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商人ギルド!☆1


 港や朝市など南地区の観光を終えた咲良は、神楽公演の相談をする為に商人ギルドに行く事にした。

 少しは王都で活動していて知識のあるジャックが言うには、ここからは商人ギルドは遠いので、フレンドに戻って馬に二人乗りで向かうことになった。




 馬で移動する道中、ジャックが王都の事を色々と教えてくれた。


 王都は五つの地区に別れていて、お城のある中央地区が中心にあり、そのまわりに東地区・西地区・南地区・北地区があるそうだ。

 中央地区は王都の中心で、お城や王族の住む区域とその周りの貴族区域を合わせた地区。

 東地区は、立派な正門があり王都の玄関口として1番賑わっていて、冒険者ギルドや商人ギルドの本部があるのもこの地区。

 咲良たちがロンバルディア平原から王都に入ったのもこの地区だ。


 南地区は、港や朝市があり、咲良の泊まっているフレンドがある地区。


 西地区は、裏に高い山があるせいで、何処に行くにも他の地区を通らなければならない為、地価が安く孤児院や貧民街などがある貧しい地区だ。


 北地区は、世界に最も影響力のあるロンバルディア教の総本山であるロンバルディア教国に最も近い地区で、ロンバルディア教の信徒や関係者ばかりが住んでいる、教会中心の地区だ。


 ロンバルディア教国は、北地区の門を出て真っ直ぐ北に行った先のラクパ山にあった。

 ラクパ山は、デル・ディーオ山脈の一つで標高7,000メートルを越える険しい山だ。


 今から1,000年前、魔王が降臨し世界は黒い雲に覆われ世界が征服されようとしていた時代。

 ロンバルディア教の創始者であるロンバルディア・フォンターナは魔王を倒すべく、ラクパ山中腹にある聖なる泉で修行を積み、仲間と共に魔王討伐を成し遂げたのだ。

 その功績もあり、ロンバルディア・フォンターナが起こしたロンバルディア教は聖属性の有用性と共に全世界に広まる事となる。


 魔王が討伐された後に、ラクパ山の聖なる泉の横に小さな教会が建てられ人が集まるようになると、ラクパ山の麓にも教会が建てられて教会に関係する施設が次々に建てられていき、一つの街のようになっていった。

 この聖なる泉と麓の街を合わせた地域がロンバルディア教国となり、各国にロンバルディア教が広まっていった。


 それと同時期に、ロンバルディア教の聖地ロンバルディア教国を守る為にクリストフィオーレ皇国が建国された。



 現在、北地区の北門からロンバルディア教国までは、馬車4台が並走できる程の広さの街道がまっすぐ伸びていた。

 ロンバルディア教国には皇国軍が駐留して守っているのだが、何かあった時には王都からも皇国軍が駆けつける為の街道だ。





  *  *  *  *  *




 咲良たちは東地区の東広場にある商人ギルドに1時間程かかってやっと着いた。


 東広場は今まで見たどの広場よりも広く、高い建物が丸い広場を囲むように建ち並んでいた。

 広場の内側には屋台が所狭しと出店され、多くの客たちで賑わっていた。


 咲良は白い大理石で出来たような立派な4階建ての商人ギルドを見上げていた。


「これが王都の商人ギルド……」


 真っ白な石造りの建物には、手の込んだ装飾が施されている。

 咲良にとって高層ビルを知ってるから4階建てはたいして高くはないのだが、異世界に来て十数年、平屋や2階建てを多く見てきたので久々の4階建てに感心していた。


「へぇ~、とても豪華で綺麗ね」


 日の光りに照らされた眩しい白と、装飾によって出来た影のコントラストの美しさに咲良は見とれていた。



「僕も商人ギルドに入るのは初めてだから、なんだかドキドキするよ」


 そんなジャックの後について咲良も緊張しながら商人ギルド本部のドアを入っていった。


 赤絨毯と豪華な美術品が目に飛び込んできた。

 高級ホテルのロビーを思わせるようなソファーやテーブルが幾つも置かれ、寛ぎながら商談が出来るようになっていた。


「うっわぁ~、高級過ぎて入るのを躊躇しちゃうわ」


 豪華さにまわりをキョロキョロしながらジャックと咲良が受付に歩み寄ると、受付嬢がにこやかな営業スマイルでジャックをジッと見つめながら迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。私はレティシアと申します。本日はどういったご用件でしょうか?」


 セミロングのブロンドがふわっと揺れるレティシアの笑顔は、それだけで商談は成立しそうなほど可愛らしかった。

 そのうえ、まだ20才くらいと若く見えるレティシアだが、商人ではなく冒険者の格好のジャックにもきちんと応対しているように見えた……。


「えっと、僕は付き添いでして、用事があるのはさくらです」


 と言ってジャックは咲良を指し示した。


 レティシアは冒険者の格好だがイケメンのジャックを見つめ続けたが、ジャックは咲良をという顔をしていたので、渋々咲良に視線を移した。


 子供が苦手なレティシアは、初めて見る変わった服装の子供に、怪訝な表情をしてしまう。


(かなりのイケメンなんだけど、お金持ちには見えないのよね。でも貴族でもレベル上げはするしまだ分からないわ。女の子はメイドにしては子供過ぎるから兄妹かしら…………似てないけど。まあいいわ、私がお金持ちになった時の若いツバメ第一号だわ!一応キープキープっと。その為には仕方がないけど子供の機嫌をとっとくか)


 まだ若いレティシアは、整った容姿とナイスバディで金持ちのイケメンを見つけて玉の輿!という熱い情熱で、商人ギルド本店勤務を勝ち取ったのだ。

 レティシアはイケメンとお金以外は興味が無く、打算だけで咲良の応対を始めた。


 受付を出て咲良の前にしゃがみ込むレティシア。


「そう、何か御用かなさくらちゃん」


 ジャックが流れで言っただけのさくらの名前で呼びかけた。

 一応は王都の受付嬢のようだ。

 かなり大きめのバストが更に強調される服を着て、咲良というよりもジャックに見せるような仕草のレティシア。


 咲良はジャックに寄ってくる女性が変なのじゃなければ邪魔するつもりはないのだが、目の前にある豊満なバストはなんか不愉快だった。


 元の世界の母は大きい方で肩が凝るのよね~とか言ってたし、この世界のエリスママもバストはある方だった。

 異世界でも咲良の血統は良いはずなのだ。

 しかし日本での咲良も今の咲良も、まだ若いから肩が凝るとか言う必要はなかった。

 まだこれからだと思う咲良だが、それでも目の前の谷間はやっぱり不愉快だった。


 ジャックをチラチラ見ながら咲良に微笑むレティシアに、咲良は無言で赤いギルドカードを突き出した。


「へっ?ギルドカード?それもロッソ?」


 半信半疑でカードを受け取り、受付に戻って情報の確認をするレティシア。


「たっ、確かにカードは本物のようだわ………」


 カード情報には、小花咲良の名前やボスコとモンテラーゴに店舗がある事、後見人としてボスコの貴族名や、商人ギルド職員なら誰もが知るダニエラの名も載っていた。


 レティシアは目の前の子供が持ち主の訳がないので、拾ってくれたんだと勘違いした。


「さくらちゃんがこのカードを拾ってくれたのね、ありがとうね」


 レティシアも王都の受付嬢の端くれだ、小花咲良の名は知っている。

 商人ギルドで今最も注目されている出世頭のダニエラが後見人になった話題の新人商人の名だ。

 レティシアもダニエラの教え子でダニエラチルドレンなのだ。

 レティシアは小花咲良が王都に来ているとは知らなかったが、カードを落としたという事は王都に来ているのだと考えた。

 レティシアは咲良そっちのけで打算し始めた。


(きっと小花咲良様はカードを落としたと商人ギルドにくる筈よね、そこで私がカードをお渡しして、感謝され王都での担当になって、何なら後見人にも名前を入れてもらって、小花咲良様にもギルド長にもダニエラ主任にも感謝されて……………出世街道まっしぐらね!金持ち男も寄ってくるわ)


 打算が終了したレティシアは、受付カウンターの前にまだ咲良がいる事に気がついた。


「あら、まだ居たのね、拾ってくれたお礼にこのクッキーをあげるわ、ありがとうねさくらちゃん」


 レティシアはそう言ってカウンター裏にあったクッキーを1枚差し出して、自分が言った名前に気がついた。


「あれっ?さくらちゃんって…………カードの持ち主と同じ名前なのね」


 受付カウンターには、確認用の黒いボードの上にまだギルドカードが乗っていた。

 そのボードに咲良が無言で手を乗せるとカードが光り出した。

 本人確認の方法である。


 レティシアは咲良にクッキーを差し出したままの姿勢で呟いた。



「あっ…………本人だわ」




 咲良は黒いボードに置いてあったギルドカードを取り返して言った。


「王都で色々とやる事があって相談に来たんだけど、貴方じゃないもっとしっかりした方に変わってもらえるかしら」


 そこでやっと自分の大きな勘違いに気づくレティシア。


「しっ失礼致しました!少々お待ち下さい!」


 マズいと思ったレティシアは慌てて裏に走って行った。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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