レティシアの調査報告!
商人ギルドでレティシアとの打合せの日になった。
前回と同じ商人ギルド2階の部屋でレティシアと向かい合って座る咲良とジャック。
勿論、部屋の隅にヴァネッサギルド本部長が居るのも同じだ。
レティシアからの調査報告は次のような内容だった。
【中央地区にある噴水広場】
国王の許可もしくは複数の貴族の推薦が必要。
【王都内の学校】
国王の許可もしくは複数の貴族の推薦が必要。
【東地区 東広場】
使用料50万ターナ払えば出来る。
正門があり最も賑わう場所なので一番高い。
【南地区 南広場】
使用料40万ターナ払えば出来る。
港があり朝市で賑わう場所なので高い。
【北地区 北広場】
使用料は内容により決定する。
多く住む教会信者に好意的に受け取られれば安く、気に入られなければ高いか許可が下りない。
【西地区 西広場】
無料
貧民街なので自由。
この条件を踏まえてレティシアは、オークションで小花咲良の知名度を上げながら、先ずは無料の西広場での神楽をやって見ましょうとの事だった。
咲良は物置小屋候補の報告も受けた。
西地区は治安が悪く、南地区は漁業関係とかじゃないと売ってもらえず、北地区は敬虔な教会員じゃないと無理で、条件的にも東地区がおすすめだそうだ。
レティシアが調べた時にたまたま東広場で売りに出されていた物件があったので、すでに仮押さえしてあるそうだ。
つい一週間前まで使われていた物件で、土地建物合わせて価格が1億5千万ターナ、滅多に売りに出されないこの場所としては、損のない価格だそうだ。
前の世界で女子高生だった咲良としては、物置小屋に1億5千万とかあり得ない金額だが、ターナと言う単位だし口座にお金はあるみたいだし、意外と気にしなかった。
「孤児院での串焼き屋の件ですが、さくら様にこの物件をご覧頂くついでに、孤児院にご足労願って孤児院院長とお話しをされてみるのはいかがでしょうか?」
「そう分かったわ、物件を観るだけ見て、孤児院に行きましょうか」
* * * * *
東広場に面した物件の前に来ている咲良。
白くて綺麗な石造りの地上3階建てだ。
1階にはショーケースや棚やカウンターがあり、商品は飾ってないがすぐに開店出来そうなほど綺麗だった。
2階は高級そうな内装の部屋が幾つもあった。
前は宝石店だったそうで商談用の部屋だったのだろう。
3階はオーナー家族のエリアだった様で、リビングやシャワーやトイレなどがあった。
地下1階は作業場兼荷物置き場だった。
全ての階に処分されてない荷物や棚が残っていた。
「どうですかさくら様、とても良い物件だと思いますが」
「確かに建物も内装も新築みたいに綺麗ね、家具もあるし」
レティシアは咲良が気に入ってくれているようで、心の中でホッとしていた。
「ですよね、建物も良く立地も最高、こんな良い物件に巡り会うなんてさくら様はとてもラッキーな方ですね、商売繁盛間違いなしですよ!」
咲良は転移魔法陣を設置する為の倉庫でよかったんだけどと思いつつ、チーズを売りたいと言った事も思い出していた。
「お店か…………でもなんでこんな綺麗なまま売りに出されてるの?」
「はい、前の店の主人が事業拡大の為に借金して改装したばかりの時に売りに出されたからなんです。ほんの1週間程前に完成したらしいですよ」
「そこまでしたのになんで売っちゃったの?」
「はい、なんでもこのお店で長年雇われていた支配人が金庫のお金と店の宝石全てを持ち逃げしたらしいですよ。借金したばかりで、もうお金も借りられず店の営業が出来なくなったうえに過去に借りていた借金も請求されて、この店や土地など財産全てを売っても足りず、夫婦と子供2人の計4人が奴隷となってやっと返済のめどが立ったそうです」
4人家族が奴隷落ちとか、レティシアは重い話しを滑舌良くハキハキと説明した。
(改装したばかりで売りに出されたからくらいの話しでよかったのに……)
「家族4人が奴隷って気の毒な話しね」
「全て主人のせいですし、お金の為に奴隷になるのはよくあることです。親の為に子供が奴隷になるのも仕方のない事ですね」
「えっ、そんな感じ?ここではそれが当たり前みたいね…………奴隷になった後はどう生活していくの?」
「はい、借金奴隷の生活の面倒は買った主人が責任を負いますので、大抵は普通の生活環境ですね。そして毎日主人の望む仕事をします。奴隷の条件にもよりますが主人の夜の相手をする事もあります。奴隷としての契約期間が終わりましたら解放されます」
「期間が終わったら解放されるんなら良かったわ。借金奴隷って?」
レティシアが奴隷について丁寧に説明してくれた。
奴隷にはおおまかに分けると借金奴隷と犯罪奴隷がある。
借金奴隷は自分の魅力や労働力によって金額が変わり、期間を決めて買ってもらう奴隷の事だ。
勿論、死ぬまでと言う期間もある。
主人も労働力などとして購入するので粗末な扱いはしないのが普通である。
しかし犯罪奴隷は全く違う。
犯罪を犯した者を国が奴隷として扱うのだが、いつ死んでも可笑しくないような重労働を課せられるのだ。
軽い罪であったとしても期間が短いだけで、課せられる重労働は同じなので死ぬ者も居るのだ。
借金を返さないと犯罪奴隷となるので、主人は家族4人を死なせない為に借金奴隷となったのだ。
借金奴隷は仲介する奴隷商に買ってもらうのだが、希望する金額によって奴隷となる期間と条件が変わるのだ。
奴隷商は買った額より高く売れなければ赤字なので、シビアに相手を見定める。
若くて見目麗しく夜の相手をしてもよい奴隷は需要があり最も高い。
色々な制限があると、売れる見込みが無くなるので奴隷商が金を出す事はない。
「ふぅ~ん、犯罪奴隷にはなりたくないわね。なんにしてもさっきの家族4人は一定期間で借金奴隷じゃなくなるなら良かったわ」
「奴隷を気になさるなんて、さくら様は変わったお方ですね。対価としてお金を得て奴隷となる訳ですから、気を病む必要はないかと思いますよ」
「ん~そうなのかもしれないけど………まあいいわ。レティシアのおすすめだし、この物件にしとくわ」
「あっ!ありがとうございます!」
(お金は足りるし訳あり物件でもないし、あるとすれば高いってだけだけど、1億5千万っていってもターナでしょ?それに2億以上あるし大丈夫でしょ)
お金を持ちすぎて、咲良の金銭感覚は麻痺し始めていた。
* * * * *
レティシアは咲良と共にすぐに不動産屋に行った。
レティシアが契約書など細かい手続きもあっという間に済ませ、1億5千万ターナの支払いも咲良のギルドカードであっさり終わった。
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