王都で神楽!
チーズ屋さくらカフェと串焼き屋台さくら亭を始めて1週間。
さくらカフェのチーズは昼には売り切れ、串焼き屋台も行列が絶えず、両店とも大繁盛していた。
忙しいながらもみんな仕事に慣れてきたようなのでお店の事はみんなに任せ、咲良は王都での神楽公演を始める事にした。
最初は貧民層の住む西広場。
ここは許可の必要がないので咲良の都合でいつでも出来る広場だ。
舞台製作の手配はダニエラに任せ、咲良は神楽を観に来た11才以下の子供に串焼きを1本無料で配る事を宣伝しまくった。
咲良と一緒に転生したなら、お姉ちゃんは同い年前後だろうと咲良は考えている。
小さい子供たちを集める為の作戦により、神楽当日の広場は子供たちでいっぱいになった。
子供たちは串焼きを食べながら、ついでに神楽を観てくれていた。
とりあえず咲良の目的は果たせたのだった。
2番目は南広場。
港があり朝から活気溢れる地区だ。
この地区の人たちは朝が早く夕方には家に帰って寝てしまうので、みんなが休憩をする昼食の時間に神楽を開催した。
串焼き屋台さくら亭も人集めの役に立った。
普段は昼に東広場に行かなければ食べられない評判の串焼きが神楽の時だけ来ると知り、多くの人が集まった。
勿論、子供に串焼き1本無料はそのままだ。
南広場でも串焼きの人気は絶大で神楽はついでの人が多かったが、それでも咲良の目的は果たせたのだ。
3番目は東広場、咲良のお店のあるホームグラウンドだ。
さくらカフェも串焼きさくら亭も大繁盛、更に子供は串焼き1本無料もやったから広場は大混雑。
多くの子供たちに神楽を観てもらえて咲良は大満足だった。
4番目は教会信者の多い北地区だ。
串焼き屋台の知名度もあり、串焼き屋台を出店するならと神楽が許可された。
串焼きのついでだった神楽は、敬虔な信者たちに気に入られたようで、神楽の舞いが終わると、観客からの惜しみない拍手が沸き起こった。
4ヶ所の広場での神楽が終わった後、貴族街の噴水広場と学校での神楽の許可はあっさりと降りた。
お人形をオークションに出して地道に名前を売っていた事や、広場の神楽公演で咲良の知名度が上がったのもあるようだが、貴族マルイーノ・ムッツリーニの強烈な後押しがあったようなのだ。
ダニエラから裏事情を聞いた咲良は、助けてもらったのはありがたいが、かかわり合いになりたくない複雑な心境だった。
そして5番目、貴族街の噴水広場でやる事になった。
中央に噴水があり、所々に芸術的なオブジェが飾られ、色とりどりの花々が植えられた、とても華やかで綺麗な広場だった。
神楽を見に来る観客も高価な服を身に纏い、落華やかながらも落ちついた雰囲気の公演となった。
これまでのように無料串焼き目当ての人は居らず、貴族のプライドなのか子供もしっかりとお金を支払っていた。
観客席の最前列には、マルイーノ・ムッツリーニが舞台に上がりそうなほど身を乗り出して見ていた。
咲良はかなり引いていたが我慢して神楽を舞った。
リディアとナディアの事は結局マルイーノのお陰だし、噴水広場で神楽が出来てるのもマルイーノの協力あっての事かもしれないからだ。
咲良はマルイーノの前のめりな圧力に心乱されないように頑張って集中したので、終わってからの疲労感が半端なかった。
そして6番目は咲良念願の学校での公演だ。
学校は東地区にある普通科と、中央地区貴族街にある魔法科の2ヶ所だった。
生徒たちはとても真面目に観てくれていた。
ただ、どちらの時も最前列には何故か生徒ではないマルイーノが陣どっていた。
お陰で咲良の集中力が回を重ねる毎に高まっていくのだった。
学校での神楽が終了する頃には、小花咲良の名前は王都で1番有名になっていた。
* * * * *
「はあ~~っ終わった~~!」
さくらカフェで生クリームの乗ったシフォンケーキを食べながら、大きく息を吐く咲良。
頑張った自分へのご褒美にと、シフォンケーキと生クリームの作り方を教え作ってもらったのだ。
さくらカフェの目玉商品が増えた瞬間だった。
そこにダニエラが訪ねてきて、シフォンケーキが見つかった。
「咲良様………今、召し上がっている物はなんでしょうか?」
「ああこれね、生クリームの乗ったシフォンケーキよ?」
咲良はそれが何か?という感じで特に気にする様子も無く答えた。
「…………」
ダニエラがシフォンケーキをジッと見つめていたので、ダニエラにも食べてもらった。
「お気遣いありがとうございます咲良様」
早速一口食べたダニエラは、今までにない夢見心地な表情をしていた。
「ん~~っおぃひぃ!フワフワとしてた天使のような柔らかさですね。上に乗っている生クリームというのもとてもあまく素晴らしいです!」
「咲良も好きなケーキの一つなの。気に入ってもらえて良かったわ」
「好きなケーキの一つ?………そうですか、他にもお有りということですね、今後が楽しみですね」
シフォンケーキをゆっくりと味わって食べ終わったダニエラは、咲良にお礼を言って帰ろうとした。
そこで咲良がダニエラを呼び止めた。
「あれっ?ダニエラさんは何か用事があって来たんじゃないの?」
ビクッとして立ち止まったダニエラは、ゆっくりと振り返った。
「流石の洞察力ですね、咲良様を試したりして申し訳ありませんでした」
(いやいや、絶対今の帰るつもりだったでしょ)
思うだけで言葉にする事などせずに、咲良は素直にダニエラの話しを聞いた。
ダニエラが言うには、1週間後に国王陛下の御前で神楽を披露せよとの勅令書が商人ギルド宛に届いたそうだ。
他国の客人も列席されるそうなので、くれぐれも粗相のないようにとの事だっだ。
「え~~っ!国王様の前でやるの~~?咲良はもう王都で神楽をやるつもりはなかったのよねぇ………でもそっか、国王様に観てもらうのもいいかも」
「まさか国王陛下からお声がかかるとは、さすが咲良様です」
「国王陛下に披露してお墨付きを貰えれば、何処に行ってもすぐに許可がされそうね」
「はい、許可申請は楽になりますね」
「よしっ、頑張ってみるか」
「1週間後が楽しみですね」
* * * * *
夕方の宿屋フレンド。
咲良とジャックがフレンドで夕食を食べている所に、極秘依頼でガンドルフ帝国に行っていたジャンが帰ってきた。
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