神楽も終わって!
王城での神楽も無事に終わり、咲良たちは宿屋フレンドの部屋で話しをしていた。
「色々と危なかったけど、何とかなったね」
「ああ、結構ヒヤヒヤだったな」
「僕はレオナルド様と手合わせ出来て嬉しかったよ。自分の未熟さもよく分かったしね」
「なんだ、ジャックはそんなにレオナルドが好きだったのか?」
「なに言ってるのお父さん!好きとかじゃなくてレオナルド様を尊敬してるんだよ」
「おおそっか、俺も手合わせをして楽しかったぞ。俺だって凄い奴だと思ってるし尊敬だってしてるぞ」
「当然でしょ。僕がレオナルド様を尊敬するようになったのは、モンテラーゴで騎士団長や騎士の方たちに剣と盾の指南を受けるようになってからなんだ。それまでは名前は知っていたけどどれくらい凄いか分かってなかった。騎士の人たちと鍛錬していくうちにだんだんとその凄さが分かって、今回で更に雲の上の存在になったよ」
「まあ目指す目標があるのはいいことだ。強くなるモチベーションになるから大事にした方がいいぞ。俺が先に勝っちまうかもしれねえがな、がはっはっはっ」
「お父さんっ!」
ジャックはレオナルドと互角に戦っていたジャンを睨んでいた。
レオナルドは雲の上の存在だが、父のジャンはどんなに凄くても身近すぎて憧れの存在にはならなかった。
「お嬢ちゃんはクロエ教皇様やモーリス国王様の公認をもらったようなもんだから、何処に行っても公演が出来るだろうな。こりゃあ凄い事だぞ」
「そうなの?」
「ああそうさ、あの厳しい教皇様が褒めるとか、何かの許可を出すとか聞いたことないからな」
「優しそうだったけど?」
「うんにゃ、俺は怖い顔しか見たこと無かったから、別人かと思ったぜ。教皇の衣装と王冠が無かったら分からなかったかもしれんな」
「ええ~っ、優しいお婆ちゃんて感じだったじゃない、教皇様に失礼よ」
「まあなんにせよ教皇様の気が変わらないうちに色々とやっといた方がいいかもな」
「ふぅ~ん、咲良も出来るなら早めにやりたいからいいけど」
咲良は今後の計画を話し合う為に、商人ギルドのダニエラの元を訪ねる事にした。
* * * * *
商人ギルドの個室でダニエラと向かい合って座る咲良。
王城での神楽の結果を報告して、今後の事を相談した。
「クロエ教皇様のお墨付きなんて素晴らしすぎます!流石は咲良様です!」
ダニエラは興奮していた。
「教皇様はきっと機嫌が良かったのよ。それでこれからの事なんだけど、1番の目的は咲良と同世代の子供たち全てに神楽を見てもらう事なの」
「今まで観客からお金を取りませんでしたが、公演での収入目的ではなく観てもらうだけなんですね?」
「うん、お金は必要ないわ」
「分かりました。それと王都は終了と言う事でよろしいでしょうか?」
「うん、もう十分確認できたからいいわ」
「確認??では今後ですが子供たちに観てもらう目的からすると、次は王都の北にあるロンバルディア教総本部教会での公演がよろしいかと思います。あそこには教会職員の住む街があり、学校もあります」
「おおっそんなとこにも学校があったのね。総本部教会で神楽かぁ、緊張しそうね。子供たちが居るならやりたいけどそんな凄そうな所で出来るの?」
「教皇様のお墨付きがあるのですから、なんの問題も無いと思いますよ」
「おおそっか、ならやっちゃうか」
「はい。そしてその次は、東のヴェスパジアーナ共和国に行くか、西のガンドルフ帝国に行くかになるのですが、どちらに致しましょうか?」
「他の国かぁ。どっちでもいいと思うけど、何か違いはあるの?」
「はい、ガンドルフ帝国は強さにしか興味が無い国ですので、神楽に興味を示すかどうか分かりません。ヴェスパジアーナ共和国は商人の国ですので、神楽の公演が儲かると分かればみんな飛びつくでしょう。無料でやると言っても信じてもらえないかもしれませんね」
「脳筋の国と、金儲けの国かぁ」
(今1番気になっているのは、ジャンに聞いた魔族の女の子なんだけど)
「魔族の国で神楽をやる事は出来るの?」
「えっ?!魔族の国ですか?流石にアッシャムス魔国は無理だと思います。入国する事すら難しいですし見つかったら殺されてしまいます」
「難しいのかぁ。まあしょうがない、とりあえず一番歓迎されそうなヴェスパジアーナ共和国にするわ」
「分かりました。ではヴェスパジアーナ共和国へ行く途中の街も予定に入れておきましょう」
「うん、ありがとう」
「では、さくら商会の店舗展開もございますし、行く先々での細かな手配もその都度御相談致しますね」
「んっ?店舗の展開?その都度相談??」
「細かい点は私が行いますのでご心配に及びません。咲良様はおおまかな計画を仰って頂くだけで大丈夫です」
「ちょっと待って、ダニエラさんも一緒に来てくれるって事?」
「勿論でございます。商人ギルドとしても、将来の大きな利益になりますし、私は咲良様の専属スタッフです」
「かなり期待されてるみたいだけど、大した事はしてないから何だか悪い気がするわ」
「いえ、すでにチーズ屋さくらカフェの大繁盛に加え、ボスコやモンテラーゴの孤児院で展開している串焼きさくら亭も人気です。これは始まりに過ぎませんので、咲良商会としての店舗数も収益もどんどん伸びていくでしょう」
「孤児院のさくら亭も咲良商会に入ってるの?」
「はい、孤児院側の希望で咲良商会に入って居ります」
「孤児院は咲良商会の収益にならないと思うけど……」
「収入としてはありませんが、登録店舗数が増えますと商会としてのランクが上がりますし、多くの恩恵があります」
「孤児院が困ってないならいいけど………」
「勿論です。孤児院から収益は頂いてませんのでご安心を。咲良商会への登録は孤児院の申し出ですから」
「分かったわ。ダニエラさんが一緒なのは凄く助かるわ、これからもお世話になります」
「こちらこそ、誠心誠意尽力して参りたいと存じます」
咲良とダニエラはお互いお辞儀をして微笑んだ。
「では咲良様、先ずはロンバルディア教総本部教会での神楽公演の話しを進めて参りますね」
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