ガンドルフ帝国での戦い!☆4
グリーゼがユリウスにトドメを刺そうかと言う所に、咲良を小脇に抱えたジャンが到着した。
「ユリウス殿!!」
ジャンが叫んだ。
「ジャン殿か………」
満身創痍のユリウス。
「ジャンだと?」
その名を聞きグリーゼが振り向く。
ジャンとグリーゼの目が合う。
「貴様!」
「お前!」
グリーゼの口元は歪むように笑っていた。
「くっくっくっ、探す手間が省けたな」
ジャンは咲良を降ろし後ろに下がらせる。
「なんだ?姿形が変わってるよな」
背中の大剣を握りながらジャンが聞くと、グリーゼは得意気に言う。
「ふっ、魔王様のお力だ。お前とは強さの格が違うんだよ」
「確かに強くなってるな」
ジャンは前回辛うじて退けたが、今回は流石に無理そうな強さだ。
「お前は俺の汚点だったが会って分かった。もう相手じゃないな」
大剣を構えるジャン。
「そいつはやってみなけりゃ分からんさ」
ユリウスがボロボロの腕で自分の剣の1本をジャンに投げた。
「ジャン殿、奴の動きは速い。大剣ではついて行けないだろう。それを使ってくれ」
ジャンは大剣を地面に刺し、受けとった剣と腰の片手剣を握った。
「分かった。使わせてもらうよ」
「もういいなら早いとこ戦うか!」
ジャンはグリーゼが武器を持ってない事に気づく。
「素手でいいのか?」
「俺は素手の方が強えんだよ」
いつの間にかグリーゼを挟むようにジャンの反対側にはジャックが剣と盾を構えていた。
グリーゼがユラリと動きだした瞬間にジャンもダッシュする。
キンッ!キンッ!キンッ!
キンッ!キンッ!キンッ!
剣と拳が火花を散らす。
ジャックは割って入るタイミングを計ろうとするが、早すぎて目で追うのがやっとだ。
キンッ!キンッ!ガッ!
キンッ!ガッ!ドンッ!
ドガッ!キンッ!
ドンッ!ドガッ!ドガッ!ドガンッ!!
ジャンはグリーゼの拳をまともに食らい吹っ飛んだ。
「いってぇな、くそっ」
ジャンは口元の血を手で拭いながら立ち上がる。
「ははっ、俺の勝ち確定だな。もう終わりにするか。とっとと汚点を消し去って気持ちよく街を占領しねぇとな」
3人はここに走ってくるまでの間にグリーゼが強くなっている事を想定して作戦を立てていた。
魔法で自分たちのスピードと身体能力を上げ、更に相手を弱体化させる。
お互いの差が縮まったうえに、今回はジャックと二人がかりだ。
ジャンはグリーゼが強くなっていても勝てるだろうと思っていたのだが、これ程とは思わなかった。
(お嬢ちゃんには、俺たちがやられたら逃げるようには言ってある。あれだけ精霊が居るんだから大丈夫だろう……………やるしかねえな)
ジャンは咲良とジャックを見て頷いた。
ジャックは自分にスピードアップの為の『ヘイスト』をかける。
咲良はジャンに『ヘイスト』と身体強化の『フィジカル』をかける。
ジャンは持っていた1本の剣を放し、横の地面に刺さっていた自分の大剣を握りしめた。
グリーゼは相手の準備が整うのを待った。
「準備は終わった様だな。汚点はこの世から消えろ!」
グリーゼは5本指を伸ばしジャンの胸を貫くつもりで襲いかかった。
「おらあっ!」
しかし動きだしたジャンのスピードが今までと違った。
「!!!」
すぐに拳でジャンの剣を受け止める。
ガキィィン!
瞬間グリーゼは背中に気配を感じもう片方の拳を振るった。
剣を振り下ろすところだったジャックが、グリーゼの拳で吹っ飛んだ。
一瞬の隙にジャンは身体を捻って大剣で突きを放つ。
「ふんっ!」
「俺の拳の方が早いんだよ!」
グリーゼは大剣を避けようとはせず、爪でジャンの顔を貫きにいった。
グリーゼの攻撃の方が僅かに早く、ジャンの顔にはグリーゼの爪が迫っていた。
「『パラライズ』!」
いつもの『パラライズ』よりも多めの魔力が減り、咲良の魔法が発動する。
グリーゼは一瞬『パラライズ』による違和感を感じるが、魔族の身体は魔法の効きが悪く弱体魔法で苦しんだ事が無いのだ。
「無駄だっ!!」
詠唱魔法なら使われる魔力量は一定なので、魔族は弱体魔法をレジストしやすい。
しかし咲良は無詠唱だ、『パラライズ』で麻痺るまで無意識に魔力をつぎ込んでいた。
そんな『パラライズ』によって生まれて初めてグリーゼは弱体魔法で動きが止まった。
「なっ??」
ジャンにはその一瞬で十分だった。
ジャンの大剣はグリーゼの腹を貫いていた。
「うがああぁぁああっ!!」
グリーゼは大剣ごと強引にジャンを蹴り跳ばし距離をとった。
「はあ、はあ、ちくしょうぅぅぅふざけんなよぉおおお!!」
叫びと共に強化されていたグリーゼの身体が小さくなっていった。
大剣を握りしめて立つジャン。
膝をついて戦いを見ていたユリウスには信じられなかった。
「何が起こったんだ…………そうか、あの強さには時間制限があったからグリーゼは焦っていたのか」
元の身体に戻ったグリーゼの腹からは血が流れていて、戦闘力はかなり落ちていた。
「ちくしょ~~!1対1なら負けねえのに大勢で来やがって、卑怯者!」
後ずさって逃げようとするグリーゼにジャンが近づく。
「もう逃がさねえ」
「俺だけにかまけてていいのか?」
「なにっ?」
グリーゼにばかり気を取られていたが気がつくと周りは魔族に囲まれていた。
「そっちが1対1で戦わねえんだからこれで公平だよな。もう街の大半は俺たちのものになったみてえだし、あとはお前らだけかもな」
「貴様!」
「もう1対1で俺の方が強いって分かったんだ。お前はここで魔族に殺されろ」
グリーゼはゆっくりと魔族の集団の中に消えていった。
「おい待てっ!」
大勢の魔族に囲まれてジャン、ジャック、咲良、ユリウスは身動きが取れなくなっていた。
ドォン!
ドドォン!
ドガァン!
ドガガァン!
そこに魔族を吹き飛ばしながらカルロス国王が現れた。
「やっと見つけた。大丈夫だったかって、こんな所に少女?」
カルロスから見た光景では、元気そうなジャンと疲れ果てているユリウスと少年、そして巫女装束の白と緋色が眩しい少女がいた。
4人は魔族を吹き飛ばしながら登場したカルロス国王に苦笑いをしていた。
「国王様、良い状況とは言えません」
「うむ、身体はあれだが声は大丈夫そうだな」
カルロス国王が片腕なのに気づいたユリウス。
「国王様その腕は?!」
「んっ?ああこれか。魔族を討ち取るのに必要だったのだ。盾は持てるから………まぁ大丈夫って事だな」
「しかし国王様………」
「それよりここから脱出するぞ!城まで行けば何とかなるかもしれん。ダメならその先まで走るぞ!続け!!」
カルロス国王が盾で魔族たちに突っ込み、みんなそれに続いた。
勿論、ジャンは咲良を小脇に抱えて走った。
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