ガンドルフ帝国での戦い!☆3
ユリウスとグリーゼが戦っている頃、北門広場の入口付近では遅れてやって来た第1軍団長デネボラとカルロス国王が相対していた。
ライオン獣人で逞しい身体つきのカルロス国王は剣と盾を装備した騎士スタイルで、対するデネボラも同じように剣と盾の騎士スタイルだ。
北門を入ったすぐの所で目の前に現れたライオン獣人を、デネボラは値踏みするように眺める。
「まあまあの様だが、まさかこの私と1対1でやるつもりか?」
「他の者が忙しくてな、暇なのは私しか居らぬのだよ」
「………私の相手を暇だと?ふざけた奴だ。こっちは暇じゃないんだ。すぐに終わらせるか」
お互い剣を抜くと、すぐに戦闘が始まった。
キンッ!ガッ!
キンッ!キンッ!ガッ!
ガンッ!ガンッ!キンッ!
両者とも剣と盾を使いこなし、互角の戦いをしていた。
戦い好きのデネボラはライオン獣人への興味が湧いていた。
「中々やるな。私は第1軍団長デネボラだ」
「魔族が名を名乗ると言う事は認められたって事か。私はカルロス。一応国王を務めておる」
「なに?国王がこんな最前線で戦ってていいのか?」
「ああ、ガンドルフでは強い者が国王に選ばれるのでな」
会話をしつつもお互い視線は外さず緊張感が漂っている。
「じゃあここでアンタを倒せば私が国王って事か」
「心配しなくていい。皆が魔族に従うとは思えんし私が勝つから」
「心配なんかするかよ。従わなければ殺すまでだ」
沈黙の後、再び戦闘が始まる。
2人のスピードはどんどん上がっていくが互角の戦いが続いていた。
「ほう、私が魔族以外との戦いでこれ程長引いたのは初めてだ」
カルロスが周りを見ると、あきらかに魔族軍が優勢だった。
「時間が無いようだな。そろそろ本気で行くか」
「ふっ、同感だ。こちらも早く終わらせて街の住民どもに奴隷か死かを決めさせなければいけないのでな」
「………そんな事はさせん」
二人の本気の戦いが始まった。
* * * * *
魔族軍の侵攻を、最初は帝国軍と冒険者たちが押し留めていたのだが、少しずつ押され始めると王都は瞬く間に魔族軍に占領されていった。
魔族軍の最前線は角1本や角無しだ。
普段戦闘をしない彼らは、自分が強い力を振るうのに夢中になり、奴隷云々の魔王の言いつけなど忘れ暴れまわっていた。
避難するつもりのなかった住民は勿論、避難中の住民たちまでもが犠牲になっていった。
咲良を小脇に抱えたジャンとジャックは北門へ向かって走っていた。
王都の中心にある城を過ぎると、ちらほらと魔族を見かけるようになった。
咲良がジャンに状況を説明した。
「魔力感知によるとかなり広い範囲が魔族に占領されてきてるわ。その中で最も大きな魔力が4つ北門広場にあるわ。それぞれ1対1で戦ってるみたい」
「そうか、その2人はきっとカルロス国王とユリウス騎士団長だろう」
側を走るジャックが心配する。
「国王様とユリウス騎士団長が勝ったとしてもその周りが魔族だらけじゃあマズいよね」
「ああ、それとその戦っているどっちかがグリーゼの可能性があるから、とりあえず合流するぞ」
ジャンたちは走るスピードを上げた。
* * * * *
北門広場でのカルロス国王とデネボラの戦いは、カルロスが押していた。
デネボラも本気で戦っているようだが、それでもカルロス国王が押していた。
「くそっ何故だ!明らかに私の方が強い筈なのに!」
キンッ!キンッ!ガッ!
キンッ!キンッ!ゴンッ!
「日頃の修練の違いだろう。後は気合いだな。私はお前と背負っているものの大きさが違うのだ!」
「私だって、私だって魔王様の思いを背負っているのだ!ちいっ!仕方が無い。不本意だが魔王様に頂いた力の全てを出すしかなさそうだ」
「まだ何かあるのか」
「ふん、我々は選ばれた種族なのだよく見ておけ!これが魔王様から頂いた力の全てだ!」
デネボラが全身に力を入れて体内の魔力を解放する。
「はあぁぁぁああああああっ!」
気合いと共にデネボラの身体が逞しくなり、魔力も禍々しさを増した。
今までより明らかに能力の上がったデネボラを見て、カルロスは苦い表情をしていた。
「ふっふっふっ、はぁ~っはっはっはっ!どうだこの強さが分かるか!」
「ああ、相当強くなった様だがそれでも勝つ!私は国王だ!」
「ふっ、怖くても逃げられんとは国王ってのは不便だな。早めに終わらせてやろう」
カルロスは構え、呟くように魔法の詠唱を始めた。
「国王死ねっ!」
ゴンッ!!
デネボラの重い一撃を何とか盾で受け止めたカルロスは剣で反撃に行くが、デネボラが盾で力任せにカルロスの攻撃を腕ごとぶん殴った。
ドガァーーン!!
剣ごと弾かれカルロスの腕は伸びきってしまい、デネボラは素早く剣を振り下ろした。
ズザンッ!!
「んぐっ!!」
宙を舞うカルロスの右腕。
カルロスは痛みに堪え、戦いながら詠唱を続けていた魔法を発動する。
「『ファイアアローセカンド』!」
『ファイアアローセカンド』とは、『ファィアアロー』の上位版で矢が強力になり本数も多い。
「ふん!こざかしい!」
デネボラは『ファイアアローセカンド』を剣と盾でなぎ払いながらも数歩下がっていた。
「『ファイアウォール』!」
直後、デネボラの背後に炎の壁がせり上がった。
「!!」
デネボラは下がりかけていた足を止める。
すかさずカルロスは盾を構えて全力で体当たりをした。
ガゴッ!!
「なっ!片手のくせに力勝負に来るか!」
盾で踏ん張ったデネボラだが、万全の体勢では無かった為に力負けして背中が『ファイアウォール』に焼かれ始めた。
「うあっ!貴様あぁっ!」
カルロスは失った片手の痛みに堪えながら気合いでデネボラを押す。
「ふんぬっ!」
「うごおおぉぉおおおっ!」
真っ赤な顔をしてデネボラが押し返し始めた。
そこで詠唱が完成したカルロスの魔法が発動する。
「『ファイアセカンド』!」
その瞬間、通常の何倍もの大きさの炎がデネボラの目の前に現れ顔面に炸裂した。
ゴオオオオォッ!!
デネボラは顔面に現れた炎の玉と背中の炎の壁に挟まれた。
ゴオォオオオオッ!!
「うがあぁぁあがあぁぁ」
炎に焼かれデネボラの力が弱まっていく。
「あがぁ……あぁぁ……おぁ………ぁ……」
デネボラは燃え尽き、魔法の炎も消えていった。
『ファイアセカンド』は敵と密着した状態で出す大きさの魔法ではないので、カルロスのたてがみもちりぢりに焦げていた。
カルロス国王は失った自分の片腕を見ながら呟く。
「何とか勝ったが…………国王としての私はここまでか」
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