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暇つぶしに依頼を受けよう☆6


 オーク1体を素早く倒せたが、まだこの後にオーク3体を率いたオーガがやってくる。


 咲良は木のまわりに避難したリタたちがパニックにならないように、自分たちにはまだ数人のPTメンバーがいると伝えた。


 勿論、PTメンバーとは精霊の事だ。


「えっ、つまりオークを瞬殺するくらい強いPTメンバーが他にもいるって事?」


「そうね、もうすぐここに着くメンバーはジャックよりも強いわよ。だからこの後オーク3体とオーガ1体が来るけど、大丈夫だからね」


「えっCランクのオーガも来るの?!でもそんなに強いPTメンバーが居るんなら…………あっ、その人たちに守られてるからさくらちゃんがこんな森の中にいられるのね」


 ふてくされてるイヴァノ。


「そんな強いPTが採取依頼なんてするか?」


「いやイヴァノ。きっと受けてるのはオークの討伐依頼なのよ」


「オークの討伐だと?Cランクじゃないか…………年下のガキのくせに生意気な」


 リタは咲良とジャックが走ってきてくれた事の意味に気づいた。


「あっそっか、オーガとオークが来るから二人は私たちの所に駆けつけてくれたんだね、ありがとうジャック、さくらちゃん」


「「「………………」」」


 他の3人もやっと状況を理解したようだ。


「ガキだと思ってたのに助けられるだなんて………やっぱ生意気だ」


「オークを瞬殺するようなPTメンバーが揃ってるのか……」


「僕たち騎士なのに守ってもらってる………」


 イヴァノ、マカリオ、トニーの3人はかなり落ち込んでいた。


 咲良はPTメンバーとして精霊の誰を呼ぶか考えていた。

 一人は空気が読めて街での生活にも慣れているシェイド。

 2人目は、頼もしい体つきで、いればみんなが安心するだろうからイフリート。

 3人目が悩みの種だ。

 ウィンディーネやフラウやノームは見た目が子供だから無理、ヴォルト、ルナ、ランパスはみんなの知らない魔法を使うから無し、それでなくてもルナは攻撃力が皆無なのだ。

 ウィスプは聖属性だからリタに何処の教会勤務か詮索されそうだから無し、結局シルフしか残らなかった。


 咲良は精霊たちが姿を現したのを確認してから、みんなの後ろを指差して紹介した。


「メンバーが来たわ、順番にシド、リート、シリルよ」


 みんなが振り返ると、精霊とは分からない街中用の服装をした3人がいた。


 執事の格好だが、デスサイズを背負ったシェイド。


「シドです」


 タンクトップにGジャンGパン姿で、素手のイフリート。


「リートだ」


 白い開襟シャツに白と緑のストライプのスカート姿で、弓を装備したシルフ。


「シリルよ、よろしくね」


 リタたちは呆然としていた。


「「「「普通の服?」」」」


 リタたちの反応で普段着な事に今さら気づいて慌てる咲良。


「あっえっと、みんな急いで来たから普段着なの。いや違うわ、ああ見えて高くて凄い装備なの、ほら、動きやすいでしょ?シドは執事で、リートは格闘家で、シリルは…………オシャレ好きなお姉さん?」


 何を言っているのか分からなくなり、どんどん咲良は落ち込んでいった。


「デスサイズ使いの執事かっけ~!」

「素手で戦うなんて男らしい!」

「装備を選ばないなんて凄い!」

「エレガントでとってもお洒落~」


 誤魔化す必要など無かったようだ。



 ガサッガサガサッ!


 ガオォオオォオ~~!

 ブフォオ~~!

 ブフォオ~~!

 ブフォオ~~!


 オーガ1体とオーク3体が現れて、全員が囲まれた。


「じゃあみんなはオークをよろしく、オーガはできるだけジャック一人にやらせてあげてね」


「分かりました姫様」

「オーガと拳で語りあいたかったが仕方がねぇな」

「了解よ、さくらちゃんでも楽勝だと思うけど任せて」


 精霊の強さは平均してCランクの魔物くらいなので、Dランクのオークは余裕だ。


 シェイドはデスサイズを一振り、イフリートは拳でタコ殴り、シルフは連続で放った風魔法の矢が大量に刺さりオークはハリネズミのようになっていた。


 ハリネズミと化したオークを見てトニーが呟いた。


「綺麗なバラにはかなりのトゲが………」


「なによトニー!綺麗で強いって素敵じゃない、助けてもらったのに文句あんの!」


 リタに怒られてシュンとするトニー。


「いえ………とっても素敵です」


 あっという間にオーク3体が倒れ、残るはオーガ1体だ。


 後はジャックに任せて精霊たちは咲良の側に戻ってきた。


 Cランクのオーガと対峙するジャック。


 ジャックは父のジャンがオーガと戦うのを見てオーガの弱点が角なのは分かっていたが、オーガは戦闘好きだし力もありスピードも早いのでそう簡単にはいかないだろうと気を引き締めた。


 ジャックは片手剣と盾、オーガは大剣だ。

 両者武器を構えて相手の様子を伺いつつ、少しずつにじり寄っていく。


 申し合わせたようにお互い同時に走りだした。


 接近したところで先にオーガが大剣を振り下ろす。

 ジャックはギリギリで躱しオーガの右腕に斬りつける。

 オーガは斬られた傷など意に介さず、そのまま大剣を横薙に振った。

 ジャックは咄嗟に盾で防御しながら、衝撃を和らげる為に大剣と同じ方向にジャンプした。

 ジャックは大剣の勢いのまま飛び、着地してすぐにオーガに向かってダッシュした。

 オーガもすぐに走り出し突きを放つ。

 ジャックはギリギリで躱しながら突きを放った。

 ジャックの突きがオーガの脇腹に突き刺さった。

 しかしオーガは怯む事なく脇腹の筋肉を引き締め、ジャックの剣を抜けないようにした。

 動揺してジャックに一瞬の隙が生まれた。


 オーガは力任せにジャックを殴り飛ばした。


 ガゴッ!!


 「きゃっ!」

 「「「うわっ!!」」」


 殴られたジャックではなく見ていたリタたちから悲鳴が上がった。


 吹っ飛ばされ受け身もとれずに倒れこむジャック。


 オーガは脇腹に刺さっていたジャックの剣をゆっくりと引き抜いて、二刀流で構えてニヤリと笑った。


 ジャックはオーガを警戒しながらゆっくりと立ち上がり、鉄の味のする唾を吐いた。


「ペッ、くそっ」


「ジャック!」


 すかさず咲良は、ゴーレム素材で作った愛用のショートソードを、柄の方からジャックに投げた。


 オーガはジャックに剣が渡り準備が整うのをジッと待っていた。


 盾だけだったジャックは、咲良のショートソードをしっかりと受け取り、オーガと向かい合った。


 両者は視線を交わし、また同時に走り出した。


 オーガは2本の剣で同時に突きを放った。

 ジャックは1本を辛うじて横に避け、もう1本は盾で逸らしてなんとか避けきった。


 意図せずしてオーガの懐に入ったジャックはショートソードを円を描くように素早く振りきった。


 突きを放って伸びていたオーガの両腕を、咲良が渡したショートソードはあっさり斬り飛ばした。


 ジャックは咲良の剣の斬れ味が鋭いのは知っていたが、オーガの腕を斬り飛ばせるとまでは思っていなかったので驚いた。


 オーガもかなり驚いてはいたが、咄嗟にジャックを蹴り飛ばして距離をとった。


 ジャックはく受け身をとって身構える。


 オーガはジャックを睨んでいた。


 もはや勝負はついたが、オーガは背中を見せて逃げようとはしなかった。

 最後まで戦いの中に生きようとするオーガに、ジャックは尊敬の念を覚えた。


 オーガの気持ちに応える為に、ジャックは気合いを入れなおした。


 ジャックの決意を感じたオーガの口元は笑っていた。


 お互い睨み合った後、両者同時に走り出した。


 オーガが走った勢いを乗せて全力の蹴りを放ち、ジャックは避けずに盾で受けとめにいった。


 オーガの強烈な蹴りで盾がきしみジャックの表情が歪む。

 お互い歯を食いしばっての我慢比べとなるが、蹴りの勢いが止まりオーガとジャックの目が合う。

 その瞬間ジャックが一歩踏み込みショートソードを一閃。


 ジャックとオーガは立ったまま動かなかった。


 オーガはジャックを満足そうに見つめたまま倒れていった。




  *  *  *  *  *




 無事戦闘も終わり素材を回収した咲良たちは、リタPTと共に森の中を街道に向かっていた。


 ジャックは今回の事でリタたちにお願いをした。


「それでなるべくなら、オーガを倒した事やPTメンバーがいる事を黙っていて欲しいんだ」


「えっオーガを倒した事を秘密に?俺なら自慢しまくるけど、どうしてです?ジャックの兄貴」


「冒険者として誇らしい事だし、秘密にするメリットが無いと思うけど、何故なんです?ジャックの兄貴」


「なんで秘密なの?……ジャックの兄貴」


 ジャックは年上の3人から兄貴と呼ばれて落ち着かなかった。


「僕はまだ若いから、反感を買ったり、妬まれたりするとさくらに危険が及ぶかもしれないからね」


 3人はなんとなく納得した。


「なる程、さくらさんを守る為なんですか。強いと色々大変なんすね。俺たちセイントガードも気をつけないとな」


「セイントガード?」


 ジャックの疑問にマカリオが答えた。


「はい、俺たち3人で考えたPT名です。聖属性のリタを俺たち3人とも騎士として守りたくて……」


「そうだよね、女性を守るのは男の役目だもんね」


「「「ですよね兄貴!」」」


 ジャックも咲良を守る思いは一緒だったので、彼らの気持ちは理解できた。



 リタは風の精霊シルフと話しをしていた。


「シリルお姉様はオシャレで強くて素晴らしいですね~、尊敬しちゃいます~」


「リタさんでしたわね、きっとリタさんも強くて美しくなれますよ、あっもう美しいから後は強くなるだけかしらね」


「あらやだっシリルお姉様ったら!お上手ですわ~、リタ本気にしちゃいます~」


「「うふふふふっ」」


 とまぁ、王都への帰路はずっとこんな感じだった。



 王都が近づいたところで咲良はしまったと思った。

 ジャックの相手としてはBランクのワイバーンで、あわよくばAランクのミノタウロス狙いだったのだが、それを忘れて帰ってきてしまったのだ。


 悔しがる咲良を尻目に、ジャックはホッと胸を撫で下ろしていた。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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