転移魔方陣!
カルロス国王と騎士団員たちが、助かるんだと分かり号泣していたその時、入口を塞いでいた『ファイアウォール』が急激に弱まって消え、魔族の集団が部屋に入ってこようとしていた。
カルロスが慌てて指示を出そうとする。
「しまった。魔力の限界だ!魔族たちが侵入してくるぞ!全員戦闘態勢を…………」
咲良が小声で呟く。
「『ファイアウォール』!」
次の瞬間、元あった『ファイアウォール』より一廻り大きな炎の壁が現れた。
カルロス国王はもうどんな事が起きても驚かない自信があったが、それでも絶句した。
「えええっ??」
カルロスは魔力の流れで誰の魔法か分かったので、すぐに咲良を見た。
聖属性の回復魔法を使っていた咲良が火属性を使ったのだ。
この世界ではありえない事だった。
カルロス国王の視線に気づいた咲良は、すぐウィスプに目で助けを求める。
≪≪んっ?ぉおおお!『ファイアウォール』!ほらっ『ファイアウォール』!みなの者聞いておったな。詠唱など必要ないのじゃが二回も言ってやった!妾の魔法じゃ!…………ほれっ感謝の言葉はどうしたのじゃ?ほれっ≫≫
「えっ?いやだって今のは……」
「おおお!!流石です女神様!」
「ありがとうございます女神様!」
「ああ!女神様!」
カルロスの疑問の声は騎士団員たちの声にかき消された。
そしてランパスも咲良を助ける為、強引に話しを進める。
≪≪私は忙しいから早く転移魔法陣へ行って下さらないかしら。さあ早く。早い者勝ちで素敵な世界へ連れてってあげるわよ?さあ早く早く!≫≫
素敵な世界ってクリストフィオーレの事なのだが、カルロスと騎士団員たちは今あった事など忘れ、妖艶で魅力的なランパスにホイホイと付いていった。
* * * * *
玉座の裏には表と同じように降りる階段があり、その先には薄暗い広間があった。
全員広間に降りるランパスに付いていった。
「うわぁ広そうだけど暗くて奥がよく見えないわね」
あどけない咲良を見て、仲良くなるチャンスとばかりにカルロス国王は話しかける。
「凄く広いだろう。馬車や軍隊ごと転移する為の広さなんだぞ。永年使われていないが、大切な遺跡だから掃除も欠かさないんだ。ちょっと暗く感じるけど魔法陣が光れば結構明るいんだよ」
「ふぅ~ん、確かに床は綺麗だけど、魔法陣は何処かしら………」
「ああ、今は分からないが魔法陣はこの広間全体にあるんだ。少し光らせるだけでも多くの魔石を消費するから滅多に見られる物じゃないんだ。転移する時に見る事が出来るかも………ね?」
カルロス国王の説明も聞かず、咲良はトコトコと前に出た。
「この辺かしら」
咲良はいつものように魔法陣がありそうな辺りにちょこんと足を乗せ、魔力を流して確認してみる。
すると今まで何も無かった広間に、仄かな紫色の大きな魔法陣が浮かび上がった。
「へぇ~、かなりの大きさね」
魔法陣を確認した咲良がふと後ろを振りかえると、みんなあんぐりと口を開けていた。
大抵の者は転移魔法陣を見たことが無い。
カルロス国王も、普通は魔法陣の確認などせず使用する時に大量の魔石を消費して分かるものなのだ。
それが咲良が触れただけで魔法陣全体が光り始めたのだ。
「…………こんな事が」
咲良は魔法陣を確認しただけなのだが、自分が何かやらかしたのだと気づき、視線でランパスに助けを求めた。
ランパスは慌ててみんなに語りかける。
≪≪あらまぁ、素敵な魔法陣じゃない!さあみんな早く魔法陣に乗って!早く早く≫
話し方は最早女神では無くなっていた。
「えっ?いや、今その少女が………」
何かを言おうとするカルロスに、ビシッと指を差すランパス。
≪≪魔法陣にお乗りなさいって言ってるのよ!何か文句あるの?≫≫
ランパスの迫力にカルロスはぶんぶんと首を横に振っていた。
そしてみんな速攻で魔法陣の上に乗った。
≪≪それではクリストフィオーレへ参りましょう≫≫
ランパスは何気なく咲良の肩に手を置き、クリストフィオーレ皇国にある転移魔法陣の中心の模様を共有する。
徐々に魔法陣の輝きが増す。
そしてランパスの声に合わせて咲良も小さな声で呟く。
≪≪『テレポート』!≫≫
「『テレポート』!」
ランパスと咲良の言葉と共に輝きを増した魔法陣は、広間全体を光りの世界へと変えていた。
* * * * *
クリストフィオーレ皇国。
玉座にモーリス国王が座り、横にはシーナ女王が立っていた。
目の前のでは緊急召集された兵士たちが慌ただしく集まり整列しているところだった。
「教皇様が心配ですわね」
「ええ、護衛のレオナルドが居るとは言え魔族軍相手だ。いつまで持ち堪えられるか。早く教皇様の元に向かわなければ………」
「まさか魔族軍が山脈を越えてロンバルディア教会へも侵攻するとは思いませんでしたわね」
「冷静に考えればガンドルフ帝国、ヴェスパジアーナ共和国と攻めてきた時に予想するべきでした。ロンバルディア教会を守る為に建国されたクリストフィオーレ皇国の国王として失格です」
「教皇様のお側にはレオナルドさんの他にも精鋭の方たちがいらっしゃるんですからきっと大丈夫ですよ」
「はは、今度は私が慰められる立場になりましたな」
「昔からの友人ですから当然ですわ」
モーリス国王は少しだけ肩が軽くなった気がした。
その時、玉座の裏にある転移魔方陣が輝き始めた。
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