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クロエ・フォンターナ・ロンバルディア!☆1


 クリストフィオーレ皇国王都の北にそびえる7.000m級のラクパ山。

 その麓には、ロンバルディア教会の街がある。

 この街はロンバルディア教会職員や関係者により作られた1つの独立した国家、ロンバルディア教区である。


 ロンバルディア教創始者ロンバルディア・フォンターナが、この山の上で修行をしてロンバルディア教を興したいわば聖地である。


 山の麓に鎮座するロンバルディア教総本部教会から扇状に街が広がっている。


 ロンバルディア教区は1つの国家であったが軍を持たなかった為、クリストフィオーレ皇国が建国され教皇の護衛と街の警備全てを担った。


 ロンバルディア教により聖属性の回復魔法は格段に成長して、ロンバルディア教も聖属性の回復魔法もこの世界に於いて欠かせないものとなった。


 ロンバルディア教の恩恵を受けてクリストフィオーレ皇国は大陸最大の国家に成長した。


 ロンバルディア教区は王都レオーネと同等の堅牢な防壁に守られ、皇国軍が常時駐留し、皇国軍最高戦力の1人、レオナルド・プラチドが教皇の護衛をしている。




  *  *  *  *  *



 王城での神楽から一ヶ月。


 やっとロンバルディア教総本部教会での咲良の神楽公演が実現した。


 ロンバルディア教総本部教会大聖堂は、手の込んだ彫刻や細かな装飾が施された真っ白な外壁に囲まれ、神々しい程の存在感があった。

 大聖堂内の高い天井には神々を讃える壁画が描かれ、柱や壁には煌びやかな装飾が施され、聖堂内は贅の限りが尽くされていた。


 大聖堂内の長椅子には、ロンバルディア教区に住んで居る10才前後の子供たちが大勢座っていた。


 祭壇前で優雅に舞う咲良。


 普段は静かな大聖堂内にはジャンとジャックによる演奏が流れ、観客全員が咲良の舞いに魅了されていた。


 クロエ教皇は祭壇の横に座って、咲良を感慨深げに見つめていた。



(そうだったの…………さくらさんが私の………)




  *  *  *  *  *




 ーー数日前ーー


 教皇である私の元に、モーリス国王に頼んでいたさくらさんについての報告があった。


 モーリス国王は冒険者ギルドに極秘に依頼したらしく、セヴィーロと言う名のひょろっとした冒険者が報告に来た。

 あまり存在感も無く頼りない感じだった。


「クロエ教皇様、私が調べた限りですと、ラダック村に小花咲良と言う名前の子供は居りませんでした。近い年齢の子供は2人居て、1人はカンツォと言う村長の孫で、もう1人は………アリーチェと言う名の女の子でした」


 頼りないこの者を信じるなら、さくらさんはラダック村の出身では無い事になる。

 さくらさんを信じたいが、モーリス国王の命を受けたこの者を信じない訳にもいかない。

 私はさくらさんが嘘をついた事に少なからずショックを受けた。


 落胆している私を見たこの者は、思うところがあったのか暫くかんがえてから変な質問をしてきた。


「教皇様は、何故さくら様をお調べになるのですか?」


 この者は何を言いだすんだ?さくら様?子供のさくらさんを様付けで呼ぶ?どう言う事なのかしら?


 私は不審に思いながらも素直にさくらさんが気になるからと答えた。


「そうですか、さくら様が気になりますか………教皇様はさくら様の敵ですか味方ですか?」


 またこの者は変な質問をしてきた。

 敵か味方かなんてその時々によって違うが、とりあえずさくらさんは可愛いし何故か放っておけないので味方だと答えると、突然この者のテンションが上がり始めた。


「そうですか味方ですか、可愛いですか!うんうんっ、僕もさくら様の味方ですよ!可愛くて優しいから当然ですよね!女神のような方なんですから!そうでしたか、教皇様は僕と一緒だったんですね!そう言う事でしたら女神さくら様の秘密をお教えしてもいいですよ?」


 私はさくらさんの事を女神さくら様と呼び始めたこの者にちょっと引いたが、そこで初めてこの者がさくらさんの秘密を教皇の私にすら隠そうとしていたのだと気がついた。

 存在感が無く頼りない感じだったが、芯のしっかりした者だった。


 私の事をさくらさんを崇拝する同類だと勘違いしたのはどうかと思うが、セヴィーロはさくらさんの秘密を話し始めた。


「今回僕はラダック村に行って確認して来ましたが、女神さくら様はラダック村ではアリーチェと言う名だったのです」


 さくらさんは子供の頃は名前が違った?

 て事は、出身地はラダック村で間違っていないのね、良かった、さくらさんは私に嘘をついていなかった。


 私はホッとした。


 冒険者や商人のギルドカードでは魔法の力で偽名を使う事は出来ないが、田舎の村で偽名を名のる事は別に大したことではない。

 きっと親に事情があって子供に偽名を名のらせて居たのだろう。

 訳ありの者が田舎で暮らすのはよくある事だ。


 その後もセヴィーロはさくらさんの事を色々と話してくれた。


「8才でボスコの魔法科に通って2年で卒業して、このはなさくらとしての活動を始めたそうです」


 魔法科と聞いて私は混乱した。

 魔法科に通ったと言う事は魔法の才能があると言う事だ、しかしさくらさんに魔力はなかった筈だ。


 2年で魔法科を卒業?


 私は普通科の間違いであろうとセヴィーロに聞き返したら、ゼロは激怒した。

 

「失礼なっ!女神さくら様は魔法科を2年で卒業した天才なのです!女神さくら様を侮辱するような奴になどもう話すことなど無い!」


 教皇の私に今の発言は極刑に価するのだが、さくらさんの為に怒るセヴィーロに悪い気はしなかった。


 しかし魔法科を2年で卒業は無理がある。

 きっと普通科を2年で卒業したのだろう、それなら魔力が無いのも納得できる。


 少しするとセヴィーロは我に返ったのか、青い顔をして平謝りだった。

 今までの私だったら許す事はなかったが、さくらさんの為に怒ったセヴィーロを気にしなくて良いからと許していた。


 私はもう聞く事も無いと判断して下がらせようとしたが、青い顔のセヴィーロは知っている事全てを細かく話し始めた。

 もう許したのだからすぐに下がれよとイライラし始めたが、さくらさんの両親の名前を聞いて私は息が止まる程驚いた。


 母親の名はエリス、父親の名はルカと言った。



 私はその2人の名を知っている。






 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 本作を読んで頂き有難う御座います。


   m(¬ ¬)m    m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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