動乱!☆2
ーー魔族第1軍と第4軍ーー
ガンドルフ帝国の王都が見える丘に、魔族の第1軍と第4軍が整列していた。
胸板が厚く鋼のような筋肉の第1軍軍団長デネボラとしなやかな筋肉で俊敏そうな体つきの第4軍軍団長グリーゼは王都を観察していた。
「防壁の上から大勢でこっちを見ておるわ。国境ではすぐ逃げていったがここでは遊んでくれるのかね」
デネボラは帝国軍を蔑んでいた。
鼻で笑うグリーゼ。
「ふんっ、アイツら大勢いれば勝てるとでも思ってんのかね。戦いが始まったらすぐ逃げ出す腰抜けのくせに」
「第1軍だけで行った方がまだ逃げ出さないかもしれんな。グリーゼたちは休んでてもいいぞ?」
「おいおい、こちとら暴れ足りなくてイライラしてんだ。デネボラこそ待っててくれていいんだぜ?」
「ふっ、お互いジッと待ってるのは性に合わないな。獲物は早い者勝ちって事にするか」
「いいんじゃねか?早く行かねえと逃げちまうしな」
「ああ。しかしあの防壁を突破するまでに少しばかり犠牲が出そうだな」
「やられる奴は弱いって事だ。いいんじゃねぇの?」
「おいおい魔王様からお預かりした兵士たちだ。もっと大事にしろ」
「多少減ったってかまやしねぇよ。俺がアイツらを全滅させてやるからよ」
「おいおい、我々は戦うのが目的ではなく多種族全てを服従させるのが目的なんだ。全滅させて奴隷が残らないのは魔王様の意にそぐわないだろう。グリーゼが奴隷の分まで働いてくれるのか?」
「やだよそんなの。そっか、魔王様が逆らわない奴は奴隷として使えるから殺すなとか言ってたな」
「思い出したか。逆らう気の無い奴は殺すなよ」
「覚えておくよ………なるべく」
「………頼んだぞ」
「あっ!犠牲を少なく防壁を突破したいんだっけか?だったら俺たち第4軍が先頭で門を突破してやろうか?」
「また無茶な事を………」
「どのみち行かなきゃならねえんだ。これなら第1軍の犠牲が少なくて済むんじゃねえか?」
「第4軍に犠牲が出れば同じ事……………いや、確かに第4軍の方が攻めには向いてるかもしれんな」
早く暴れたいだけで特に考えがあって言った訳では無かったグリーゼは一瞬戸惑った。
「えっ?そうなの?あっそうだよな!よし決まりな。これで真っ先に暴れられるぜ」
デネボラはため息をついた。
* * * * *
ガンドルフ帝国の防壁の上から魔族軍を観察する帝国軍、その先頭にカルロス国王とユリウス騎士団長が居た。
「中々の数だな」
「そのうえ個々が強いので厄介です」
「そうか、心してかからねばな」
「国境で撤退して悔しかったのでしょう、兵士たちはいつもよりも気合いが入ってましたので、大丈夫でしょう」
防壁の上や内側で待機している兵士たちは今か今かと戦闘開始の合図を待っていた。
* * * * *
ーー魔族第2軍ーー
場所は変わってヴェスパジアーナ共和国とクリストフィオーレ皇国の国境。
ヴェスパジアーナ共和国を占領たアルギエバ団長率いる第2軍は、クリストフィオーレ皇国セノフォンテ国境都市の前に待機し、攻め込むタイミングを計っていた。
「流石に皇国軍なら少しは抵抗するだろう。だが我々がここに居るだけでも敵の戦力を足止めしているのだから、無理に攻め込む必要もないか」
その後、セノフォンテ国境都市では魔族軍と皇国軍との睨み合いが続いた。
* * * * *
ーー魔族第3軍ーー
ゾスマ団長率いる第3軍は、ロンバルディア教会を奇襲して教皇を討つ為、標高5.000メートルの山道を進軍していた。
ドワーフのような小柄な体格の者が多い第3軍には力任せに暴れるタイプが多く、斧やハンマーを装備している者が多かった。
先頭を歩く角2本のゾスマ団長と、一際身体の大きい角1本のスブラ。
ドワーフのような小さめの体格の者が多い第3軍の中でスブラは一際大きかった。
角2本のゾスマ団長は他の兵士より一廻り大きいのだが、スブラは別格だった。
「ゾスマ団長~、あといくつ山を越えりゃあいいんですかぁ~?」
野太い声でスブラが気安く声をかけた。
「さっきも言っただろう。あの山を越えればすぐだ」
魔族において角の本数は強さと格を示すものなので格上への失礼な態度はそく死に繫がるのだが、格上であるゾスマ団長はスブラの気安い態度を許しているようだった。
「ゾスマ団長~~、何回聞いてもそればっかりじゃないですかぁ~。もう疲れちゃいましたぁ~。休みましょうよぉ~」
「さっき休んだばかりだろう」
「んっ?まぁそうなんですけどぉ~、なんか知らないけど身体かすぐ疲れちゃって思うように動かないんですよぉ~」
「ったくもうっ。休みたければ好きなだけ休んでろ!」
「おっ、やったぁ!言ってみるもんだなぁ」
そそくさと道端に座って休み始めるスブラ。
「俺は先に行って暴れてるから、スブラが来る頃にはもう終わってるかもしれないな」
「あっ!団長ずるいぃ~。俺も暴れたいですぅ。もう休みたいなんて言いませんよぉ~待ってくださいよぉ~」
暴れられると聞きスブラは休むのをやめて急いで団長について行った。
空気の薄さとこれまでの疲労からだろうか、スブラの身体は重そうだった。
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