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ガンドルフ帝国での戦い!☆6


 裏門に向かうユリウスと別れ、カルロス国王たちは正門に向かった。


 カルロス国王と一緒なのは騎士団員数名とジャン、ジャック、それと小脇に抱えられている咲良だ。

 ユリウスがジャン側に付いた事もあり、カルロス国王はジャンたち家族を避難するよう説得出来なかった。


 小脇に抱えられている咲良はこれからの事を考える。


(さっきジャンは謁見の間に転移魔法陣がある筈だって言ってたから、城内の人たちとおおかみさんの避難が終わったら謁見の間まで行けばみんな助けられるのね。これから行く正門での戦いもライオンさんは盾が上手で全然ダメージ受けなさそうだから、騎士団員たちをこまめに回復してあげればいけそうだわ。まあダメだったら精霊たちに戦ってもらえば問題ないし)


 国王が居るのだから精霊が一緒に戦った時点で問題なのだが、咲良の頭の中ではやってもバレないだろうの範囲がかなり緩くなっていた。


 咲良は気になっている事をジャンに聞いてみた。


「ねえジャン、みんなで転移しても大丈夫なのよね?」


「んっ?………まぁ大丈夫なんじゃねえか?後で国王が何か言って来ても俺がお嬢ちゃんを守ってみせるからよ!」


「……………」


 ドヤ顔でヤバそうな事を言うジャンに、咲良はちょっと引いていた。


(えっと、後で国王様が何か言って来るって事は大丈夫じゃ無いんじゃ…………)





  *  *  *  *  *




 カルロス国王たちが城の正門に着いてみると、魔族たちと戦っていた兵士たちはかなり疲弊していた。


「みんなよく踏ん張ってくれた!」


「あっ!国王様!」

「「「国王様!」」」


 カルロス国王はすぐに交代して、兵士たちを避難させた。


 咲良は避難する兵士たちに少しずつ『ヒール』をかけてあげた。

 魔法で回復したのが分かった兵士たちは周りをキョロキョロするが、誰がかけてくれたのか分からないまま急いで避難していった。


 カルロス国王たちの正門を守る戦いが暫く続くと、徐々に魔族の数が増え劣勢になってくる。


「魔族どもが集まって来てるな。他の場所はもう占領されちまったって事なのか」


 カルロス国王の呟きが聞こえ、ジャンが応える。


「惹きつけるのが目的なんだから、ここに集まってくれて好都合だぜ」


 カルロス国王はジャンのポジティブさに苦笑いしていた。


 カルロス国王もジャンも一度に相手する数が増え、傷を負うようになっていった。


「ふんっ!おりゃっ!はぁ、はぁ、盾で攻撃も出来るがやはり片腕は厳しいな…………んあっ?回復魔法か!いったい誰が………」


 カルロス国王はその時、始めて咲良の『ヒール』で回復したのだ。

 不思議に思ったカルロスは、魔力の流れから魔法を使ったであろう人物を見る。


(ええっ!?子供が回復魔法だと!!)


 更に少し離れた所で戦っている騎士団員が『ヒール』の淡い光りに包まれた。


(………戦い続けているのに疲れを見せなかった騎士団員たちはタフなんだと思っていたが、まさか全員をずっと回復し続けていたのか)


 咲良のお陰で回復したカルロス国王は、横から襲ってきた魔族を盾で力強く弾き飛ばし魔族たちを押し返していった。


 少しずつ『ヒール』をかけるやり方ではじり貧になると考えた咲良は、ラダック村で商人シモーネの時にやった「全部やったのは女神様ですよ作戦」を決行する事にした。


<いいウィナ、帝国のみんなの祈りに応えて女神が降臨したって設定だからね!>


<お任せ下さい咲良様!女神は私の転職です!>


<よし任せたっ!じゃあ女神ウィナ!降~臨!>


 すると地上数メートルの所に、白い衣に白い翼で眩いばかりに輝く精霊ウィスプが現れた。


「「なんだっ?!!」」

「新手かっ?!」

「何が現れた?!」


 突然の出来事に、帝国側も魔族側も戦いを中断し距離をとった。


≪≪私は女神である!帝国の民の祈りに応える為に来た≫≫


「女神様?」

「我々を助けてくれるの?」

「ああ!女神様!」


「…………えっ?」


 騎士団員たちはウィスプの扮した女神をすんなり受け入れたが、カルロス国王は違った。


(女神??何を言ってるんだ?精霊のウィスプだよな?)


 ウィスプの演技は続く。


≪≪さあ!私が………妾が!皆の傷を回復してやろう!『ヒ~~ル』!!≫≫


 咲良はウィスプの台詞に合わせて今までより少し多めの『ヒール』をみんなにかけた。


 みんなの身体が淡い光りに包まれ、傷が治っていった。


「「おおっ!」」

「「女神様ありがとう!」」


「いやいや」


 騎士団員は女神様に感謝していたが、やっぱりカルロス国王は違った。


(今やったのはあきらかに少女だったし、今までも少しずつ『ヒール』をかけてくれていたんだぞ。でもなんで精霊ウィスプの台詞に合わせて派手に『ヒール』をかけるんだ?)


 カルロス国王は訳が分からなかったが、助かっているのでとりあえず黙っている事にした。


 大っぴらにみんなを回復出来る様になった咲良は、まだまだ増え続ける魔族に対抗する為次なる作戦を決行した。


<じゃあウィナ!次はあのライオンさんの腕を治すから、それっぽい台詞をよろしくね!>


<分かりました咲良様!お任せ………>


 その時突然、光り輝く女神がウィスプの横に現れた。


<えっ??>

<なにっ?>


「「なんだ!」」

「もう1人女神様が現れたぞ!」

「おお!女神様が2人も!!」


 騎士団員たちは喜んでいたが、咲良とウィスプは訳が分からなかった。


 魔族たちも訳が分からなかったので、戦いは中断したままだった。


 光ってて見えづらかった女神が、密かに咲良に語りかけた。


<咲良様、腕を治す魔法は神癒属性で私の担当にございます!ぜひ私めにお命じ下さいませ>


<ああルナか。そう言う事ね。じゃあそれっぽくお願いね>


<御意!命に代えても成し遂げて御覧にいれます!>


 ルナの返事に一抹の不安を覚える咲良。


「………」


 咲良の為に全力のルナは、カルロス国王の上空に移動して、ビシッと指を差した。


≪≪おい貴様!≫≫


「「「はっ?」」」

「「「えっ?」」」


 ルナの行動にここに居る全員困惑してた。


≪≪咲良様がお前のその右腕をお治し下さるそうだ!ひれ伏して泣き(わめ)いて喜べ!そして一生涯感謝するがよい!≫≫


「えっ?さくら様?………誰?」


 カルロスはまだ咲良の名前を知らなかったので、何がなんだか分からなくなっていた。


 咲良は焦っていた。


(うわ~~、ルナってば名前言っちゃってるよ………)


 ルナは更にカルロス国王の頭上に近づき、その顔を踏みつけた。


 ゲシッ!


≪≪なんなんだ?その感謝の欠片も無いだらしない顔は!!≫≫


 ゲシッ!ゲシッ!


「んがっ!んがっ?」


 ゲシッ!ゲシッ!


「はぶっ!もべっ、」


 ルナが蹴るたびに少しずつ焦げていたたてがみが治っていった。


(おっ、痛くない………むしろ回復してる?)


≪≪感謝しろと言ったであろう。何故感謝せぬ!≫≫


 ゲシッ!ゲシッ!


 またカルロスのたてがみや傷が少し治った。


(見たこと無い精霊だが、いったい何をしたいんだ?)


≪≪感謝せぬなら死ぬまで蹴り続けるからなっ!!≫≫


 ゲシッ!ゲシッ!


「ふがっ、へぶっ、あっありがとう御座いまふっ……」


 カルロスは訳が分からないが、とりあえず御礼を言った。


≪≪ふんっ!心のこもらん感謝だな、今回だけは咲良様に免じて許してやろう!では行くぞ!『リジェネレイティブ』!≫≫


(あっ!ちょっ!『リジェネレイティブ』!)


 慌てて咲良も心の中で唱えた。


 踏みつけてる足越しにルナを見上げていたカルロスだったが、無い筈の右腕が熱くなるのを感じて右肘を見た。


 すると切断された肘から光が伸び、ゆっくり元の腕の形になっていった。


 騎士団員も魔族たちも、不思議な光景に目を奪われていた。


 指先まで伸びた光りは、最後に強い輝きを放ってから消えると、そこにはカルロスの右腕があった。


 この場にいる全ての者はただ呆然としていた。


≪≪死ぬまで咲良様に感謝するのだぞ!いや、死んでも感謝しろ!絶対感謝しろよな!ではさらばだ!≫≫


 好き放題やらかしたルナは、満足そうな笑みを浮かべながら光の粒子となって消えいった。


(ルナ……………名前言っちゃってたなぁ。もうルナは呼ばない事にしよう。あっ!今回も呼んでないんだった)


 咲良にルナを止める手段はなかったのだ。



「カルロス国王!」


 腕が再生する魔法を知っていたジャンは全員が固まっている中、剣を持っていないカルロスに片手剣を投げた。


 カルロス国王が右手で剣を受けとると、この場の全員が我に返って戦い始めた。


「魔王様の為にぶっ殺せ~~!」

「「「ぐおおおぉぉ!」」」

「みんなもう少しだ踏ん張れぇ~!」

「「「うおおおぉぉ!」」」


 再び正門前での攻防が始まった。



 

 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 本作を読んで頂き有難う御座います。


  m(¬ ¬)m  m(_ _)m  <(_ _)> 


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



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