さくらカフェとさくら亭!
リディアとナディアが来てからの数日は、店の準備で大忙しだった。
毎日ニコデモの家族4人は裏小屋に引っ越ししてきたホワイトシープのメイちゃんからミルクを搾り、アランからチーズの作り方を教わった。
熟成室のゴーダチーズは順調に増え、カフェで出すメニューもみんなで考えて、店内のレイアウトも整っていった。
妻のエルマは嬉しそうだ。
「みんななんか、前の宝石店の時より元気よね」
「前より家族みんなでお店をやってる感じがしていいわ」
「なんか楽しいわね」
リディアとナディアも嬉しそうだ。
「エルマも楽しそうだな」
「フフッ、まだお店は開店してないけどとっても楽しいわ。これもみんなさくら様のお陰ね」
カフェのテーブルでメニューの試食をしている咲良。
「咲良は別になにもしてないわよ?お金はジャンから貰った物だし、交渉はダニエラさんだもの」
内装飾り付けの手伝いをしているダニエラ。
「いえ、全ては咲良様が居たからこその結果です。裏では悪い噂の絶えないあのフトッツィオが手を出して来ないのですから、マルイーノ様に気に入られたのが相当大きかったようですね」
「まるいのには、あまりお近づきにはなりたくないわね。王都で神楽が終わったら早く次の街に行きたいわ」
ワイワイ楽しそうに店の準備は進んでいった。
* * * * *
チーズ屋さくらカフェ開店の日を迎えた。
店の通りを渡った所には、串焼き屋台さくら亭も同時に開店する。
特に宣伝はしていなかったが、グルメで有名な者たちが店の前に並んでいた。
キッチンで準備をするエルマ。
「宣伝なんてしてないのに、どうしてグルメな人たちが並んでいるのかしら」
同じキッチンでチーズを作っているフレンドの主人アランが答えた。
「ああ、並んでるのはみんなうちに来る常連さんだよ、フレンドで常連さんにだけチーズを出していたからな」
「グルメな人たちが並ぶなんて、期待されてるのね」
「フレンドでチーズを食べながら、友人同士で必要以上に口コミを広めないように話しあっていたよ」
「えっ?宣伝してくれてもいいのに」
「宣伝すると、自分たちが買えなくなるからだとさ」
「あらまぁ!そんなに売れるのかしら。頑張らないといけないわね」
店の準備が整って、リディアとナディアが、店の扉を開けた。
「チーズ屋さくらカフェ、開店で~す!」
「チーズを買う方は左で、カフェの方は右にお願いします~!」
販売コーナーはフレッシュチーズとリコッタチーズの二種類しかないがどんどん売れていった。
カフェのメニューは、チーズ各種とパンやサラダ、飲み物はミルクにホイップクリームを乗せた紅茶なと、まだまだ種類は少なめだったが、チーズを注文して食べられるからだろう、カフェもすぐに満席となった。
かなり作った筈のチーズも昼前には売り切れてしまい営業終了となった。
道路を挟んだ店の向かいの広場で開店した串焼き屋台さくら亭に並んでいる人たちを眺めながら、咲良たちはカフェで串焼きを食べて休んでいた。
販売コーナー担当はニコデモとリディア、キッチン担当はエルマ、カフェのフロアー担当はナディアと咲良、店の護衛はジャック、貴族担当としてダニエラも居てくれた。
みんなヘトヘトだった。
「宣伝をしてないのに、こんなに混むとは、流石咲良様ですね」
テーブルに突っ伏している咲良。
「いや~、こんなにチーズが受け入れられるとは思わなかったわ」
自信満々のアラン。
「チーズの旨さは申し分ないからな。これでまだフレッシュチーズとリコッタチーズしか提供してないんだから、ゴーダチーズが出せるようになったらもっとも大変になるぞ」
混んでる店の大変さを知ったダニエラ。
「咲良様、その時は店員を増やす必要がありますね」
「お店の事はダニエラさんとニコデモさんに任せるわ、店員を自由に増やしていいからね」
「ありがとうございますさくら様、ダニエラさんと相談しながらやっていきます」
カフェの窓外に見える串焼き屋台さくら亭を見ながら咲良は言った。
「かなりの行列になってきて大変そうね。ちょっと串焼き屋台の様子を見てくるわ」
* * * * *
まだ知られていないさくら亭が開店したばかりの頃はちらほらと客が来る程度だったが、昼には列が出来はじめて、昼が終わる頃には周りのどの屋台よりも長い行列が出来ていた。
必死に串を焼いていたレジーナ院長の手伝いに来た咲良。
更にリディアとナディアが応援に来てくれた。
販売を頑張っていた9才のゲッツとカナを休ませる事が出来た。
9才にはキツかったと感じた咲良は、屋台の営業は今後も昼前後だけにした。
* * * * *
翌日さくらカフェには、早くも警備員が増えていた。
ダニエラとニコデモが相談して、宝石店だった頃に働いていた人を雇ったそうだ。
店は混んでいるが、みんな仕事に慣れてきて咲良やダニエラの手伝いが無くても営業していけるようになった。
串焼き屋台も昼食時間だけにしたら、なんとかやっていけてた。
忙しそうならさくらカフェから応援が駆けつける事になっている。
串焼き肉の仕入れは、当面リタのPTセイントガードに指名依頼でお願いする事にした、冒険者ギルドで酔っ払って絡んできたPTだ。
レベルも15と丁度いいし、リタは面倒見がいいから将来的には孤児たちの冒険者の先生になってもらえたらと咲良は思っていた。
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読んで頂き有難う御座います。
m(_ _)m
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