ゼロの献身☆2
咲良と別れたセヴィーロは冒険者ギルド前に来ていた。
(さて、女神さくら様の事をどうキアラさんに報告しようか。いやまてよ、報告する必要があるのか?報告したら女神さくら様が困るのでは?うん、きっとそうだ!女神さくら様が秘密になさっているのだから僕だって秘密にするぞ!僕が女神さくら様をお守りしなければ!)
二人の秘密と思っているセヴィーロは、決意を新たにするのだった。
セヴィーロが色々考えながら冒険者ギルド前をウロウロしていると、緑の髪の冒険者とぶつかって転んでしまった。
「んっ何だっ?俺ぶつかったのか?」
咲良が王都に来たばかりの時に冒険者ギルドで酔っぱらって絡んできた若い冒険者だ。
イヴァノの前に倒れているセヴィーロを見るリタ。
「ん~どう見てもイヴァノがぶつかって倒した状況よね」
すぐにセヴィーロを助け起こすグレーの長い髪のリタ。
「うちのポンコツがぶつかったみたいでごめんなさいね。大丈夫?怪我はない?」
「何だよポンコツって、確かにぶつかった感覚はあるけど………本当にいた?」
「はいはい、もう言い訳はいいから」
「あっ、何処も怪我はありませんので大丈夫です。ボーッとしてた僕が悪いんです。すいませんでした」
「だろ~~!リタにもっと言ってやってくれよ」
「王都にはこう言うポンコツがいっぱい居るから気をつけるのよ、じゃあね」
「ポンコツ、ポンコツ言うなよ」
「怪我をさせちゃったら慰謝料だってバカにならないのよ、気をつけてよね」
リタとイヴァノは言い合いながら冒険者ギルドに入っていった。
セヴィーロは、キアラになんて報告するか考えながら冒険者ギルドに入っていった。
* * * * *
ギルド内の別室でキアラ副本部長と対面しているセヴィーロ。
期待した表情でセヴィーロを見つめるキアラ。
「ゼロお疲れ様。で調べてみた結果はどうだったの?」
「…………えっと~」
「うん、うん」
「…………そうだな~」
「うん」
「……………」
「うん?」
「………………」
「なによ、報告に来たんでしょ?」
「………………」
「どうだったのよ!調べて来たんでしょ?」
「………………キアラさんは彼女をどうして調べたいの?」
セヴィーロは咲良の事を女神さくら様と呼んでしまいそうなので、今は彼女と呼ぶことにした。
「はあっ?何よ急に………」
キアラの想像している真実はこうだ。
咲良はシドとシリルとリートと言う名の護衛がいるお姫様。
護衛たちは精霊と契約する為の生活を行っていて、常に一緒に居る訳では無い。
咲良が本当は何処かのお姫様だと知ったジャンとジャックが、国際問題にならないように常に側で護衛をしてる。
そして、あり得ないが10才の咲良が実はオークを瞬殺する程強いとか。
(まぁどれも信じられない内容だわ。どれか一つでも真実があるのか早く知りたいわ。ゼロの調べた結果はどうだったのかしら)
聞き返されるとは思っていなかったキアラは、なんて答えようか悩んでいた。
「どうしてって…………どうしてかしらね。それより調べてどうだったの?」
キアラは誤魔化した。
「………どうして調べたいの?」
ダメだった。
「…………さあ、何となくよ。でどうだったの?」
「………どうして何となくなの?」
セヴィーロは秘密を報告したくなくて頑張っていた。
言いたくないなら何も無かったでいいと思うのだが、セヴィーロはそこには思い至らなかった。
「もうっ!…………さくらちゃんが可愛いからよ!」
キアラは何も言い訳を考えつかなかった。
「可愛いからか………納得です。キアラさんもそう思うんだね」
セヴィーロが可愛いで納得した事に呆気にとられながらも、可愛いに乗っかるキアラ。
「えっと、そうよ、可愛いからよ。さくらちゃんとっても可愛いもの」
キアラは可愛いばかり言っている事に恥ずかしさを感じていた。
「うんうんそうだよね、とっても可愛いよね!分かるわ~!僕もそう思うよ。いやいや可愛いなんてもんじゃない、彼女は女神だよ女神。女神さくら様だよ。ん~~彼女にピッタリの響きだね。美しくて優しさも兼ね備えている女神さくら様。キアラさんも女神さくら様に目を付けるなんて流石だね」
寡黙だったセヴィーロが、いきなり饒舌に話す姿を見て、キアラはちょっと引いていた。
(あのゼロがこんなに話すなんて………)
「でもねキアラさん、もう僕の女神さくら様だから、秘密も僕と女神さくら様二人の秘密なんだ。キアラさんだとしても教えられないよ」
咲良を可愛いと言われて調子に乗ってしまったセヴィーロ。
「ほうほう!やっぱり秘密があるのね!どんな秘密だったの?」
セヴィーロは秘密を隠すつもりだったが、速攻でバレてしまった。
「えっ…………秘密?………無いよ?」
セヴィーロの目は泳いでいた。
「いやいや、二人の秘密って言ったじゃない!いったい何が二人の秘密なの?」
「………………言ってないし秘密なんて無い」
「ちょっとゼロッ!何があったのよっ?」
「………………………なにも無い」
「言ったじゃない!」
「………………言ってない」
「二人の秘密って何よっ!」
「………………何も無い」
「ちょっとちょっと、じゃあ何が無かったのよっ?」
「………………………………何も」
「……………………」
「……………………」
キアラは食い下がったのだがもう訳が分からなくなっていた。
そして二人とも何も言わなくなっていた。
キアラは天を仰いでため息をついく。
ハッ!としてキアラが視線を戻すと、もうそこにセヴィーロは居なかった。
「ああ~~っ!また逃げた~~っ!!」
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本作を読んで頂き有難う御座います。
m(_ _)m
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