいんだろ?」


「掘りすぎると崖が崩れちゃうから、昨日魔法陣を設置した小屋くらいでお願い」


「おうっ!まかせな!」


「うんっ!まかせた!」


「それじゃあアリーチェちゃん、まずは手頃な岩を探しに行きましょうか。見つけた岩で練習しましょうね。じゃあお姉さんについてきて」


「は~い、『フライ』!」


 イフリートとシルフを残して、

アリーチェとランパスは岩を探しに飛んでいった。



  *  *  *  *  *



 洞窟を塞ぐのには都合が良さそうな高さが4メートルはある卵の様な形の岩の前に、ランパスとアリーチェはいた。


「大きいけど気にしないでね、前とやり方は一緒よ。異空間に、魔力で部屋を作ってそこに保管するの。部屋が広ければ魔力も多く消費するけど、大きさに気持ちで負けないように頑張ってね」


「はい、やってやります!大きいけど大きくない、ちっとも大きいくない、全然大きくない」


 岩の大きさに緊張しつつも、集中を高めていくアリーチェ。


 そして岩にそっと手で触れる。


「『収納』!」


 一瞬にして岩が消えた。


「凄いわ、出来たじゃない!」


「…………岩が無くなっちゃった」


「じゃあ今度は出してみましょうかね」


「あれを出さないといけないのか…………やってみます」


 右手を前にかざすアリーチェ


「『アウト』!」


 岩が元々あった位置より、少し浮いて現れた。


 ドオォォォ~~ン!


 大きな音と振動に焦るアリーチェ。


「おわぁおぉぉっ!」


「中々じゃない。後は狙った位置に出す練習ね。ひたすら回数こなして感覚をつかむしかないのよね」


「はい………分かりました」


 アリーチェは大きい岩で練習を始めた。

 最初はドォ~ン ドォ~ンと音が響いてやばかったが、20回くらいやった辺りから、何とか大きな音を立てずに出来るようになり、40回で練習を終わりにした。



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