ロンバルディア教会での戦い!☆1
時は少し遡る。
モーリス国王とシーナ女王が魔王討伐に向かう為、クリストフィオーレ皇国王都に到着するところだった。
馬車内では俯いているシーナ女王にモーリス国王が優しく声をかける。
「セノフォンテ国境都市の守りは万全ですから共和国国民は大丈夫です。安心なさって下さい」
「………ありがとうございます。私が塞ぎ込んでてはダメね。しっかりしなくては」
「我々が魔王を討伐すれば、また元通りになりますよ」
「ええ、そうですよね」
「教皇様の所には使者を向かわせましたから、王都で少し待てば教皇様と合流出来ると思います。そしたら魔王討伐に向かいましょう」
「はい」
シーナ女王はどんよりと曇った景色の中、山の中腹に灯るロンバルディア教会の明かりを見つめていた。
* * * * *
山頂に万年雪が残る7,000メートル級のラクパ山。
その中腹にある小さな教会からロンバルディア教は始まった。
普段、教皇はこの小さな教会で生活をしていた。
クロエ教皇は今日も教会の中庭にある神の泉で祈りを捧げていた。
前なら陽の光りが差し込み神々しい光景なのだが、暗黒雲により暗い神の泉は重苦しい雰囲気だった。
教皇の祈りが済むと、側で控えていた神官が皇国からの使者が来た事を伝えた。
「そう、分かったわ」
立ち上がった教皇は、護衛のレオナルドを振りかえる。
「モーリス国王とシーナ女王が王都で待っているわ。魔王討伐に向かいましょう」
「そのお言葉待っておりました」
教皇の護衛レオナルド・プラチドはクリストフィオーレ皇国の近衛騎士団長で7英雄の1人だ。
レベル58で氷属性Aランクの騎士だ。
「「ワアァァァァァ!!」」
突然、大勢の叫び声が聞こえて来た。
「何かしら?」
ドゴオォォォォン!!!
ドドドドドッ!!
キンッ!ガンッ!ドガッ!
「「ウオォオオオォォ!」」
「「きゃ~~~~!」」
ドゴッ!
パリィィン!
ボン!ドカドカドカッ!
叫び声と共に、大きな衝撃音と悲鳴も聞こえてきた。
レオナルドは教皇を守るように側に寄った。
教皇とレオナルドは目を閉じて付近の魔力を探った。
「これは………魔族軍の襲撃のようね」
「いったい何処からだろう…………」
「魔族たちは山の上に続いてるようだわ」
「まさかヴェスパジアーナ共和国を襲った時の様に山脈を越えて来たのか!」
「そのようね」
「教皇様!急いで避難致しましょう!」
レオナルドは側に居る部下に魔族軍襲撃の事をクリストフィオーレ皇国に連絡するよう指示を出し、教皇を守りながら下山しようとした。
だが教会内の通路はすでに大勢の魔族で溢れていた。
レオナルドは行く手を遮る魔族たちを見据えながら剣を抜いた。
「教会に何の用だ」
ゴブリンのような背格好の魔族たちの真ん中に一際身体が大きく異彩を放つ魔族が立って居て、その後ろから背丈はそれほど大きくないがあきらかに雰囲気の違う角2本の魔族が姿を現した。
「俺は魔族軍第3軍団長ゾスマ。くだらん質問だな、祈りに来たとでも思うのか?とりあえずは教皇の命をもらおうか」
ゾスマはレオナルドを通り越して真っ直ぐ教皇を見据えていた。
レオナルドはゾスマの視線を遮るように教皇との間に位置をずらす。
「そんな事させる訳ないだろう」
ゾスマはため息と共にレオナルドを見る。
「ふぅ~~。本気で言っているのか?お前くらいなら俺やスブラの強さが分かるんじゃないか?どっちもお前より強いと思うんだが……」
ゾスマのすぐ後ろにいる一際目立つ体格をした角1本の魔族が強いのもレオナルドは感じとっていた。
たとえ相手が強かったとしても、クロエ教皇との連携があるのでレオナルドは勝つ自信はあった。
問題は周りの魔族たちをどうするかだったが、ゾスマと話しをしているうちに味方の兵士が駆けつけていたので、レオナルドは自分が強い魔族2人を抑えれば何とかなりそうだと考えていた。
「お前たちの強さは分かっているつもりだ。それでも勝つのは私たちだ」
レオナルドはクロエ教皇から防御力強化魔法『プロテクト』がかかるのを感じた。
「ふん、強がったところで死ぬのは変わらん。魔王様の為に全員ぶち殺せ!」
その言葉を合図に戦いが始まった。
「「わぁああああぁ!」」
「させるかああぁぁぁぁ!」
「「うおおぉぉぉぉ!」」
レオナルドはリーダーのゾスマに向かって踏み込んだが、スブラと呼ばれた一際大きい体格の魔族が割って入ってきた。
「ほおぉらあぁ~~!」
ガキィィン!
「!!!」
斧の攻撃を剣で受け止めたレオナルドは、スブラと睨み合った。
「お前の相手はぼくちゃんなんだよおぉ~~だ!」
ゾスマは後ろに下がり腕組みをしていた。
「スブラ、思う存分暴れていいからな」
「うん、やっと暴れられるから楽しみだよ。おじさん少しはがんばって楽しませてよねぇ」
そう言うとスブラは右手に持つ斧と左手に持つハンマーで連続攻撃を始めた。
「ほぉ~ら!ほらほらほらほらほらあっ!」
「なにっ!くっ!はっ!ふんっ!」
キンッ!ガキッ!キンッ!ガキッ!キンッ!ガキッ!!
レオナルドは剣一本で何とか全ての攻撃を受け流した。
「おおっ!おじさんやるじゃん!そうこなくっちゃぁ!」
スブラは嬉しくなりスピードが上がっていく。
「もっといくよぉ~。ほぉ~ら!ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらあっ!」
「ふんっ!はっ!ふんっ!」
キンッ!ガキッキンッガキッキンッガキッキンッガキッキンッ!ドゴッ!ドガッ!!
「うっ!ぐはっ!!」
幾つか攻撃をくらいレオナルドは呻いた。
「苦しむ感じもいいじゃ~ん、おじさんその調子で楽しませてよねぇ~。さあ次いくよぉ~。ほぉ~ら!ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらあっ!」
「くっ!!」
キンッ!ガキッキンッガキッキンッガキッキンッガキッ!ドンッ!ドカッ!ドゴッ!
「んぐはっ!」
ゾスマは後ろで腕組みをして満足そうにしていた。
「スブラ、楽しいのは分かるがあまり長く遊ぶなよ?」
「分かってるよぉ、でも今すごく楽しい所だからもう少し遊ばせてよぉ」
「あぁ…………なるべく早く済ませるんだぞ」
レオナルドは騎士なので、本来の戦い方は剣と盾を使うのだが、教皇の祈りは教会内なので盾を持って来なかったのだ。
油断と言うか本人の怠慢でもあるのでレオナルドは心の中で反省していた。
(気が緩んでいたな。まさかこんな事になるとは…………)
* * * * *
ロンバルディア教会から通信用魔道具で魔族軍襲撃の連絡が入っていたクリストフィオーレ皇国では、兵士たちに緊急召集がかけられていた。
広間は急いで集まる兵士たちで慌ただしかった。
玉座に座るモーリス国王と、その横にはシーナ女王が立っていた。
「教皇様が心配ですわね」
「ええ………早く行かなくてはと焦りますね」
モーリス国王とシーナ女王が話していると、玉座の後ろ側にある広間の魔法陣が輝きだした。
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