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じゃあ行ってくるわね!


 ロンバルディア教区での神楽も終わり王都レオーネに戻った咲良は、次にヴェスパジアーナ共和国へ旅立つ前にやり残していたプリムラ孤児院の孤児たちへの冒険者教育を始めた。


 この世界では、魔法の才能がある者は貴族に成れる可能性もあるし良い仕事に就く事も出来る、そして冒険者としても活躍出来るのだ。

 しかし魔法の才能が無いと城や貴族家などで働く事が難しく、街で仕事を探すしかない。

 更に孤児院出身者は学校に通えてないので、街での仕事すら見つからず冒険者としてやっていく事も難しいのだ。

 したがって孤児院出身者たちは、スリや窃盗などの犯罪に手を染める者が多かった。


 孤児や孤児院出身者たちがFランクの魔物を狩れるようになれば、串焼き屋の食材を調達するのが仕事になるし、将来冒険者としても最低限やっていけるようになる。

 咲良が孤児院に行って院長先生に話しをすると、冒険者として育てるメンバーを集めてくれた。

 孤児で1番年長者のゲッツェとカナ、孤児院出身者で16才の少年二人の計4人だ。

 王都周りの狩り場はジャンとジャックが熟知していたので安全にFランクの魔物を狩る事が出来た。

 咲良は一ヶ月かけてPTでの戦い方を教えてFランクの魔物を狩れるようにした。

 PTの4人はLV8まで上がり、いっぱしの冒険者の面構えになっていた。


 咲良は装備を孤児院に寄付して、プリムラ孤児院の共用の装備として使ってもらった。


 因みに、PTの16才の少年1人に対し何故かふわちゃんが敵意むき出しなので少年に話しを聞いてみると、咲良のポシェットを奪おうとしてふわちゃんに撃退された少年だった。

 少年はスリをやって何が悪いんだよ!と開き直っていたが、冒険者として鍛えられていくうちに自分の悪いところを自覚するようになっていった。




  *  *  *  *  *




 チーズ屋さくらカフェは相変わらず大盛況だった。

 みんなチーズを作れるようになっていてお店のメニューも増えていた。




  *  *  *  *  *




 咲良は11才になった。


 姉探しの為ヴェスパジアーナ共和国へ出発する日がやって来た。


 ダニエラのお陰で格安で買った馬車に乗りこむ咲良とダニエラ、御者はジャックだ。


「ジャック、お嬢ちゃんを頼むぞ!」


「うん分かったよお父さん」


 ジャンは定期的にガンドルフ帝国の魔族警戒に行かねばならず、咲良たちと一緒には行けなかった。


「依頼の合間に顔を出すようにするからどこに居るか連絡を寄こすんだぞ」


「ジャン、魔族相手にまた無茶をしちゃダメだからね」


「う~ん、もう少し強くなれば勝てそうな気がするんだよな」


 無茶をしそうなジャンの首には咲良が新しく作った御守りがぶら下がっていた。


「独りで戦おうとしないでジャックがもっと強くなるのを待ってもいいんじゃない?咲良も手伝うし、3人で力を合わせて戦いましょうよ」


「あぁ………あの魔族に遭遇しなければな」


 チャンスがあれば仇を討ちたいジャンの思いはみんな分かっていた。


「まあいいわ。じゃあ行ってくるわね」


 咲良たちを乗せた馬車はゆっくりと王都レオーネを出発していった。




  *  *  *  *  *




 のどかな田園風景をゆっくりと進む馬車の中で咲良は考え事をしていた。


 咲良はモンテラーゴの牢獄内ではあるが転移魔法陣を設置してある。

 一人で移動するだけならすぐなのだが、何も知らないダニエラが一緒だと利用できない。


(ダニエラさんに秘密を話したとしても牢獄内のは小さいから馬車ごとテレポートするのは無理ね。大きい魔法陣は魔物の森と………雪山の上の方に設置したのくらいか。さくらカフェの地下は大きいけどらせん階段があるから無理ね。今後楽する為には色々な場所に大きな魔法陣の設置を考えておかないと……)


「咲良様、何か悩み事ですか」


 咲良が難しい顔をしていたのだろう、ダニエラが優しく声をかけてきた。


「えっとねぇ、馬車で揺られての移動って時間かかるし大変だな~と思って」


「馬車の移動が大変?そうですか………。移動手段と致しましては、徒歩か馬車が一般的です。徒歩ですとあまり荷物も持てませんので馬車が最も良い移動手段かと思います。高位の風属性魔法の使い手になりますと空を飛んで移動する事も出来ますが、世界に数える程しか居りません。もっとも魔力の消費が激しいので長距離の移動は無理のようですし魔力が尽きたら落ちて死んでしまいますから実際に飛んで移動する姿を見かける事は殆ど無いですね」


(あ~それ使ってました)


「他には、古代遺跡で発見された魔方陣による転移魔法がございます。緊急時に教皇様や王族の方々が膨大な魔力を消費して使われているようです」


(膨大な魔力?…………実家に帰るのに気軽に使ってごめんなさい。でもいろんな所に転移魔方陣があるのなら使わせてもらえば助かるかも)


「…………その古代遺跡で発見された魔方陣っていっぱいあるの?」


「いえ、とても稀少で、世界に3つしか発見されていません。そして魔方陣の発見された場所にクリストフィオーレ皇国・ヴェスパジアーナ共和国・ガンドルフ帝国がそれぞれ建設されたようなものです」


「おおっ!それを使えば国同士の移動が楽に出来るって事じゃない!今から戻ってモーリス国王様に頼めば使わせてくれるかしら?」


「それはどうでしょう………私も確かな事は存じあげないのですが膨大な魔力に加えて、なんでも移動先の魔方陣を指定するのが大変難しいらしいです。現在それが出来る魔法使いは一人しか居ないようですし、高齢なのでもう無理だと言う噂も聞きます」


「ふぅ~ん、その魔方陣を誰かがこっそり使ったりしないの?」


(バレなきゃ使いたいんだけどなぁ~)


「どの魔方陣もそれぞれの国の軍に守られているうえに、魔方陣が起動する魔力で魔法使いなら分かるそうです」


「そっかぁ残念。『フライ』で飛ぶよりも『テレポート』の方が楽なのよね~」


「『フライ』…………『テレポート』?………咲良様は魔法にお詳しいのですか?」


「えっ?あれっ?今ダニエラさんに教えてもらったんじゃなかった?」


「いえ、『フライ』や『テレポート』という言葉は使っておりません。咲良様が仰った『フライ』が空を飛ぶ魔法の詠唱最後の言葉なのは高位魔法使いの方から聞いた記憶はありますが、『テレポート』は初めて聞きました。話しの流れから想像しますともしかして転移魔法の詠唱最後の言葉なのではないでしょうか?」


(むぐぅ………流石ダニエラさん)


「えっと…………何かの本で読んだんだったかな…………いや、誰かに聞いたような気もするし」


 ダニエラは咲良をジッと見つめた後、フッと笑った。


「咲良様がそう仰るのならきっとそうなのでしょう。詮索などして申し訳ありませんでした」


 咲良は今後ダニエラが一緒だと秘密がバレるのは時間の問題だなと思った、


(ダニエラさん信頼出来るし口も堅そうだから、今後少しづつ話していってもいいのかな)



 咲良たちの乗る馬車は、田園風景の広がる街道をゆっくりと進んで行った。




 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 本作を読んで頂き有難う御座います。


   m(¬ ¬)m    m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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