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咲良が去ったあとに……

 この章の最終話となります。


 咲良が旅立った後のモンテラーゴの街。


 領主の館の衛兵詰め所は騒がしかった。

 牢獄地下5階に捕らえていた魔族がいなくなったのだ。

 みんなで手分けして探すが見つからず、被害が出た訳ではないので捜索は3日で打ち切りとなった。


 牢獄の隅の暗闇にある魔法陣が見つかる事も無かった。




  *  *  *  *  *




 Fランクの魔物が多く生息するモンテラーゴ近郊の浅い森。


 リリィ、カール、オルセットの3人が、タヌッキーと戦っていた。

 オルセットがタヌッキーを引きつけて、リリィとカールが背後から攻撃していた。

 タヌッキーがリリィかカールの方を向いたらオルセットが攻撃するので、タヌッキーはすぐオルセットに向き直りPTの戦闘は安定していた。

 少しずつ経験を積みPTとして自分が何をするべきか理解して危なげなくタヌッキーを倒していた。


 タヌッキーを捌いているオルセットに、リリィが話しかけた。


「オルセットがPTに加わってくれたお陰でタヌッキーと戦ってても安心だわ。ありがとうね」


「ありがとうだなんて必要ないよ。こっちも経験値が稼げるから助かってるし、さくらの姐さんのお陰で仕事って事になってるからこちらの方こそお礼を言いたいくらいだよ」


 カールもオルセットのお陰で勝てているのが分かっているので、自分が活躍できなくてふてくされていたが何も言わなかった。


「なぁにカールその顔は、カールもタヌッキーにトドメを刺してくれてたでしょ、ありがとうね」


「んっ、あぁ、まあな………」


 リリィに気をつかわれているのだが、少し機嫌が直るカールだった。

 リリィにとって一緒に育ったカールはチョロかった…………いや、素直だった。



「それにしてもこの辺りって色々な魔物が住んでいたのね」


 リリィの呟きに、ロンドと一緒に付き添いで来ていたサンコンが答えた。


「そうさ、この辺りはFランクのほとんどの種類の魔物が住んでるし、たまにEランクの魔物も居るから、気をつけないと命を落とす事になるんだぞ」


 今までリリィたちは、咲良の指示通りに森の中を歩き回っていたのでFランクでも決まった種類の魔物にしか会った事が無かったのだ。

 特にLV1の時なんかは、スライムにしか遭遇しなかった。


 その当時リリィはよく分かってなかったが、レベルが上がるにつれ段々とあれっ?と思うようになり、咲良の指示が無くなった今では咲良の凄さがよく分かっていた。


(私たちを一番守ってくれてたのは…………さくらお姉さまだったのね!)


 咲良の崇拝者が増えた瞬間だった。





  *  *  *  *  *





 鉱山地区管理棟内の串焼き屋さくら亭は賑わっていた。


 ロンドとカールが焼いた串焼きを、リリィが看板娘としてみんなに手渡すスタイルとなっていた。

 カールはリリィよりも焼くのが下手で、丁寧に焼かないと焦がしてしまうし焼きあがる本数も少なかった。

 だがリリィが店前にいる方が、お客さんは満足してくれているのだ。





  *  *  *  *  *





 商人ギルドのサブリナは孤児院のメリー院長と密かに会い、金銭的な負担はないので小花咲良商会に登録しないかと話しをしたところ、二つ返事で了承してもらっていた。


「ええ勿論です。さくらさんの助けになるのなら、金銭的な負担があったとしても登録させて頂きます」


 メリー院長は咲良にとても感謝していた。


 そしてサブリナは、さくら亭を小花咲良商会に登録した事を、咲良ではなくボスコのダニエラ主任に手紙で報告した。

 ダニエラから帰ってきた手紙でサブリナはとても褒められた。

 手紙はサブリナの宝物となった。





  *  *  *  *  *




 雪がちらつく険しい山脈。


 山頂付近で咲良と別れてからのグリーゼは、尾根を伝って魔族国に向かって歩き続けていた。


 まだ体調が万全ではなかったグリーゼは、強そうな魔物や勝てそうだなと感じる魔物からも身を隠した。

 そうやって周りを警戒しながら少しずつ進み、かなり弱い魔物だけを狩って自分の糧とた。

 少しずつ自分を鍛え元の強さを取り戻す努力をしながら魔族国へ向かっていた。


 グリーゼはまだ子供だが、囚われる前の強さはDランク上位冒険者くらいだ。

 前は勝てた魔物からも身を潜めなければならない事は悔しが、助けてくれた咲良の為にも生き延びる事を最優先にした。


 2週間もすると、グリーゼの身体はだいぶ元の強さを取り戻してきていた。

 そんな時、油断したグリーゼはロックゴーレムに遭遇して足を怪我してしまった。

 Dランクの魔物ならば怪我をしててもなんとか倒せるのだが、相手はCランクの中でもとても堅いロックゴーレム、万全の状態でも1人で勝てる相手ではなかった。

 足を怪我して逃げる事も無理となったグリーゼは諦めるしかなかった。

 最後は魔族らしく戦って終わりにしようと決意したグリーゼは、怪我をした足で立ち上がり咲良からもらった剣を握り締めてロックゴーレムと向かい合った。


「さくら…………俺の分まで生きてくれ」


 グリーゼの2倍以上の身長のロックゴーレムは、握った拳を振り下ろしてきた。

 倒れ込むようにして辛うじて避けたグリーゼは、怪我した足で踏ん張りながら、全力で咲良の剣を振り抜いた。


 ズパーーーーン!!


「なんだ?くそっ当たらなかったか!」


 手応えが無かったので避けられたのかと思い悔しがるグリーゼ。


 しかし次の瞬間、切断されたロックゴーレムの両腕が、グリーゼの目の前に落ちてきた。


 ドッシィィィィィン!


「ううわっ!!!なんだっ?!」


 ウウオォォオォォォーー


 苦しい声を上げるロックゴーレムを見て剣のキレ味を理解したグリーゼは、すぐにロックゴーレムにトドメを刺した。


「たっ、助かったのか……………いや、またさくらに助けられたってことか。堅いとされるロックゴーレムまで斬り裂く剣だとは、さくらはかなり高価な剣を俺にくれたのだな。まだ会って日の浅い俺なんかの為に…………さくら」


 グリーゼは、あの暗い牢獄から助け出してくれて、高価な剣までプレゼントしてくれた咲良に思いを馳せた。





 それから1ヶ月ーーー


 グリーゼは崖の上から故郷のアッシャムス魔国を見下ろしていた。

 あまりいい思い出はないが、それでも懐かしさが込み上げてきた。


「アッシャムスよ、私は帰ってきた!」



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 読んで頂き有難う御座います。


  次からは新章になりますので、引き続きよろしくお願い致します。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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