リリィとカール!☆4
お願いしていた管理棟内の串焼き店舗が完成したとの連絡が商人ギルドのサブリナから入った。
リリィとカールの経験値稼ぎから帰ってきた咲良は、明日からの串焼き屋営業の為にメリー院長やリリィと串焼き肉の下ごしらえを始めた。
ティアーをみじん切りにして肉をつけ込む。
メリー院長やリリィにとって禁忌とされているティアーを使うことは、別に気にならないようだった。
神様への信仰心がないわけではなく、ただ知らなかっただけだった。
ティアーを使うのも初めてらしく、メリー院長もリリィも、ぽろぽろ涙を流しながらみじん切りをしていた。
串焼きのお肉は、咲良がこの街を出てからのことを考えてアイテムボックスにある肉を使わずに、冒険者ギルドに依頼して仕入れていた。
リリィやカールの孤児院冒険者組が、魔物を倒してお肉を調達出来るようになるのは、まだまだ先の話しだ。
お肉をティアーのみじん切りに漬け込んで、明日の準備は完了した。
* * * * *
串焼き屋開店当日。
串焼き屋開店の為、今日は魔物狩りには行かなかった。
子供たちを見る為にメリー院長は孤児院に残った。
咲良と焼き担当のロンドとリリィ、それに販売担当のカールの4人で串焼きの材料を持って、鉱山地区管理棟の店舗に向かった。
管理棟に入ると、まだ昼には早く鉱山労働者は仕事中の筈なのだが、人が多いように感じた。
トマゾ管理長が受付から立ち上がって笑顔で出迎えてくれた。
「いや~よく来てくれた、待ってたよ~、困ったことがあったら何でも言ってくれ」
いつの間にか人混みの真ん中に入口から串焼き店までの道が出来ていた。
………みんな咲良たちを待っていたようだ。
咲良たちが開店の準備をしていると、商人ギルドのサブリナが顔を出した。
ここ数日、サブリナは咲良にお願いでリリィにお店をやっていく為に必要なことを色々と教えていたのだ。
サブリナはリリィを気にいり妹のように可愛がってくれていた。
ロンドとカールが串を焼き始め、リリィは釣り銭などの準備を始めた。
昨日リリィは店の名前を孤児院のみんなと相談していた。
院長の名前のメリー亭やリリィの名前のリリィ亭も提案されたが、殆どのみんなはさくら亭だった。
開店の準備が出来たのでリリィが、大きな声でみんなに伝える。
「それでは串焼きさくら亭、開店です!」
リリィが呼びかけた時にはすでに、室内にいたみんなは列を作って並んでいた。
室内に居た者全員意外に外にも客が並び始め、店は大繁盛だった。
ロンドとカールが焼くそばから売れていった。
リリィのテキパキと客を捌く様子を離れて見ていたサブリナは、腕を組んで満足そうに頷いていた。
昼だけで営業が終了するのは残念がられたが、材料も無くなり初日は大繁盛で無事に終えることが出来た。
* * * * *
孤児院での朝練。
ジャックから真剣に盾の使い方を教わっているカールの姿があった。
「レベルアップのお陰で少しは力が上がったと思うけど、トレーニングでも強くなるから毎日欠かさずにね」
「はい!ジャックの兄貴!」
昨日役に立てたからなのか、カールは元気を取り戻していた。
まだ片手剣を扱うには力不足なのでショートソードだが、トレーニングを頑張ってるし、レベルが上がることで直ぐに力も付いてくるだろう。
朝練が終わり、昼の串焼き屋までの間に、魔物狩りをしに行った。
行きで1時間、狩りで1時間、帰りで1時間の予定だ。
森に着いてから、咲良の指示どおりに進むと、直ぐに1体でいるスライムに遭遇した。
リリィもカールもスライムとの戦いに慣れきた。
毎回体力的にはぎりぎりだが、大きなダメージを受けることもなくなった。
スライムを3体倒したところでリリィとカールのレベルが上がった。
「またこの感覚ね」
「やった」
「レベルが上がったのね、レベル3おめでとう。低いうちはレベルが上がるのが早いけど、高くなるにつれて大変になるわ。レベル10を超えると1上げるのに1年かかるのが普通みたいだから焦らないでね」
「レベルの高い冒険者って苦労してるんですね」
「おれがんばるぞ!」
「頑張るのはいいが、リリィちゃんの言うことはちゃんと聞くんだぞ」
「はい、ジャックの兄貴」
とりあえず、ジャックの言う事には素直だった。
* * * * *
孤児院に戻ってからすぐに串焼き屋に向かう。
もう咲良は行く必要はないので、孤児院で留守番をすることにした。
ロンドとメリー院長に一緒にいってもらい、ロンドからメリー院長に焼きのコツを教えてもらうことにした。
焼き担当が多いにこしたことはないのだ。
販売担当はリリィがやるので、カールは孤児院で留守番をすることになった。
咲良が孤児たちの遊び相手をして、カールはジャックから片手剣と盾の指導を受けていた。
カールは少しずつ男らしくなってきた。
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