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イザベラ司祭☆4


 リビングのテーブルに、アリーチェ家族3人と向かい合って座っているイザベラ。


「王都のロンバルディア教会から来ました。司祭のイザベラです。率直に申し上げます。アリーチェちゃんを、私の養子にしに来ました」


 エリスは様子を伺いつつ話しをする。


「アリーチェを養子にですか?何故アリーチェなんでしょうか?」


 イザベラは、司祭がいきなり来て子供を養子にと言われたのに冷静に対応するエリスに少しイラッとした、


(何この女、もっと喜ぶか狼狽うろたえるかすると思ったのに………)


「アリーチェちゃんに道で会って、可愛くてひと目惚れしてしまったからですわ」


 いい加減な言い訳に呆れるエリス。

 予想では魔力の事を言ってくると思っていたが、何も言わないので、アリーチェに魔力が無い前提で話しを進めるエリス。


「魔法の才能があるかも分からない子供を、養子にされるのは考え直された方が良いかと思いますが………」


 苦笑いのイザベラ


(フンッ、田舎女がっ!司祭に堂々と意見するなんて不敬罪で死にたいのかしら。まあ言ってる事は普通なら正しいけど、アリーチェちゃんには5才でもう魔力が有るのよ………あっお金か!この田舎女はお金が欲しいのか!)


「お金は相場の倍払うわ。アリーチェちゃんなら司祭の私が幸せにするから大丈夫よ」


「大丈夫ではありません。魔法の才能が無いと分かったら、アリーチェを放逐なさるでしょう。そうなったらアリーチェがどうなるか分かりませんからお断り致します。ずっと私のそばで育てます」


 護衛を3人連れて乗り込んできたイザベラに、エリスははっきりと断った。


 ルカとアリーチェはびっくりしていた。

 はっきり断ったら何をしてくるか分からないと言っていたエリスが、はっきり断ったのだ。


 少し怒り気味のイザベラ。


(ふざけるなよ、この田舎女!こっちが下手に出てるからって、司祭の申し出を断るとかあり得ないわ!アリーチェちゃんがこの場に居なかったら不敬罪で命が無いのに)


「可愛いアリーチェちゃんに、放逐なんてそんな事しないわ。この村で暮らすよりも幸せになれるから安心しなさい。さあ養子契約をするわよ」


 イザベラは魔法契約用の羊皮紙を“バン”と勢いよく机の上に出した。

 契約違反があった時に、魔法によって罰が与えられる契約方法である。

 養子契約の罰は、養子にした側には特に無く、元々の親が子供を取り戻しに来たら命を落とすという一方的なものなのだ。


 エリスはもう一度言う。


「お断り致します」


(イザベラ司祭はなぜ魔力があるのを知っているのに言わないのだろう………平民の子供に魔力があれば、養子に出すのは喜ばしい事だから、普通なら養子契約もスムーズに進むと思うんだけど。まぁ魔力があると言って来ても断るけど……)


 だんだん我慢出来なくなってきたイザベラ。


「なんでよっ?アリーチェちゃんは裕福で幸せな生活が待っているのよ、断る理由なんてない筈だわ、むしろ喜んでいい筈よ」


「アリーチェが望んでませんので」


「アリーチェちゃんが望めばいいのね。ではアリーチェちゃんと2人だけで話しをするわ」


「2人きりはダメです。口は出しませんからここのままお話し下さい」


 イザベラは怒りをかなり我慢していた。


(司祭の私を相手に忌々(いまいま)しい………田舎女のくせに綺麗なのもイライラするわ)


「分かったわ。ではアリーチェちゃん、お姉ちゃんの子になって王都で一緒に暮らさない?オシャレもいっぱい出来るし食べ物も美味しいのよ、とっても楽しく暮らせるわよ」


 アリーチェは迷わず答えた。


「エリスママのご飯美味しいし、アリーチェはママの側がいい、だから何処にも行かないよ」


「そうよねママの側はいいわよね。でもね、アリーチェちゃんがお姉ちゃんの所に来ると、お姉ちゃんはママとパパにいっぱいお礼をするのよ。この村で暮らすなら、パパはもう出稼ぎに行かなくて良くなると思うわ。アリーチェちゃんがお姉ちゃんと暮らすなら、ママとパパも幸せになれるのよ」


 アリーチェの表情がかわる。


「えっ?エリスママとルカパパ幸せになれるの?」


 アリーチェの反応にニヤリと笑うイザベラ。


「そうよ、パパが出稼ぎに出なくてすむなら、ママとパパはずっと一緒に居られるのよ、わかるでしょ?」


「冬もルカパパが一緒なのね……」


 アリーチェは黙ったままエリスを見つめていた。エリスもアリーチェを見つめている。


(エリスママとルカパパに5才まで育ててもらってとても幸せだった。エリスママとルカパパが幸せになる………)


(アリーチェちゃん素直ね迷ってるわ。子供はチョロいわ)


 エリスを真っすぐ見つめるアリス。


「どうしてエリスママはルカパパを選んだの?」


 エリスはキョトンとした表情から少し考え、ルカに耳を塞いでての合図を送る。

 ルカは素直に両手で耳を塞いだ。


 エリスはルカに笑顔を見せた後に、イザベラに話しをしても良いかの視線を送ると、頷いたので、アリーチェに向き直った。


「ママがよくつまずいて転ぶのは知ってる?」


「うん、よくつまずいてお皿を割るもんねフフッ」


「そうなのよ。でもね、ルカがいる時は躓いても、お皿を割らないし転ばないのよ。躓いてもいつの間にかルカが横で支えてくれてるの。ルカは昔から優しくて、私をずっと見ていてくれていたわ。ママが幸せなのはルカが居てくれたからかな」


 エリスはとても優しい笑顔で話してくれた。


 涙ぐむアリーチェ。


「エリスママ………ぐすっ……ルカパパって凄いのね。一緒にいたらエリスママ幸せなのね。アリーチェもエリスママとルカパパで幸せだった………ありがとう」


 エリスママとルカパパがずっと幸せに暮らせるなら、人探しは違う方法でなんとかしようと決心するアリーチェ。


 少し涙目のアリーチェがイザベラを見て言う。


「エリスママとルカパパの為なら、お姉ちゃんの所に………」


 イザベラは少し涙目だったが、口元が笑っていた。


(いい話だったわ、援護射撃ありがとうね。小さい子供は親の為ならなんでもするのよね)


 エリスが止める。


「待ってアリーチェ」


「口は出さない約束ではなかったかしら?」


 口をつぐむエリス。


「…………」


 すかさずイザベラがアリーチェに言う。


「もう決まったみたいね。アリーチェちゃんはママとパパの幸せの為にお姉ちゃんの所に来て一緒に暮らすのよね?」


 アリーチェはエリスを見ながら少し悩んだ。


「もう少しエリスママとお話しをしてたい」


(しまった、聞き直さずに契約してしまえば良かった……もう決まった様なものだし大丈夫でしょ)


「ええいいわよアリーチェちゃん」


 アリーチェはエリスママに向き直った。


「エリスママはルカパパと一緒がいいよね?」


 エリスが昔を思い出し微笑みながら話す。


「アリーチェが生まれる前は、ルカが一緒にいるだけで幸せだったわ。でもアリーチェが生まれてからの幸せは違ったわ、ルカが出稼ぎで居なくても、アリーチェが一緒に居ると幸せだったわ、アリーチェが笑顔で幸せそうにしているとママも幸せなの」


「アリーチェが幸せならエリスママも幸せ?」


「そうよとっても幸せよ。アリーチェが望んでイザベラ司祭様の元へ行くならママもいいと思うの。でもアリーチェが行きたくないのに行くのなら、ママは幸せじゃないわ。アリーチェが望む人生を歩んで欲しいの、アリーチェの望みがママの望みなのよ」


 アリーチェはエリスに抱きついた。


「アリーチェはエリスママと一緒にいたいよ~行きたくないよ~~」


 抱き合っているアリーチェとエリスを、ルカが上からそっと抱きしめた。



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 m(_ _)m



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