イザベラ司祭!☆1
プレゼントをもらって嬉しそうなアリーチェ。
「ありがとう、イザベラお姉ちゃん!お姉ちゃん達はどこから来たの?」
お姉ちゃんと呼ばれた事とアリーチェとの関係が上手くいきそうな事で嬉しそうなイザベラ。
「フフッ王都のレオーネからよ」
アリーチェは街の名前を言われても解らなかった。
「ふ~ん……レオーネ?」
「この国の王都ね、とっても大きな街よ。ここに来るまで7日もかかる距離にあるわ。途中に魔物が出るから来るのは大変だったけど、この護衛の3人がやっつけてくれたのよ」
「へぇ~みんな凄いんだね!冒険者なの?」
マッテオが答える。
「兵士だ」
兵士を疑問に思うアリーチェ。
「兵士?………冒険者と違うの?」
今度は騎士のオルランドが答えた。
「国に所属していて、国を守るのが仕事なんだ」
「国を守る兵士さんがどうしてイザベラお姉ちゃんの護衛なの?」
「教会の司祭様以上の方の護衛も兵士の仕事だからな」
「教会の司祭様以上の方?」
「イザベラ司祭様の事だ」
「イザベラお姉ちゃん司祭様なんだ……」
堪りかねてマッテオが怒る。
「おい!いい加減言葉に気をつけろ!司祭様が優しくしてるからって子供とて不敬罪で……」
マッテオを止めるイザベラ。
「いいのよマッテオ、許してあげましょ」
マッテオは渋々引き下がった。
「司祭様がそう仰るのなら……」
「まだ私は司祭になったばかりだから、司祭の儀式の為に神の泉に来たの」
教会には司祭になると最初にやる儀式があり、それがラダック村の神の泉を訪れる事だ。
王都から国内を廻りラダック村までの旅を試練とし、神の泉で祈りを捧げ魔力を浄化する事が、司祭になって最初の儀式であった。
(教会の事については知らなかったけど、つまり司祭になった人はラダック村に来るって事か……気をつけよう。そういえば今まで会った中じゃ一番魔力あるし、魔法使いとしても凄言って事か。アリーチェの魔力バレてないかな?話しかけられただけだといいんだけど……)
「ふ~んそうなんだ、頑張ってね。じゃあママがお家で待ってるから行くね」
アリーチェは魔力の事が心配だったので、話しを終わりにした。
「えっ?そう……じゃあ今度いろいろとお話ししましょうねアリーチェちゃん」
イザベラはまだ話しをするつもりだったが、アリーチェに嫌われない為に我慢した。
イザベラはアリーチェに手を振って別れて、神の泉の方へ坂を登って行った。
アリーチェが見えなくなるとミーアが聞いてきた。
「イザベラ司祭様、子供に愛想がいいですね。それといいんですかリボン?司祭として大切な物ですよね?」
考え込んでいたイザベラ。
「えっ、あぁリボンならいいの、まだあるから」
「司祭様はあの子が気に入られたのですか?」
「すこし気になる事があってね」
「気になることですか?」
「そう、気になる事よ。よし!あの子を養子にするわ」
「「「えええっ?!」」」
アリーチェの態度に怒っていたマッテオ。
「あんな常識も知らないガキ、辞めた方がいいですよ」
考え込んでいるイザベラ。
(本来魔力が現れ始めるのは、教会の儀式を受ける8才頃から、でもあの子には魔力を感じたわ。エルフで子供に見えて年をとっている訳でもなく、正真正銘の5才だった。凄い子だわ。養子に出来るまで少しでも秘密にしよう)
黙っているイザベラを心配してマッテオが話しかける。
「イザベラ司祭様?大丈夫ですか?」
「んっ?あぁ大丈夫よ」
「まだ常識も無い幼い子供ですよ?子供が欲しいとしても、8才の儀式で魔法の才能が有る子を選んだ方がいいのではないですか?」
「私はあの子がいいのよ!」
「イザベラ司祭様が気に入られたのならいいんですが」
「私は絶対連れて帰るわ。あの子は私をどう思ったかしら、プレゼント喜んでたし良い感じよね」
(親はあの子が魔力持ちだと知らないだろうし、あの子自身も知らないからお金で何とでもなるでしょ。私が今から教育して、私の出世の役に立ってもらうわ)
「リボンを喜んでましたから、イザベラ司祭様の印象は良かったと思いますが、魔法の才能がある子ならいざ知らず、ただの幼い子供を養子にして連れて帰ったら、変な誤解を受けて良くないのでは?」
「気にしないわ、言いたい奴には言わせておけばいいの!後々みんなが後悔するから大丈夫よ!」
イザベラが司祭になるには、魔力量が少なかった。
しかし情報収集能力が優れていたので人より先に色々な事が出来てなんとか司祭になれたのだ。
イザベラもこれ以上の出世は難しいだろうと思っていたが、アリーチェを利用すれば何とかなるんじゃないかと考えていた。
* * * * *
アリーチェと別れた後、イザベラ達は神の泉にいた。
日が昇ってから沈むまでの間は、魔力の浄化と小屋教会での祈りを3日間繰り返すのが儀式の決まりである。
イザベラは明日の朝からの儀式の為に、神の泉と小屋教会の様子を確認した。
夕方、イザベラ達4人は、村に1件しかないテパンの宿屋に入った。
宿屋の夕食は、隣の食堂で用意してくれるらしいので、4人で食べに行った。
その食事は田舎の村と思えない程美味しかった。
イザベラは料理長を呼び、王都でも通用するほど美味しかったと褒め称えた。
料理長はマチェン・パサンと名のった。
マチェンは村長の息子で、10才から街で料理の修業を10年した。
20才になると村に戻り、村の食堂を継いだのだ。
それから30年。ラダック村にはグルメな教会の聖職者がよく来るので、マチェンは修行の為に料理の感想を聞いてまわるのが日課になっていた。
感想を聞いて料理を改良してまた感想を聞く。
まさに努力家だった。
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