リリィとカール!☆3
孤児院での朝練。
ジャックはカールに盾を教えることにした。
小さめの丸いラウンドシールドを持たせ、剣は片手剣より軽いショートソードに変えさせた。
盾の持ち方と守り方、そして盾で相手を攻撃するシールドバッシュを教えた。
「まだカールは力が足りないから、腕の力だけでシールドバッシュをしようとせずに、しっかり盾を構えて体全体で体当たりするように」
「はい………兄貴」
カールは昨日帰って来てから元気が無かった。
リリィを守るどころか、カールが足を引っ張ったせいでリリィが怪我をしたのだから、気にするのも当然だろう。
しかし咲良もジャックも、カールが自分で立ち直るまで何も言わないつもりだった。
* * * * *
朝練の後、昨日と同じ森に魔物狩りに来て、スライム1体と対峙するリリィとカール。
カールの今日の装備はショートソードと盾だ。
盾は教えたばかりだが、防具なので慣れていなくてもしっかり構えてさえいれば、大きな怪我にはならないだろうと考えて、ジャックは使わせることにしたのだ。
始めスライムは酸を跳ばしてきたが、カールはまだ避ける余裕はなく盾で防いでいだ。
酸は装備を痛めるので出来れば避けた方がいいのだが今後の課題だ。
まあスライム程度の酸なら、戦いが終わったときに、水で洗い流せば大丈夫だったりする。
スライムは酸の次に体当たりをしてきた。
カールは剣を握っている手も盾に添えて、スライムの体当たりを歯を食いしばって耐えた。
動きの止まったスライムの背後から、すかさずリリィが斬りつける。
スライムが怒ってリリィの方を向いた。
カールは昨日のようにリリィに怪我をさせない為に、頑張ってスライムに集中した。
スライムが目の前で背中を向けたので、盾をしっかり持ってシールドバッシュをした。
背後からのシールドバッシュを受けたスライムは、リリィの目の前まで転がっていった。
転がってきたスライムを、リリィが斬りつけるが、スライムは溜めていた酸を目の前のリリィに跳ばしてきた。
リリィは咄嗟に剣で防ごうとするが、防ぎきれずに酸が胸にかかった。
「きゃっ!」
慌てたリリィは酸がかかった胸元を気にして、一瞬スライムから目を離してしまった。
弱い酸だがリリィを怯ませるには十分だった。
スライムは少ししゃがんでリリィへ体当たりをするところだった。
リリィは避けるにはもう間に合わなかった。
その時、カールの剣がスライムの背後から核を貫いた。
ピキッ、ぱしゃん。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息の荒いカールはゆっくりと集中を解き、スライムの残骸を見つめていた。
リリィはカールを嬉しそうに見つめた。
「ありがとう、カール」
「あっ………うん」
まだボーッとしていたカールはジャックを振り返った。
ジャックはカールに向かって力強く親指を立てた。
またリリィが危なかったが無事に勝てたことをやっと理解したカールは、緊張が解けてその場に座り込んだ。
「はぁ~~良かった~~」
いつも通り咲良は、ポーションを使ってる振りをして魔法で二人を回復した。
ジャックはカールの盾に付いた酸を、水の初級魔法『ウォーター』で洗い流した。
ちなみに、属性の才能がある者は初級魔法なら全属性が使えるので、闇属性の才能があるジャックでも初級の水魔法が使えるのだ。
二人が落ち着いてからもう1体、スライムと戦った。
トドメを刺したのはリリィだった。
その時二人はお互いを見合ってポカンとしていた。
それを見てピンときた咲良が言った。
「その表情は二人ともレベルが上がったのかしら?」
「えっと、からだが少し軽くなった感じがします」
「なんかちからががわいてくるかんじ?」
咲良は『サーチ』の魔法で二人ともレベル2になったのを確認した。
「うん、リリィ、カール、レベルアップおめでとう!」
「「やっ、やったぁ~~~!!」」
カールは今までで1番の笑顔だった。
リリィはレベルアップよりも、カールが喜んでいるが嬉しそうだった。
今日はあと2体スライムを倒して狩りを終了した。
レベルアップしてからの戦いは、慣れてきたのもあってかスライムを怖がる気持ちが少なくなり、しっかりとスライムを見て戦えていた。
カールは盾での防御が上手くなってきたし、リリィはスライムの攻撃を落ち着いて避けられていた。
ただ、二人とも体力が少なく一度戦うだけでかなり疲労していたので、戦闘終了後に咲良が二人をポーションを装って回復するのは変わらなかった。
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m(_ _)m
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