暇つぶしに依頼を受けよう☆2
森と砂浜の境界線まで来たパルミロたち。
「では、ここをベースにして砂浜のサンドウォームを狩って行こうか」
パルミロの言葉に皆が応える。
「「おうっ!」」
「「「はいっ!」」」
近くに魔物がいないのを確認してから少し休憩し、サンドウォーム討伐が開始された。
ドナートが先頭でゆっくりと砂浜に浸入する。
休憩中に咲良がサンドウォームの探し方をドナートに聞いたのだが、地面の下は魔力が分かりづらいので、なんとなく魔物がいるのはこっちかな程度で近づき、出てきた所を倒すそうだ。
ようは囮になって砂の中から誘い出すって事なのだ。
咲良は意外と原始的なんだなと思いつつも、様子を伺う事にした。
ゆっくり進むドナートから少し距離を置いてみんなが続く。
ドナートの進む速度が更にゆっくりになった事で魔物が近い事が分かり、皆の緊張が更に高まる。
そんな皆を見て咲良は思った。
(サンドウォームがいるのはまだ5メートル以上先なんだけど、あの遅さで進むのかな……)
やっとドナートがサンドウォームが待ち構える所に差し掛かると、突然大きく口を開けたサンドウォームが砂から跳びだしてきた。
ドナートは足もとから飲み込まれそうになるのを辛うじて横に躱すが、サンドウォームが跳びだしてきた勢いで砂ごと吹き飛ばされていた。
砂から飛びだして姿を晒したサンドウォームに、詠唱をほぼ終えて最後の言葉待ちにしていた全員の魔法が発動する。
「『フリーズ』!」
「『ファイアアロー』!」
「『ホーリーアロー』!」
サンドウォームは火に強く氷に弱いので氷属性パルミロの『フリーズ』は大ダメージをあたえる。
クラリッサは火属性なので、属性ダメージは見込めないが、外皮が弱く直接ダメージがきくので『ファイアアロー』を使い、サンドラも直接ダメージ狙いで『ホーリーアロー』を放った。
二人の魔法の矢は、見事にサンドウォームに突き刺さりダメージを与えていた。
かなりのダメージを受けて苦しむサンドウォームは、砂の中に避難し始めていた。
サンドウォームの1番厄介なのは、攻撃の時以外は砂の中に隠れて出てこないのでこちらからはなにも出来ない事だ。
数日出てこなくても平気だし、ゆっくりなら砂の中を移動も出来るのだ。
サンドウォームが避難し始めたのを見て、パルミロたちが焦り始める。
ジャックは自分にヘイストをかけてサンドウォームに向かって走り出していた。
ジャックの剣が砂の中に逃げ込む前のサンドウォームを一閃する。
ジャックが走り抜けた後に、動きの止まったサンドウォームがゆっくりと倒れていった。
サンドウォームで役に立つ素材は討伐証明も兼ねた牙だけなので、それ以外は燃やして砂に埋め1体の討伐を完了した。
「いや~ジャックまじかっこ良かったぜ!お姉さん見とれちまったよ」
「ホント頼もしかったわ~お姉さんの為にありがとうね」
クラリッサとサンドラがジャックを褒めまくっていた。
一緒に頑張った筈のパルミロとドナートのまわりにしんみりしとした空気が流れてるのを感じた咲良は、パルミロやドナートがトドメを刺せるようにと皆に提案する。
こう見えても咲良は空気の読める大人なのだ。
「確かジャックも魔物の魔力を感じられるって言ってたから、今度はドナートさんに変わってジャックが先頭で囮をやったら?」
「「「「「えっ??」」」」」
全員の声が揃った、勿論ジャックの疑問の声も………。
ドナートがジャックを心配してに聞く。
「大丈夫なのか?ジャック」
魔力が分かるなんて言った憶えのないジャックの視線は泳いでいた。
「えっと、どうだったかなぁ……大丈夫なんだと思いますよ」
咲良がジャックをジッと見て言った。
「ええ、ジャックは大丈夫です」
咲良と目が合ったジャックの表情は引きつっていた。
「…………大丈夫みたいです」
ジャックの強さを見ているパルミロPTのメンバーは、出来ても不思議ではないなと納得していた。
「ジャックがそう言うんなら変わってもいいぞ。さっきの突っ込みは中々スピードがあったしな」
少しの休憩の後、ジャック先頭のサンドウォーム討伐が始まる。
《あ~、あ~、本日は晴天なり、本日は晴天なり、タッくん聞こえますか、聞こえたら右手で右耳をつまんで下さい》
砂浜を先頭で歩きながら、指示どおりに右耳をつまむジャック。
咲良は風の精霊シルフに教えてもらった魔法、『ウインドライン』を使っていた。
30メートル程度の距離なら特定の人に声を届けられる魔法だ。
距離が遠くなっても魔力を増やせば届けられるそうだ。
《はいオッケーです。ではサンドウォームの居る場所ですが、ちょっと右を向いて、もうちょっと右……はい、そのまままっすぐ5メートル進んだ所にいるわよ》
立ち止まったまま固まっているジャック。
《んっ?どうしたのタッくん?………ああ、5メートルね、大人の歩く一歩が1メートルくらいだから、タッくんだと走って5歩かな……………では、健闘を祈る》
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