ロンバルディア教会での戦い!☆3
クリストフィオーレ皇国の北門は、ロンバルディア教会へ出発する皇国軍で慌ただしかった。
馬車や馬で急いで出発していった第1陣の後に、徒歩で向かう第2陣が出て行くところだった。
空を飛ぶ時に着るグレーのつなぎ姿の咲良は、木の枝の上から出発の様子を眺めていた。
「凄く大勢で行くのね。じゃあ行こうかふわちゃん」
「ピピィッ!」
咲良の肩に乗っている白い小鳥のふわちゃんは、「了解」とでも言いたそうに凜々しく鳴いた。
咲良は周りの視線に気をつけながら『フライ』で一気に上空高く飛び上がる。
「教皇様のお陰で何処に行っても神楽が出来るようになったんだから恩返ししなくっちゃ!待っててよ~~!」
咲良とふわちゃんは、暗黒雲に覆われた空をロンバルディア教会に向かって飛んでいった。
* * * * *
ロンバルディア教会での戦況は魔族軍が圧倒的有利だった。
教会に配属された兵士たちはみな優秀な者が多かったのだが、それでも魔王の力により強くなった魔族たちに大軍で攻めて来られてはどうしようもなかった。
首のないスブラの亡骸を挟んで、レオナルドとゾスマが睨み合う。
「まさかスブラがこの程度の奴にやられるとはまったく………スブラが遊びすぎなんだよ」
「…………」
レオナルドはスブラよりも格上のゾスマに注意を払いながら、たった今レベルが上がった自分の身体の感覚を確認していた。
(いいタイミングでレベルアップしてくれた。これでいい勝負が出来るといいんだが……)
レオナルドは自分を信じ剣と盾を構えた。
「私にも勝てるつもりでいるのか。勝てない相手に挑むなんて下等種族はこれだからダメなんだ。さっさと教皇の命を貰って終わりにするか」
ゾスマの背丈はそれほどでもないが、禍々しくも恐ろしい殺気を放ち始めた。
「そう言えば教皇の魔法は良かったな。今まで俺に壊せないシールドは無かったんだが、まさか防がれるとは思わなかったぞ」
ゾスマの攻撃を防いだ『パーフェクトディフェンス』は物理や魔法のどんな攻撃をも防ぐ神級魔法だ。
桁外れの防御力だが、かなりの魔力を消費する。
この世界で最も魔力量が多いとされる教皇でも、『パーフェクトディフェンス』一回で半分以上の魔力を消費してしまうのだ。
つまりもう一度『パーフェクトディフェンス』を使うには魔力が足りないのだ。
「お前と教皇の2人なら楽しめるかもしれんな。教皇も魔法で攻撃して来いよな」
両手持ちのハンマーを肩に担いで余裕の笑みのゾスマに比べ、教皇とレオナルドの表情は厳しかった。
今運良く勝った相手よりもあきらかに格上で、勝てる可能性が限りなくゼロに近かった。
「なんだ来ないのか、ならこっちから行くぞ」
ゾスマは中々向かってこない2人に痺れを切らし動きだした。
次の瞬間、重い両手持ちのハンマーの筈なのにゾスマはレオナルド目の前に居た。
「!!!」
ドゴオォンッ!
レオナルドは反射的に盾で受け止めたが、重いハンマーの一撃に吹っ飛んでしまう。
「うおっ!!」
ザザザァァァァァァ!
飛ばされながらもレオナルドは両足で踏ん張った。
(スピードも力も半端ないな。腕が痺れたのは久しぶりだ)
レオナルドは剣を握りしめ、すぐゾスマに向かって行った。
「ほう、やる気はあるか」
ゾスマは嬉しそうにハンマーで迎え撃つ。
ドゴォォン!
ハンマーと盾がぶつかり合ったタイミングで、レオナルドは剣で斬りつける。
「おっと」
ガキンッ!
ゾスマは身体をずらし難なくハンマーの柄で受け止めた。
ゾスマはすぐにハンマーを振り回して攻撃し、レオナルドは衝撃を吸収するように盾を引きながら受け止めた。
2人の攻防が暫く続くと、平然としているゾスマと肩で息をしているレオナルドの明暗が分かれていった。
「はぁ、はぁ、はぁ、ふう~」
レオナルドは教皇からの『ヒール』の光りに包まれて、呼吸が整う。
「………そんな時間稼ぎして戦ってもつまんねぇだろ」
2人に軽蔑の眼差しを向けるゾスマ。
「まあ、多種族の気持ちなんて分からんな」
そしてゾスマとレオナルドの轟音の響くどつき合いは暫く続いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、すぅ~ふう~」
何度目になるのだろうか、教皇の『ヒール』でレオナルドが回復する。
だがレオナルドの顔色はすぐれない。
魔法で体力は回復出来ても、極限の戦いによる精神的な疲労は回復出来ないのだ。
レオナルドはいつミスをしてもおかしくない状態だった。
「………もう飽きたな」
「……………」
ゾスマの早くて重い攻撃を防ぐだけでレオナルドの身体は悲鳴を挙げていた。
レオナルドは毎回カウンター気味に攻撃を出していたが全て躱されていた。
「ちょこちょこ回復されるのも面倒だから、魔王様に授かった俺の全力で終わらせてやるよ」
ゾスマはハンマーを置くと、両腕に力を込める様にして内なる力を解放しようとした。
「見てな。はぁああああ??!」
ダダッ!
ゾスマがハンマーを置いて力を解放しようとした時、レオナルドはダッシュと共に攻撃を繰り出した。
シュッ!
ザシュ!
キンッ!
ドガンッ!
躱しきれずに攻撃を食らったゾスマ。
「お前っ!!」
「そんな隙を見逃す筈無いだろ」
ハンマーを手に取りながら数歩下がるゾスマにレオナルドは更に攻撃を続けた。
キンッ!キンッ!
シュパッ!
キンッ!キンッ!
ザシュッ!
キンッ!キンッ!
ドガンッ!
ハンマーと盾がぶつかって止まり、力比べの状態になる。
「こっちがひとりで戦ってる上に教皇にも攻撃しないでいてやってるのに、何処までも卑怯な奴だな」
「教会の裏から大軍で攻めて来る奴の言うセリフじゃ無いな」
「『ホーリーアロー』!」
教皇が魔法を唱えると、動きを止めていたゾスマに4本の矢が飛んでいった。
「ちぃっ!!」
キンッ!ズンッ!
キンッ!ブスッ!
矢にきをとられたゾスマに、レオナルドの連続攻撃が浴びせられる。
キンッ!ザンッ!
キンッ!シュパッ!
キンッ!シュパッ!
致命傷では無いが傷が増えていく事に苛立ったゾスマは乱暴にハンマーを振り回す。
「おらあああぁあああああ!」
キンッ!ガンッ!
キンッ!ガンッ!
ドンッ!ガンッ!
ドガンッ!
ハンマーに弾かれてゾスマとレオナルドの距離が離れた。
「あああぁあ頭にきたあぁああああ!」
ゾスマはハンマーを振り回したまま力を解放し始めた。
「なにっ!」
キンッ!ガンッ!
ドゴンッ!
力の解放を阻止しようとレオナルドが斬りかかるが、ハンマーに弾かれた。
「はぁぁあああああああ!」
力の解放が終わると、魔力の禍々しさが増していた。
ゾスマは教皇に視線をロックする。
「先ずはお前からだっ!!」
「「!!!」」
クロエ教皇の身体能力では躱す事は無理な早さで迫るゾスマの前にレオナルドが割って入る。
しかし格段にパワーの上がったゾスマの一撃に簡単に吹き飛ばされてしまった。
ガゴッ!!!
「うぐっ!」
「『ホーリーシールド』!」
レオナルドを吹き飛ばして迫るハンマーに恐怖しながらも教皇は『ホーリーシールド』を唱えた。
パリィィィィィン!!
だが神級ではない『ホーリーシールド』は、ゾスマのハンマーに打ち砕かれてしまった。
もう、ハンマーと教皇の間には何も無かった。
「魔王様の為に死ねっ!!」
教皇とレオナルドは悔しさと絶望を感じていた。
その時、クロエ教皇の遙か上空で、赤と白の羽の生えた大きな鳥に跨がった咲良が唱える。
「『パーフェクトシールド』!」
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