閑話 それぞれの日々!
咲良たちが王都レオーネを離れた後。
東広場の一角は、相変わらず行列の出来ているチーズ屋さくらカフェと串焼きさくら亭で賑わっていた。
みんな仕事にも慣れて手際が良くなっているのだが、日に日に行列が長くなり忙しさが増すばかりだった。
さくらカフェのチーズ売り場では双子の姉のリディアが、テーブル席では妹のナディアが一生懸命接客をしている。
厨房ではニコデモとエルマの夫婦でカフェ用の料理やフレッシュチーズなどをせっせと作っていた。
「こちらがフレッシュチーズ4つになります。ありがとうございました。次の方はフレッシュチーズ2つですね、少々お待ちください」
「はい、フレッシュチーズサラダとシフォンケーキと紅茶お待たせしました。はい、ミルクも追加ですね、かしこまりました」
家族4人は忙しそうだが、楽しそうに働いていた。
今日の営業が終わり、店内で休憩しているところに商人ギルドから手紙が届いた。
「あなた、誰からの手紙かしら?」
「いやっ違うぞエルマ、おっこれはダニエラさんからだ。なになに………」
その手紙には、グイドにさくらカフェとさくら牧場をオープンするから、至急誰か来て欲しいと言う内容だった。
「ダニエラさんが助けを求めている、こうしちゃおれん!私とリディアでグイドに行こう。エルマとナディア、後の事は任せたぞ!バイトを雇って構わんからな」
「分かったわあなた」
「おみせのことは任せて、お父さんもお姉ちゃんも頑張ってね」
こうしてニコデモとリディアは、ダニエラの待つグイドの街に向かったのだった。
* * * * *
王都の近くFランクの魔物の住む浅い森では孤児たちPTがウッピーと戦っていて、その様子をリタたちセイントガードが見守っていた。
「えいっ!えいっ!きゃっ!」
「とりゃ~!!」
孤児のゲッツやカナたちの必死な戦いにより、何とかウッピーに勝利する孤児院PT。
「やった~!」
「はぁ~怖かったぁ~」
「うん、みんなよくやったわ。あと戦いに集中するのも大事だけど周りへの警戒も怠らないようにね。他の魔物が現れるだけで怪我だけじゃ済まなくなるから。常に逃げる事も頭に入れておいてね」
「「「はいっ!!」」」
森の中で咲良とジャックに助けてもらってからリタたちは、より安全対策を心がけるようになったし心構えもしっかりしてきた。
* * * * *
王都レオーネの東側の海岸線では、パルミロたち崇高な盾が、武器を構えて集中したままじっとしていた。
斥候のドナートが意を決して走り出すと、砂の下からサンドウォームが飛び出してきた。
ギリギリで躱したドナートとPTメンバーが攻撃魔法を放つ。
「『ウインドカッター』!」
「『フリーズアロー』!」
「『ホーリーアロー』!」
「『ファイアーアロー』!」
ヒュン!ビシビシビシッ!
シュッ!シュパパパッ!
ヒュン!シュタタタッ!
ボウッ!ボフボフボフッ!
攻撃魔法を受けて苦しむサンドウォームにパルミロとドナートが剣で素早くとどめを刺し、討伐に成功していた。
Cランクの崇高な盾は、安定してサンドウォームを狩れるようになっていた。
「ふぅ~、ジャックほど正確に潜んでいる場所は分からないが、毎回サンドウォームの鼻先を走り抜けるのは緊張するな」
「なにビビってるのよ。ジャックくんは迷わず突っ込んでいったじゃない。勇気があってかっこ良かったなぁ」
「早くお姉さんの所に帰ってこないかしら」
「まだ諦めてないのか?ジャックにはさくらちゃんが居るだろ」
「なによ!確かにさくらちゃんは可愛いけど、大人の魅力で何とかしてみせるわよ!」
「まあまあ、とりあえず休憩しような」
まだまだクラリッサとサンドラのジャック熱は冷めなかった。
* * * * *
冒険者ギルドの副本部長の部屋で言い争いをするキアラ副本部長とゼロ。
「とても珍しい事なんだけど、さくらちゃんの調査報告に対して教皇様から感謝の手紙が届いたのよ…………私は報告を聞いてないけどどう言う事?教皇様にはさくらちゃんの秘密を話したの?」
「何がです?」
「だからさくらちゃんの秘密の事よ!」
「ああ、その事ですか」
「なんで私には話さないのに、教皇様には話したのかしら?」
「あ~、教皇様にも話すつもりは無かったんですが、女神さくら様への愛情を感じて気がついたら話してましたね」
「私だってさくらちゃんを愛してるわよっ!」
「ふん………女神さくら様をちゃん付けしてる時点でアウトですよ」
「ちょっとなによっ!副本部長の命令です!さくらちゃんの秘密を話しなさい!」
「…………いやです」
「いやじゃないわよっ!話しなさい!」
「……い・や・で・す!」
「話しなさい!」
「………………」
「話せ話せ話せ~~~!!」
「ふっ、大人げない……………もう満足ですか?」
「満足な訳ないでしょ!」
「……………」
「話すまで帰さないわよ」
「……………」
「目は離さないから諦めて話しなさい」
ガチャ、
「キアラ副本部長~、下にお客様がお見えです~」
「今はそれどころじゃないから今度にしてもらってって、あっ!!」
キアラは訪ねてきた受付嬢を一瞬見てしまった。
直ぐに視線を戻したがもうそこにゼロは居なかった。
「ぬあぁあ~~~~!!あんにゃろ~~!!」
受付嬢はそっとドアを閉めた。
* * * * *
場所は変わってガンドルフ帝国とアッシャムス魔国の国境付近。
魔族警戒依頼中のジャンとイザベラ司祭PT。
「前に魔族を撃退して以来、全然遭遇しなくなったな」
「グリーゼとか言う奴よね。 怖じ気づいたんじゃない?」
「はは、それは無いな。アッシャムス魔国に帰ってから何かあったかな」
「そういえばジャンて王都で話題の神楽の演奏者だったのね。舞台上で楽器を演奏してるのを見たわ。初めて聞く音楽だったけど神秘的な雰囲気に合っていてとても良かったわ」
「ああ、初めはだいぶ苦労したがな。でも神楽はとても良かっただろう、落ち着くし心も身体もすっきりして軽くなるもんな」
「ええ、分かるわ。さくらさんて素敵ね。会ってみたいわ」
「あれっ?お嬢ちゃんはイザベラ司祭様に会ったことがあるみたいだったぞ?あまり会いたそうじゃ無かったがな………」
「えっ?いつの間にか会ってた?でもってもう嫌われてる??」
「あっいや、嫌そうだったがはっきりとは言ってなかったぞ。あれっ、言ってたか?」
「まあ昔の私なら嫌われて当然ね。何年か前の私も含めこの世界の司祭なんて裏では何してるか分からないから。いつからか私変わったのよね。それからよ!出世競争には勝てなくなるわ、司祭なのに最前線に飛ばされるわでもう大変な事になったわ。まあ過去の自分を考えると自業自得なんだけどね。でもほっとしてると言うか、昔よりもなんだか心が幸せな気がするのよ。これ以上さくらさんに嫌われないように頑張るわ」
イザベラは晴れやかな微笑みを浮かべていた。
* * * * *
ロンバルディア教区の教皇の部屋で、クロエ教皇とモーリス国王が会っていた。
勿論、護衛のレオナルド・プラチドも扉の所に居た。
「モーリス国王、さくらさんの調査ありがとうね」
「それは何か良い報告があったと言う事ですかな?」
「ええ、他の方はどうか分からないけど、私にとっては喜ばしい報告だったわ」
「ほう、どの様な報告だったのでしょうお聞かせ願えますか?」
「そうねぇ…………私からは教えられないわ。調査した冒険者に聞いてちょうだい。彼はさくらさんをとても大切に思っているようですから、モーリス国王も彼に認められれば教えてくれるかもしれないわよ?」
「んっ?国王の私がその冒険者に認めてもらう必要があると?どう言う事でしょう。もしかして国王の私であっても教えてもらえない可能性があると言う事ですか?」
「ええ、最初は私にも教えるつもりは無かったようですから」
「なんとっ!それはまた命知らずな冒険者ですな」
「ジャンもジャックもそうだけど、さくらさんの周りには変わった人たちが集まってくるのかしらね」
「ふむ、いったい彼女に何があるんでしょうか………取り調べでもしてみるかな」
「モーリス国王、私もさくらさんを守ろうとする側になったから、私の前での発言には気をつけた方がよろしいわよ」
「あっ!取り調べなんて冗談ですよクロエ教皇様」
「そう、なら良かったわ」
笑顔だったが教皇の目は笑っていなかった。
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本作を読んで頂き有難う御座います。
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