孤児院訪問!
咲良たちは物件の契約が終わったので、西地区の孤児院に向かう事にした。
ここからだと中央地区を挟んだ反対側になりかなり遠いいので、レティシアが商人ギルドの馬車を出してくれた。
揺られること30分、馬車は西地区に入った。
西地区の街並みは木造の壊れかけた平屋が多く、道も整備されていなかった。
道端に座っている者や、物陰からこちらの様子を伺う者など、まさに貧困街と言う雰囲気だった。
店はあるのだが鉄格子に守られていて、商品とお金を小窓から交換する方法だった。
無事孤児院に着いた咲良たちは、院長に面会を求めた。
孤児院の敷地は2メートル程の高さの鉄柵に守られていて、小さいながらも庭があり子供たちがあそんでいた。
ほっそりとした優しそうな年輩の女性が来て、柵越しに話しかけてきた。
「わたくしが院長のレジーナですが、どちら様でしょうか?」
「商人ギルドのレティシアと申します。ご相談があって参りました。中でお話しをさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
レジーナ院長はレティシアと馬車をみて納得したのか、入口を開けて中に案内してくれた。
庭で遊んでいた子供たちは、咲良たちを物珍しそうに眺めていた。
庭を通り抜け、平屋の建物に案内された。
室内に仕切りは無く、学校の教室のような感じだった。
遊び道具が散らかっている部屋の片隅に、子供用の机と椅子が置いてあり、咲良たちはそこに案内された。
小さいテーブルを挟んで優しそうな雰囲気のレジーナ院長と向かい合う咲良たち。
いつの間にか子供たちが咲良たちを囲んで物珍しそうに見ていた。
「改めまして、プリムラ孤児院にようこそおいで下さいました。わたくしが院長のレジーナです」
「商人ギルドのレティシアです」
「小花咲良です」
「ジャックです」
「おれゲッツ」
「わたしカナ」
「スイ」
「モック」
「キン」
「ドン」
「サンディー」
何故か子供たちも名乗った………
レジーナ院長の指示で子供たちは外に遊びに行った。
静かになった室内で、咲良はレジーナ院長に串焼き屋の運営を提案した。
レジーナ院長は話しを聞いて戸惑っていた。
「私たちが串焼き屋をですか?」
レジーナ院長は子供の咲良が言っている事なので、どう対応したらいいのか分からなかった。
「すでにボスコの孤児院でも、モンテラーゴの孤児院でもやってる事ですので絶対出来ますからどうですか?」
咲良はレジーナ院長の不安な表情を見て、少しでも安心してもらえるようにと話しを続けた。
「院長先生と子供たちで串焼き屋を出来る様になれば孤児院の収入になりますし、孤児たちが学校に通えるようになります。そして子供たちでPTを組んで弱い魔物を倒せるようになれば、将来孤児院を出る歳になっても、一緒に孤児院で串焼き屋の仕事をしていけると思います」
「…………本気なのですか?確かに串焼き屋をやれるならいい話しだとは思いますが、どうして私たちに?」
咲良は迷わず答えた。
「子供たちの将来の為です」
「さくらさんには何の特にもならないのに………」
意外と心配性のレジーナ院長の前に、咲良はリュックから焼きたての串焼きを出した。
レジーナ院長は、突然焼きたての串焼きが現れて驚いていた。
「焼き立て?」
レジーナ院長は焼き立ての串焼きがリュックから出てきて困惑していた。
「レジーナ院長、先ずは食べて腹ごしらえして、話しはそれからにしましょう」
お腹が空いていては、まとまる話もまとまらないと考えて、咲良は味見も兼ねて串焼きを食べてもらう事にした。
いつの間にか周りには、外で遊んでいた筈の子供たちが集まっていて、串焼きをガン見していた。
咲良は子供たちのお腹の鳴る音に気がつき、7人みんなに1本づつ串焼きを配った。
子供たちは手に持った串焼きを、見るばかりで誰も食べようとはしないので咲良がみんなにすすめた。
「どうぞ食べていいのよ?」
「あっ、すいせんさくらさん。子供たちは食べる前のお祈りを待っているのです」
レジーナ院長はそう言って、孤児たちと輪になって座り、お祈りを始めた。
「神様、今日も食事をありがとうございます、アーメン」
「「「アーメン」」」
「では頂きます」
「「「いただきます!」」」
串焼きにかぶりつく孤児たち。
「はむっ、もぐもぐ…」
「なんじゃこりゃ!」
「うまっ!」
「んまっ!」
「おいちいっ!」
「はむっ!」
笑顔で美味しそうに食べている孤児たちを見ながら咲良は思った。
(目の前に出された食べ物を、お祈りしてからじゃないと食べないなんて、なんてよい子たちなの)
食べ終わった後、串焼き屋に前向きになってくれたレジーナ院長と、今後の予定を相談した。
その結果、屋台道具の準備や場所の確保などを踏まえて、1週間くらい串焼きを焼く練習をしてから営業を始める事になった。
レジーナ院長には、お手伝いの出来る孤児数人の人選をお願いした。
なんとか串焼き屋が形になりそうで咲良はホッとしていた。
「きっとこれでみんなの将来が明るくなるわね、開店まで1週間ありますが、ちょくちょく顔を出しますので何かあれば言って下さいね」
咲良のしっかりした計画や受け答えに安心したのか、レジーナ院長はやる気になっていた。
「さくらさんありがとうございます、これからよろしくお願いしますね」
「よろしくな」
「さくあおねぇたんあいがと」
「ありがと~」
「ごちそうさま~」
「またね~」
「あそんであげるからね~」
「がんばって~」
咲良たちはレジーナ院長と元気な子供たちに見送られて、プリムラ孤児院を後にした。
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m(_ _)m
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