イザベラ司祭の憂鬱!☆2
ガンドルフ帝国での私たちの任務は国境警戒だった。
何となく聞いてはいたが、やはり魔族の動きが怪しくなってきているようだ。
魔族は生まれ持った身体能力が全ての種族の中で1番高く、同じレベルなら魔族が最も強いのだ。
私たちが魔族に勝つためには数で対抗するしか無い。
勿論魔族も鍛えなければ強くはならないし、魔法の才能が有る者と無い者もいる。
PTに司祭の私が居るとしても、魔族との戦闘となると犠牲者が出るかもしれなかった。
今回、私たちのPTにはAランク冒険者のジャンが加わってくれる事になったが、魔族との戦闘となると私たちが何処まで役に立てるのか分からないし、足手まといになる可能性が高かった。
私は魔族に遭遇しない事を願った。
私がそんな事を願ったのがいけなかったのか、森の中で魔族に遭遇してしまった。
それも3人、いや子供を入れたら4人か。
魔族は角の数による強さのランクがある。
魔族の7割を占める角無しは、魔法はつかえないが魔族特有の身体の丈夫さと身体能力の高さがあるので、鍛えればDランク冒険者程の強さになれる。
角1本は魔法の才能が加わり、Cランク程の強さだ。
角2本は魔力量も格段に多くなり、身体の丈夫さと身体能力も更に高くなるのでAランク以上の強さとなる。
角2本に対抗するには、AランクのPTかSランク冒険者で相手をするしかない。
角2本は非常に数が少なく、魔王の側近や幹部くらいしか居ないので、前戦で見かけるのは戦争の時くらいだ。
最後に角3本だが、千年に1人生まれると言うSランクの魔王だけだ。
魔王は災害級の強さだ。
森の中で魔族が数体居ると分かった時点で私はかなり緊張した。
すぐに魔族1体に道を塞がれ、逃げる事すら難しくなってしまった。
魔族はかなり強そうだったが、ジャンは角1本の魔族2体をあっさり倒してしまった。
凄い、これがAランク剛腕のジャンか!
しかし、仲間の魔族が倒されるのを余裕の笑みを浮かべながらみていた角2本の魔族が残っていた。
強さの桁が違うのが私にすら分かった。
私はもうダメだと諦めた。
足がすくみ逃げる事すら出来なかった。
しかし驚いた事にジャンはその魔族に向かっていった。
ジャンはこの魔族を知っている様だった。
剣速が速くて私では目で追えないレベルの戦いが始まった。
信じられない事にジャンは互角に戦っていた。
グリーゼと名のる魔族は最初は手加減していた様で徐々にジャンは押されていった。
そしてグリーゼが勝つかと思われた時、ジャンの捨て身の攻撃により形勢は逆転した。
ジャンは左腕を失い傷だらけになったが、グリーゼに勝てそうだった。
ジャンがグリーゼにトドメを刺そうとした時、いつの間にか現れた魔族の子供の魔法?により吹き飛ばされ、ジャンはグリーゼにトドメを刺せなかった。
瀕死の身体のジャンは、倒れたまま立つことすら出来なかった。
傷を負いながらも立ち上がったグリーゼが、今度はジャンにトドメを刺そうと近づいてきた。
勝てないと分かってはいるが私たちはグリーゼにむかっていった。
その時、信じられない事が起こった。
腕を失い瀕死で倒れているジャンの身体が輝きだしたのだ。
戦闘中だと言うのに驚きのあまりジャンから目を離せなかった。
光が消えた後のジャンの身体は、失った筈の左腕も数々の傷も元通りに治っていた。
何が起こった!?
見てた限りは魔法に見えたが、こんな魔法は見たことが無い。
ジャンにトドメを刺そうと近づいてきていたグリーゼも驚いて立ち止まっていた。
ジャンはゆっくりと起き上がり大剣を担いでグリーゼと向き合った。
グリーゼは撤退していった。
あの光が何だったのか後でジャンに聞いてみたら、俺にも分からないんだ、でも身体が光って怪我が治った事は秘密にして欲しいと言われた。
はあっ?俺にも分からないとか、惚けすぎでしょ!
何故分からないのに秘密にするのよ?
まぁ、ジャンが居なければ私たちは生きていなかったから、お願いされれば秘密にするけれどもだ!
身体が光って失っていた腕をも回復した後に、ジャンは驚いた様子もなく起き上がってグリーゼと戦おうとしてたでしょうが!
昔の私だったら間違いなくこの秘密を利用してたわ。
兎も角、みんな無事で良かった。
ジャンは王都に居るって言ってたわね、今度メンバーみんなで会いに行ってみるかな。
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