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フトッツィオとの交渉!☆2


 咲良はフトッツィオの屋敷に呼び出されたので、ダニエラとジャックの3人で向かった。


 中央地区の中でもお城に近いフトッツィオの屋敷はかなり立派だった。


 すぐに応接間に案内された。

 ソファーに座っている咲良とダニエラ、護衛のジャックは入口に立っていた。

 暫くするとフトッツィオと息子のマルイーノが入って来て向かいのソファーに座った。

 フトッツィオは不機嫌だったが、息子マルイーノは鼻息荒く咲良をガン見していた。


 マルイーノは父フトッツィオと一緒に国境都市の防壁修理に行っていた。

 帰りにモンテラーゴで踊りを踊る小さな女の子の噂を聞き、会いたくて仕方がなかったのだ。

 マルイーノは父フトッツィオにお願いして、何日かモンテラーゴに滞在したが、その女の子を見つける事は出来なかった。

 滞在している間に聞いた話しでは、女の子の名前はこのはなさくら、彼女が踊るのは神楽といい、見た者全員が素晴らしいと言っていたのだ。

 しょぼくれて王都に帰ってきたマルイーノだが、そこにこのはなさくらの名前が飛び込んできたと言う訳だ。


 マルイーノは興奮せずにはいられなかった。


 フトッツィオがマルイーノを気にしながら話し始めた。


「私の奴隷を買いたいと言うのはお前たちか?」


「はい、その通りです。私は商人ギルドのダニエラと申します。こちらが小花咲良様で御座います」


「フンッ、子供が私の奴隷を欲しいなどと、わがままに育ったものだ。奴隷を譲る気は無いが、マルイーノかそいつに会ってみたいと言うので呼んだまでだ」


 フンッフンッ鼻息しか聞こえなかったマルイーノが興奮気味に話し出した。


「かっ可愛いぞな………きっ、君がこのはなさくらちゃんとな?」


 咲良は悪寒を感じた。


「……はい」


「おおっ!声も幼くて可愛いぞなっ!かっ完璧ぞな!かぐらとかいう踊りをするのはさくらちゃんぞな?」


 咲良はまた最小限の返事をする。


「……はい」


「そうかそうか!僕ちゃんもみてみたいぞなっ!」


 本題に入ろうとするダニエラ。


「フトッツィオ様がご購入予定で、まだどなたののとも決まっていない奴隷の購入の話し合いに参りました」


 マルイーノが怒り出す。


「なんだ年増っ!僕ちゃんがさくらちゃんと話しをしているのに邪魔するでないぞなっ!」


 年増と言われたダニエラの顔から表情が抜け落ち、冷たい視線でマルイーノを鋭く見据えた。


 ビクッ!


「さっさむっ!なんか寒いぞなっ!僕ちゃんを睨むとはなんだ年増!」


 ギンッ!!


 ダニエラの冷たい視線の令圧がさらに増した


「私の名はダニエラです」


「ヒイッ!寒すぎぞなっ……」


 涙目のマルイーノはそれ以上なにも言わなくなった。


 フトッツィオがダニエラに言った。


「フンッ、奴隷を譲る気は無いと言った筈だが」


「予約なさってらっしゃったのですから当然ですね。只、フトッツィオ様にとって本当にその奴隷が必要なのでしょうか?もし必要ないとお思いなのでしたら、我々が代わりに購入する事で通常発生するキャンセル料などをお支払いにならずにお済みになりますよ?」


「奴隷は売らん。息子がそっちの子供に会ってみたいというから呼んだまでだ。マルイーノ、もう話さなくていいのか?」


「いやでも、横の年増がっ!はうっ……」


 またダニエラの冷たい視線が直撃するマルイーノ。


「僕ちゃんはさくらちゃんと話したいけど、横のおばはんっ!ヒイッ!」


 ダニエラの冷たい視線を受けまくるマルイーノ。


 マルイーノにとっては14才くらいまでが守備範囲で、それ以上はアウトオブ眼中なのだ。

 名前を名乗ったとしても覚える気は無いのである。


「誰だか知らんが僕ちゃんとさくらちゃんの邪魔をするとはけしからんぞなっ!」


 そこで空気を読んで咲良が言う。


「彼女はダニエラさんで、咲良を助けてくれている大切な方なの……」


「なんとっ!さくらちゃんを助けているのか…………ご苦労ぞなダニエラ」


 咲良が言った事で、マルイーノはダニエラの名前をあっさりと覚えた。


「もしかして後ろの奴もさくらちゃんを守ってるのぞな?」


 聞かれた咲良は答える。


「護衛のジャックよ、ジャックが居ないと街中も危なくて歩けないわ」


「分かる!分かるぞなっ!さくらちゃんには誰しもが寄ってくるぞなっ!。そっか、ジャックもご苦労であるぞなっ!」


 みんなマルイーノがどういう立場で言っているのか分からなかったがスルーした。


「で、さくらちゃんは何の為にきたぞな?」


 先ほどダニエラがハッキリと用件を言ったのだが、咲良の声以外聞こえていなかったようだ。


 改めて咲良が話す。


「はい、娘2人の奴隷を譲って頂こうと思い参りました」


「おおっ!さくらちゃんはその若さで丁寧な話し方をするぞななっ、とても素晴らしいぞなっ!あっいや、奴隷の話しだったぞな。娘2人の奴隷って、あの16才の年増の双子の事ぞな?」


 ダニエラは年増にピクッと反応するが、自分の事ではないので令圧の視線まではいかなかった。


「うん、その双子の奴隷を譲って欲しいの」


 マルイーノは即答する。


「いいぞなっ!いや、僕からさくらちゃんへその奴隷をプレゼントするぞなっ!」


 フトッツィオは慌てた。


「マルイーノ、7千万ターナだぞ、流石に他人にプレゼントは……」


「なんでぞなパパっ、それくらいはした金ぞなっ!パパと一緒にあっちこっちいって僕の土魔法で稼げてるのは知ってるぞなっ!僕ちゃんの稼いだお金は僕ちゃんの好きなように使うぞなっ!」


 フトッツィオはあきらかに困っていた。

 マルイーノからのプレゼントを受け取りたくない咲良は、ダニエラに視線を送って助けを求めた。


 ダニエラはフトッツィオとマルイーノの様子を見て、誰に決定権があるのかを悟った。


「マルイーノ様、咲良様からお願いされたのですが発言よろしいでしょうか」


「うむ、さくらちゃんの為であれば良い、なんぞなダニエラ?」


「はい、咲良様へのプレゼントという事ですが、マルイーノ様が購入せずに奴隷の購入権を譲って頂くだけで咲良様は喜ばれます。7千万ターナは今後のプレゼントの為にとっておかれては如何でしょうか?」


 フトッツィオは、ダニエラの意図を読み取ってまんざらでも無い表情をしていた。


「う~ん、そうじゃな、わしは構わんが、マルイーノはどうじゃ?」


「むむ?それだと僕ちゃんはさくらちゃんへのプレゼントをしてないぞな?」


 マルイーノの扱いをなんとなく理解してきた咲良は、フトッツィオやこの場の空気を読んで言った。


「そんな事ないわ。購入権を譲ってくれるだけで、すごく、う・れ・し・い・のっ!」


 見る見る喜びの表情に変わっていくマルイーノ。


「そっそうぞな!さくらちゃんが喜んでくれるなら購入権をプレゼントするぞな!するぞな~~っ!」


「ありがとう、てへっ!」


 お礼を言いながら調子に乗って首をかしげる咲良。


 壊れるマルイーノ。


「うおぉおおぉおお!!神レベルのかわゆさぞなっ!それが僕だけに向けられるとか、我人生に一片の悔い無し!もう死んでもいいぞなっ!」


 立ち上がって、力強く片手で真上を指差すマルイーノ。


「いや、まだ神楽を見てないから死ねないぞな、我人生はこれからぞなっ!」


 何をやっても様にならない、坊ちゃん刈りのボッチャリ系30才マルイーノ・ムッツリーニ!

 周りのことなど気にせず我が道を行くマルイーノ・ムッツリーニ!

 咲良に好かれてないが、がんばれマルイーノ・ムッツリーニ!




 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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