咲良の疑問!
宿屋フレンドの部屋で、ジャンが極秘依頼で魔族と戦った時の話しが終わった。
「とまあ、こんな感じだったよ、で次に来たPTに交代して一ヶ月の休みって訳だ」
「いやいやこんな感じって、無茶しすぎよ!死ぬとこだったじゃない!」
「そりゃあジーナの仇が目の前に現れたんだから無茶もするさ」
「………まぁ無事に帰って来たからいいけど。次の御守りが出来るまでは無茶しないでね」
「ありがとうなお嬢ちゃん」
咲良はため息をつきながらも、優しく微笑んでいた。
咲良は思い出したように、話しの中で引っかかっていた事を質問する。
「ところでさ、ジャンと一緒だったイザベラ司祭様ってさぁ………長い黒髪の?」
「イザベラ司祭様?ああ黒髪だ、よく分かったな、聖職者専用の赤白リボンで1つに束ねてたぞ」
「ふぅ~ん………」
咲良は少し考えてからまた質問する。
「今は45才くらいかしら」
「年齢は聞かなかったが、見た目からするとそれくらいだったかもな、なんだ知り合いか?」
「知り合いって訳じゃないけど、見たことがある程度よ」
「そっか、司祭なのに傲慢な所もなくていい感じの人だったぞ」
「あれっ?そんな筈はないんだけど……」
(PTメンバーも同じような名前だったけど、違う人なのかな)
「王都の教会に居るみたいだから、会いに行ってみればいいじゃないか」
「えっ、会いたい訳じゃないから大丈夫よ」
(王都の教会に勤めてるのか。違う人だったにせよ会わないように気をつけないと)
「知ってる人に訪ねて来られてもイザベラ司祭様は気まずいかもな」
「なんで気まずいの?」
「それはだな、司祭になるのは凄い事でそれが王都の教会の司祭となればエリート中のエリートなんだよ。イザベラ司祭様が言うには、私は司祭の落ちこぼれだから命の危険のある外回りの仕事しかさせて貰えないのよだとさ。俺には良い司祭様に見えたが教会内では色々とあるみたいだな」
「ふぅ~ん、落ちこぼれね……」
(なんか訳ありなのか?益々会う訳には行かないわね)
咲良は他にも気になっていた事を質問した。
「あとさ、仇の魔族の名前なんだけど」
「ああ、グリーゼって奴だ」
「そのグリーゼって魔族は、ちっちゃい角が2本生えた少年?」
咲良はモンテラーゴの牢獄で助けた少年を思い出していた、その魔族の少年もグリーゼと名のっていたからだ。
「いや、立派な2本の角が生えた屈強な大人の男だ」
「グリーゼと言う名前はよくあるの?」
「あ~、魔族としてだと無い筈だな。魔族は他の種族と違って同じ名前を名のったりしないらしいんだ。子供は親が死ぬか親より強くなったら親の名を引き継いで名のるらしいぞ」
「ふぅ~ん、でもそれだと親の名前を貰うまではなんて名乗ってるの?」
「魔族にとっては名前があるのが一人前の証らしくてな、それまではジュニアとか番号とかで呼ばれてるらしいぞ。まぁ帝国にある魔族に関する本を読んだだけだから、本当のところは分からんがな」
「へぇ~、一人前じゃないと名前は無いんだ」
(モンテラーゴで会った魔族の少年はまだ名前が無かったって事なの?)
咲良は本当の事を言ってもらえなかった事に、寂しさを感じた。
ジャックは咲良が牢獄で会った魔族の事を気にしているんだと分かった。
(アイツは一人前に見て欲しくて、さくらにグリーゼって名のったんだろうな。ジュニアとか番号じゃ恥ずかしいもんな………フッ、ガキだな)
ジャックは優越感に浸っていた。
「最後に1つ聞きたいんだけど、戦いの最後にジャンとグリーゼが吹き飛ばされた黒い石みたいなのって何だったの?」
「何だろうな、魔法だと思うが見たことないんだよな。一切魔力を感じなかったから魔法じゃないかもしれないが、魔法以外にあんな事出来る訳ないしな………さっぱり分からん」
「魔法とは言い切れないのね。それをやったのは本当に魔族の子供だったの?」
「俺はしっかりとは見てないが、魔族と一緒に居たんだから魔族だろう。イザベラたちに聞いたが女の子だったそうだ」
「咲良と同じ10才くらいだった?」
「ん~魔族の歳は分からんが、背丈はそう変わらない感じだったな」
「そう………魔族の女の子」
咲良は難しい顔をして悩んだ。
魔法じゃないとしたら、咲良は黒い石みたいな物に心当たりがあった。
もの凄い勢いで吹き飛ばすとか、前の世界にあった爆弾なら可能だ。
(環境は前の世界に似ているから材料は揃えられると思うけど、知識はこの世界には無い筈だ)
咲良は呟く。
「まさかね、柚香お姉ちゃん………」
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