フトッツィオとの交渉!☆1
ちょっと短めです。
咲良と奴隷商ペッピーノが会った2日後、フトッツィオ・ムッツリーニが王都に帰ってきた。
王都とその周辺で防壁の修復を行い王からかなりの信頼を得ている。それをいい事に、裏では自分の欲望の為なら汚い事も平気でする腐った貴族だ。
ぶくぶくと肥った腹を抱え汗をかきながら歩く姿は醜悪。
周りの貴族から嫌われているが、王様の信頼がある為に誰も態度には表さないのだ。
奴隷商ペッピーノはフトッツィオの館を訪ね、ニコデモの娘2人の奴隷を買いたいという者がいる事を告げる。
「あの奴隷を譲る訳がなかろう。息子へのプレゼントなんじゃから」
フトッツィオの息子、フトッツィオ・マルイーノ。
マルイーノは性格や好みにかなりの問題はあったが、補って余りある魔法の才能があった。
土属性魔法で王都の防壁建設や修復で親顔負けの才能を見せたのだ。
マルイーノが詠唱して発動する魔法は、他の者よりスムーズで威力もあった。
10年前、マルイーノが20才の時点ですでに父フトッツィオと同程度の事は出来ていたので、将来がとても有望視されていた。
フトッツィオは現在、領地を持たない伯爵だが、マルイーノ次第では領地を任される可能性は十分にあった。
フトッツィオはいつの間にか息子マルイーノの顔色を覗うようになっていた。
そして息子マルイーノが、あの双子を見かけて惚れ込み、奴隷に欲しいと言い出したのが始まりだった。
フトッツィオは双子の親ニコデモに大金を貸し付けて双子の娘2人を奴隷として奪うつもりだった。
しかしニコデモは商売が上手く順調に借金を返済していた。
フトッツィオは娘2人を譲ってくれれば借金はチャラにしてもいいと言ってみたが、当然断られた。
今回、従業員に財産を持ち逃げさせると言う強引な手段を使って、やっと娘2人を奴隷に出来る事になったのだ。
しかしマルイーノは先日、あの双子の奴隷はもう16才で年増だからもういらないと言いだした。
あとは金を払って奴隷契約を結ぶだけの段階でだ。
今さら奴隷商にいらないとは言えなかった。
フトッツィオが数年苦労してやっと手に入る奴隷だ、多少は思い入れもあるので他の奴に売る気にもならなかった。
「7,000万ターナ払ってやるから早いとこ娘2人を連れて来い、奴隷契約を済ませてしまおう」
ペッピーノは欲深な目でフトッツィオを見て言った。
「相手は7,000万ターナ以上出すと申しておりますが、如何致しましょう」
フトッツィオの目が鋭くなる。
「お前、いい度胸してるな、私との約束を反故にしたうえに、もっと金を出せと言っておるのか?」
「………いえ、そのような事はござきません。私は断ったのですが、相手がフトッツィオ様より出すから譲ってくれと言って聞かないのでございます。提示してきた金額から考えますに相手もそれなりの貴族かと思いまして、ご相談に参ったので御座います」
「フンッ、白々しい………まあよい、どこぞの田舎貴族だろう、名は何と申す」
フトッツィオも貴族同士の揉め事は避けたいようだ。
「はい、このはなさくらと名乗る子供でした。商人ギルドの職員がサポートしてましたので、さぞ名のある貴族かと」
「このはなさくら?初めて聞く名だな、田舎貴族か?他国の貴族かもしれんな。役に立つか少し調べて………」
今まで横のソファーで寝ていた筈のマルイーノが突然起きた。
「このはなさくらとな!このはなさくらと聞こえたぞなっ!?」
ペッピーノは突然話しに入って来たマルイーノに戸惑いつつも答える。
「はい、赤と白の服を着た10才くらいの女の子でした」
「10才の女の子がこのはなさくらと名乗ったか、それが本当なら、王都に来ていたと言うことぞな。会いたいっ!絶対会うぞなっ!その子に会って話しをしたいぞなパパ!」
「いやちょっとまてマルイーノ!」
「こんな近くに居たとは!その子に会えるまでもう何も手につかないぞなっ!いやっ会えなかったら一生何もしないぞなっ!」
フトッツィオは、言い出したら聞かないマルイーノを見ながらため息をついた。
「マルイーノ…………仕方ないか………おいペッピーノ!奴隷を譲る気は無いが会って話しを聞いてやろうじゃないか。すぐに呼べ!」
フトッツィオは息子マルイーノの為に、このはなさくらに会うことにした。
「はいフトッツィオ様。さっそく話しに行って参ります」
ペッピーノは退出しながらほくそ笑んでいた。
(なんか知らんが、あのバカ息子のお陰で値が上がりそうだぞ。ヒッヒッヒッ)
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